旋光 光学純度

旋光

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/19 01:10 UTC 版)

光学純度

光学純度とは、符号はともかく純粋なエナンチオマーに比べてその光学活性体はどのくらいの比旋光度を示すかをパーセンテージで表した数値である。

エナンチオマーの等量混合物は光学不活性であることはすぐ上のラセミ体の項で述べた。エナンチオマーの混合物でも互いの量が異なる場合に限り光学活性は観測される。ゆえに、比旋光度が判っていれば、実測旋光度から混合物の組成を求めることができる。例えば、ある化石から取り出した-アラニンの溶液が+4.255(すなわち純粋なエナンチオマーの半分の比旋光度)のしか示さなかったとすると、その試料の50%は純粋な右旋性エナンチオマーであり、残りの50%はラセミ体であると判る。ラセミ体であるということは、その部分にはエナンチオマーが同量ずつ混じっているということであるから、下の図で示すように(+)異性体が75%、(-)異性体が25%の比率であることが判明する。

  50% (+)
  50% ラセミ体
はそれぞれ試料全体の50%を表している。測定される旋光度は純粋な(+)エナンチオマーの50%

このとき、光学活性を示すエナンチオマーの比率をエナンチオマー過剰率(enantiomer excess)という。この場合、エナンチオマー過剰率は50%である。

25%の(-)体は同じ量の(+)体による旋光を打ち消すので、この混合物は50%(すなわち75%-25%)の光学純度と表現される。


注釈

  1. ^ 光は、進行方向に対し互いに直交する2つの面内を電場と磁場が同位相で正弦曲線を描いて進行している。今電場のみを考えると、自然光線では電場の進行波が進行方向を含むあらゆる方向の面に対称的に分布している。もし分布が対称的でない場合には、その光は偏光しているという。
  2. ^ 進行方向が時間に依存しない偏光
  3. ^ 平面偏光は電場の振幅が右回りの螺旋状に変化しながら進行する光(右円偏光)と、それと同じ振幅を有する左回りの螺旋状に進行する光(左円偏光)で構成されていると見て扱うことができる。
  4. ^ 光のベクトルは電場ベクトルと磁場ベクトルの外積であるが、偏光の方向は電場の方向で表現される。このページでは光の進行方向と磁場ベクトルを含む面を偏光面、電場ベクトルを含む面を振動面と呼ぶ。
  5. ^ 位相に差があるとき、偏光面は入射前に比べて左右いずれかに傾く。2つの円偏光の位相が異になるとは、それぞれの進行速度に差があるということである。左右の円偏光が媒質中を等しい速度で進行するときは、2つの円偏光は(入射前の進行方向と重なる直線、円変更の図での上に向かって伸びる矢印上の任意の点から)等しい距離を進行する。その結果、媒質を通過後の2つの円偏光は位相が同じで、それらを合成して得られる平面偏光は媒質に入射する前の面と一致している。
  6. ^ 入射前の偏光において、測定媒質通過後に偏光が左または右に傾いたなら、その測定媒質をそれぞれ左旋光性、右旋光性と呼ぶ。左旋光性と右旋光性の化合物を区別するときは、右旋光性化合物名の前に (+) あるいは d 、左旋光製化合物の前に (-) あるいは l をおく。
  7. ^ 実際には旋光計が測っているのは透過光の強度が最小の時の暗位置である。それに90度加えることで実測旋光度を明らかにする。
  8. ^ 実験対象である光学活性物質を溶媒に混ぜて、その混合物に平面偏光を照射して旋光度の測定を行う(もちろん純物質で扱うこともある)。試料セルはその混合物の入れ物であり、偏光子を通った平面偏光以外の光を遮断している。
  9. ^ 要するに、試料セル内での光の進行経路の距離
  10. ^ 旋光度の測定実験において、光源の発した光は偏光子を通ってから試料セルに入射するので試料セルを通ろうとする平面偏光を入射光とも言える。
  11. ^ Dとは、ナトリウム蒸気灯の橙色のD発光線(通常、単にD線と呼ばれる)であり、一般に旋光度の測定に用いられる。波長 589 nm

出典

  1. ^ ボルハルトショアー現代有機化学(第4版)[上] (曽根良助 2004年4月発刊)、P.193





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