nublues
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/07/11 16:45 UTC 版)
| 『nublues』 | ||||
|---|---|---|---|---|
| ジョエル・ロス の スタジオ・アルバム | ||||
| リリース | ||||
| 録音 | ニューヨーク市ブルックリン区、The Bunker Studio | |||
| ジャンル | ジャズ、ポスト・バップ | |||
| 時間 | ||||
| レーベル | ブルーノート・レコード | |||
| プロデュース | ジョエル・ロス、ウォルター・スミス3世 | |||
| ジョエル・ロス アルバム 年表 | ||||
|
||||
nubluesは、アメリカ合衆国のヴィブラフォン奏者、ジョエル・ロスが2024年にブルーノート・レコードから発表したスタジオ・アルバム。ロスにとってブルーノートからの4作目のリーダー・アルバムにあたり、アルト・サクソフォーン奏者のイマニュエル・ウィルキンス、ピアニストのジェレミー・コレン、ベーシストのカノア・メンデンホール、ドラマーのジェレミー・ダットンからなる自身のバンド、Good Vibesを中心に録音された[1]。一部の曲にはフルート奏者のガブリエル・ガロがゲスト参加している[2]。
本作は、ロスのオリジナル7曲に加え、ジョン・コルトレーンの「equinox」「central park west」、セロニアス・モンクの「evidence」を取り上げた全10曲で構成されている[1][2]。タイトルが示すように、アルバム全体ではブルースが中心的な主題となっているが、ロスはそれを12小節形式としてだけでなく、感情、精神、エネルギーとして捉え、現代的なポスト・バップ、バラード、自由度の高い集団即興の語法と結びつけている[1]。
背景
本作の構想は、COVID-19のパンデミックによって演奏活動が停止していた2020年頃にさかのぼる。ロスはこの時期にニュースクール大学へ戻り、学位取得のための学業を再開した。その中でアルト・サクソフォーン奏者ダリウス・ジョーンズが担当するブルース史の授業を受けたことが、本作の出発点となった[1]。ロスは授業を通して、ブルースを単なる形式ではなく、より広い情感や表現の基盤として捉えるようになったと語っている[3]。
また、ロスは過去のブルーノート作品について、時間やテンポの操作、複雑な構成が強く、聴き手にとってやや取っ付きにくい面があったと振り返っている[4]。そのため本作では、従来の緻密なアンサンブル性を保ちながら、より明快な旋律、バラード性、ブルースの語法へ接近することが意図された[4][5]。
録音と制作
録音はニューヨーク市ブルックリン区のThe Bunker Studioで行われた[6]。プロデュースはロスとサクソフォーン奏者のウォルター・スミス3世が担当し、エンジニアリングおよびミキシングはジェイソン・ロストコウスキー、マスタリングはグレッグ・カルビとスティーヴ・ファローンが手がけた[6]。
主要メンバーは、ロスのバンドGood Vibesの同時代的な編成である。ロスのヴィブラフォン、ウィルキンスのアルト・サクソフォーン、コレンのピアノ、メンデンホールのベース、ダットンのドラムスを中心とし、ガロのフルートが「chant」「what am I waiting for?」「bach (God the Father in Eternity)」に加わる[7]。
音楽性と構成
ブルーノートの公式解説によれば、本作はバンドのライヴ演奏の流れを反映するように構成され、アルバム全体が一つの連続した情景のように聴こえることが意識された[8]。冒頭曲「early」は、アルバムの導入部として各奏者の音色と関係性を提示し、そのままコルトレーンの「equinox」へ移行する[8]。
「mellowdee」は11分を超える本作最長の楽曲で、ブルーノートは4つの部分から成る瞑想的な楽曲として位置づけている[8]。AllMusicのマット・カラーは、この曲について、ウィルキンスのアルト・サクソフォーンを含む激しい導入から、弓弾きベースや抒情的なピアノを含む中間部へ展開していく可変的な楽曲と評した[6]。
ガロが参加する3曲は、アルバム中盤に独自の室内楽的な質感を与えている。「chant」ではロスがピアノを弾き、ガロのフルートとのデュオを構成する。「bach (God the Father in Eternity)」では、J.S.バッハの旋律断片に、教会音楽的な響きとブラック・アメリカン・ミュージックのリズム感が重ねられている[8]。
表題曲「nublues」は、ブルースの精神とフリー・ジャズ的な開放性を結びつける楽曲とされる[8]。ブルーノートの発表でロスは、バンドに細かい演奏指示を与えるのではなく、互いに接続し、すべてを関連づけながら、それぞれの形でブルースを演奏するよう求めたと説明している[1]。続く「ya know?」ではスウィング感が前面に出され、モンク作「evidence」を経て、最後はコルトレーンのバラード「central park west」で静かに閉じられる[8][6]。
収録曲
特記のない限り、作曲はジョエル・ロス。
- "Early" – 3:56
- "Equinox" (ジョン・コルトレーン) – 8:37
- "Mellowdee" – 11:12
- "Chant" (ガブリエル・ガロ、ジョエル・ロス) – 2:38
- "What Am I Waiting For?" – 2:46
