サキグロコウシツブとは? わかりやすく解説

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サキグロコウシツブ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 07:37 UTC 版)

サキグロコウシツブ
Kermia melanoxytum
色彩には多少の変異がある。
幼貝(右下)は外唇が薄い。
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
亜綱 : 新生腹足亜綱 Caenogastropoda
: 新腹足目 Neogastropoda
上科 : イモガイ上科 Conoidea
: フデシャジク科 Raphitomidae
: トウキョウコウシツブ属
Kermia
: サキグロコウシツブ
K. melanoxytum
学名
Kermia melanoxytum
(Hervier, 1896)[1]
シンタイプの1つ(フランス国立自然史博物館・登録番号:MNHN-IM-2000-3097)。やや摩滅した打ち上げ死殻のため光沢がある。

サキグロコウシツブ(先黒格子小螺)、学名 Kermia melanoxytum は、フデシャジク科に分類される殻長4~6mm前後の海産の巻貝の1種。インド西太平洋の暖流域に生息する[2]。別名シロスジアラボリクチキレツブ。

分布

インド太平洋

タイプ産地はニューカレドニアリフー島

形態

殻長は4~6mm前後。螺塔が高い紡錘形で、縫合は明瞭にくびれ、水管溝の付け根もややくびれる。

原殻は約3.5層で、最初の約1層は細い螺条が多数あり、その後は強く明瞭な斜めの格子彫刻がある。原殻は全体に濃褐色(こげ茶色)で、色の薄い後成殻とのコントラストが際立って黒っぽく見える。種小名や和名はこのことに由来する。

後成殻は、最初から非常に強い螺肋とうね状の縦肋があり、両者の交点は低い横長の顆粒状となる。これら肉眼的な彫刻とは別に微細な粉粒状の彫刻が全体にあり、特に肋間で明瞭でやや螺条に並ぶ。この粉粒状彫刻のために生貝や新鮮な死殻には光沢がないが、打ち上げられたものでは摩滅して光沢が見られることがある。

螺塔部では上半が褐色がかり下半が淡色の染め分け、もしくは中央の肋が白色でその上下が黄褐色になる。体層(最終層)では縫合下と殻底のくびれ部分が淡褐色~褐色で、周縁の3螺肋と水管溝は色が淡くなるが、周縁の3螺肋のうち一番上の螺肋は他よりも白味が強くなることがあり、逆に中央の螺肋は褐色がかかることもある。

殻口は縦長で狭く、成貝の外唇は外側が膨らみ、外唇内側には丸みを帯びた小さい歯状突起が6個ほどある。殻口上部には縫合に沿って明瞭な肛湾入があり、正面から見ると狭い溝状に見える[1] [2]

生態

日本では海岸に打ち上げられた死殻が得られ[2]、フィリピンでは水深50~100mに生息するとされ[4]、南アフリカでは水深9~62mまでの砂底や砂礫底などから記録されているが[3]、詳しい生態は不明である。

分類

  • 原記載名:Glyphostoma melanoxytum Hervier, 1896 [1], Journal de Conchyliologie 43 (3): p.150.
  • タイプ産地:「Inusula Lifou」(リフー島
  • タイプ標本:原記載には、標本は10個あって殻長は5-6mm、最大殻幅は2mmとある。Kilburn (2009) [3] によれば、これら10個のシンタイプは元は原記載者であるエルヴィエ(Hervier) が所属したフランス・リヨンSociété de Marie (メアリー協会)にあったが、現在はそのシンタイプのうちの3個と思われる標本がフランス国立自然史博物館にあるという。そしてそのうちの1個は Fischer-Piette によって「Type」と書かれたラベルが付されており、4.6 x 2.0mm の大きさでプロトコンクの先端が欠けているという。これに相当すると思われる殻頂が欠けた標本は、同博物館によってウェブ公開されているが、大きさは 4.9mmとなっている[5]。この他にシンタイプの一部の可能性がある標本がシドニーのオーストラリア博物館にもある(標本番号 C.7019)[3]
  • 異名
    • Glyphostoma melanoxytum Hervier, 1896
    • Mangilia (Glyphostoma) melanoxyta Hervier; Melvill & Standen, 1897, p.401 [6].

Hervierは新種記載の際に本種を分類した Glyphostoma 属が中性であったため、種小名も中性形にしている。Melvill & Standen (1897)は属を Mangilia 属に変更した際、それに合わせて種小名の語尾を女性形に変えて melanoxyta とした[6]。現在WoRMSなどでは Kermia 属に分類されるが、語尾は中性形にされている。

出典

  1. ^ a b c Hervier J. (1896-07-05). “Descriptions d'espèces nouvelles de l'archipel Néo-Calédonien”. Journal de Conchyliologie 43 (3): 141-152 ([https://www.biodiversitylibrary.org/page/15922437 p.150). 
  2. ^ a b c d 長谷川和範(K. Hasegawa); 奥谷喬司(T. Okutani) (30 Jan 2017). フデシャジク科 Rophitomidae (p.362-367 [pls.318-323], 1024-1030) in 奥谷喬司(編著)『日本近海産貝類図鑑 第二版』. 東海大学出版部. pp. 1375 (p.363 [pl.319, fig.13], p.1026. ”サキグロコウシツブ(新称)”). ISBN 978-4486019848 
  3. ^ a b c d Kilburn, R. N. (2009). Genus Kermia (Mollusca: Gastropoda: Conoidea: Conidae: Raphitominae) in South African Waters, with Observations on the Identities of Related Extralimital Species. African Invertebrates. 50(2): 217-236
  4. ^ Poppe, G. T., ed (2008-12-09). Turridae - (Clathrellidae) (p.732-755 [pls.661-672]) in Philippine Marine Mollusks, Vol. II. ConchBooks. pp. 849 (p.752, 753 [pl.671, fig.1]). ISBN 3939767174 
  5. ^ MNHN, Paris: Kermia melanoxytum (syntype/シンタイプの写真)
  6. ^ a b Melvill, J. C. & Standen, R. (1896-1897), “Notes on a collection of shells from Lifu and Uvea, Loyalty Islands formed by the Rev. James and Mrs. Hadfield. With list of species. Part II”, Jounal of conchology 8: 273-421, pls. 9-11 

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