- "Bach (God the Father in Eternity)" – 8:40
- "Nublues" (ジェレミー・コレン、ジェレミー・ダットン、カノア・メンデンホール、ジョエル・ロス、イマニュエル・ウィルキンス) – 8:12
- "Ya Know?" – 9:37
- "Evidence" (セロニアス・モンク)– 8:02
- "Central Park West" (ジョン・コルトレーン) – 4:28
編成
- ジョエル・ロス - ヴィブラフォン、ピアノ、プロデュース
- イマニュエル・ウィルキンス - アルト・サクソフォーン
- ジェレミー・コレン - ピアノ
- カノア・メンデンホール - ベース
- ジェレミー・ダットン - ドラムス
- ガブリエル・ガロ - フルート
制作
- ジョエル・ロス - プロデュース
- ウォルター・スミス3世 - プロデュース
- ジェイソン・ロストコウスキー - エンジニアリング、ミキシング
- グレッグ・カルビ - マスタリング
- スティーヴ・ファローン - マスタリング
- ニック・ダーレン - カバー・アート
- トリー・デイヴィス - パッケージ・デザイン
評価
本作は複数の批評媒体で好意的に取り上げられた。Metacriticでは、4件の批評に基づきメタスコア84を記録し、「普遍的な大絶賛」と表示された[9]。
All About Jazzのクリス・メイは、本作について、ロスがより広い聴衆との接点を意識しながらも音楽を単純化してはいないと評し、旋律性、バラード性、ブルースの要素が加わったことで、知的でありながらソウルフルな作品になっていると述べた[4]。
The Guardianのニール・スペンサーは、本作をブルースの伝統への革新的なオマージュとして評し、ロスがブルースを古風な12小節形式ではなく、精神やエネルギーとして再解釈している点に注目した[3]。また、表題曲「nublues」と「mellowdee」をロスの才能を示す楽曲として挙げ、ウィルキンスとの応答や、モンクとコルトレーン作品の解釈を評価した[3]。
AllMusicのマット・カラーは、前作『The Parable of The Poet』に続く本作を、ロスがオリジナル曲とスタンダードを温かく親密な雰囲気の中でまとめたアルバムと位置づけた[6]。カラーは、冒頭の「early」と「equinox」の接続、「mellowdee」の多層的な展開、「bach (God the Father in Eternity)」におけるクラシックとゴスペルの示唆、そして終盤の「evidence」「central park west」を評価している[3]。
Glide Magazineのジム・ハインズは、本作をロスの複雑で緻密な音楽への入口として聴きやすい作品としつつ、従来作に見られたリズム的・和声的な複雑さも保持されていると評した[5]。同評では、メロディの比重が高まったこと、コルトレーンとモンクのカバーがアルバムの方向性を明確にしていること、またブルースとバラードの形式がロスの音楽をより開いたものにしていることが指摘された[5]。
脚注
- 1 2 3 4 5 “JOEL ROSS ANNOUNCES BALLADS & BLUES ALBUM “NUBLUES” OUT FEB. 9 FEATURING HIS BAND GOOD VIBES” (英語). Blue Note Records (2023年12月8日). 2026年7月8日閲覧。
- 1 2 “nublues[直輸入盤]”. ユニバーサル ミュージック ジャパン. 2026年7月8日閲覧。
- 1 2 3 4 Neil Spencer (2024年2月11日). “Joel Ross: Nublues review – vibraphonist’s innovative homage to tradition”. The Guardian (英語). 2026年7月8日閲覧.
- 1 2 3 Chris May (2024年1月26日). “Nublues – Joel Ross Review” (英語). All About Jazz. 2026年7月8日閲覧。
- 1 2 3 Jim Hynes (2024年2月6日). “On Fourth Blue Note Release ‘nublues’, Vibraphonist Joel Ross and Good Vibes Go For Blues & Ballads” (英語). Glide Magazine. 2026年7月8日閲覧。
- 1 2 3 4 5 Matt Collar. “nublues - Joel Ross” (英語). AllMusic. 2026年7月8日閲覧。
- ↑ “Joel Ross - Nublues” (英語). JazzTrail (2024年2月20日). 2026年7月8日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 “JOEL ROSS “NUBLUES”” (英語). Blue Note Records (2024年2月9日). 2026年7月8日閲覧。
- ↑ “nublues by Joel Ross Reviews and Tracks” (英語). Metacritic. 2026年7月8日閲覧。
外部リンク
- Joel Ross “nublues” - Blue Note Records
- nublues[直輸入盤] - ユニバーサル ミュージック
- nubluesのページへのリンク