fundamental solutionとは? わかりやすく解説

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基本解

(fundamental solution から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/03 10:43 UTC 版)

数学の分野において、基本解(きほんかい、英: fundamental solution)とは、旧来よりグリーン関数と呼ばれている概念の、シュワルツ超関数論を用いた定式化である。定数係数の(常微分または偏微分の)微分作用素に対し、

を満たす超関数として定義される。ここではディラックのデルタ超関数である。基本解を用いると、十分性質の良いに対し、

という形の微分方程式の弱解がの基本解との畳み込みで表せる事が知られている。

この概念は、二次元および三次元のラプラシアンに対して長く知られたものであった。任意の次元のラプラシアンに対しては、リース・マルツェルによって調べられた。定数係数の任意の作用素に対する基本解の存在は、ベルナール・マルグランジュ(英語版)とレオン・エーレンプライス(英語版)によって示された。これは右辺を任意にとった方程式を解くうえで、畳み込みを用いる方法が直接的に結び付く、最も重要なケースであった。

以下、本稿では単に「超関数」といったらシュワルツ超関数を指すものとする。

概要

定義

基本解の概念はコンパクト台を持つ任意の超関数に対して与えられ、定数係数の微分演算子に対する基本解はその特殊なものとして定義される。そこでまず超関数に対する基本解の概念を定式化する。

定義 (超関数の基本解) ― をコンパクトな台を持つ上の超関数とする。このとき

   ...(Eq.1)

を満たす超関数をの基本解(英: fundamental solution)という[1][2]。

ここで「」は畳み込みであり、はデルタ超関数である。

を上の定数係数の微分演算子とすると、超関数に対し、

である事を容易に示す事ができ、さらにデルタ超関数がコンパクト台を持つことからもコンパクト台を持つ事がわかる。そこでの基本解を以下のように定義する:

定義 (定数係数の微分演算子の基本解) ― を上定義された定数係数の 微分作用素とするとき、超関数

の基本解をの基本解(英: fundamental solution)という。すなわちの基本解とは

   …(Eq.2)

を満たすの事である[1][2]。

(Eq.1)ないし(Eq.2)を満たす基本解は一般には複数ある事に注意されたい。実際、定数係数の微分作用素に対し、を

を満たす超関数とすると、がの基本解であればも基本解であるし、逆に任意の基本解はこの形の物に限られる。(Eq.2)に複数の基本解があるのは、微分方程式(Eq.2)に初期条件が定められていない事による。

基本解の存在性について以下のことが知られている:

定理 (Malgrange-Ehrenpreisの定理) ― 定数係数の任意の線形微分作用素は基本解を持つ[1]。

性質

を任意のテスト関数(台がコンパクトな級関数)とすると、(基本解は超関数なので)基本解との畳み込みが定義でき、

を満たす。よって以下が成立する:

定理 ― テスト関数に対し、との基本解との畳み込み積

は下記の方程式の(弱解でなく通常の)解となる[1][2]:

なお、上でが弱解でなく通常の解になるのは、超関数とテスト関数の畳み込みは級の関数になる事が知られているからである[3]。

上記の定理で特に定数係数の微分演算子を用いてと書けている場合を考える事で、以下の系が従う事が分かる:

系 ― 微分演算子の基本解をとすると、

は微分方程式

の(弱解ではなく通常の)解の一つである。

に関するこうした条件はと基本解との畳み込みが定義可能な事を保証するためのものであるので、基本解のほうがよりよい条件を満たしていればの方の条件を緩和できる。例えば基本解が緩増加超関数であれば、は急減少関数であってもよい。またがより一般にコンパクトな台を持つシュワルツ超関数であれば、は弱解になる[1][3]。


方程式は一般には複数の弱解を持つが、コンパクトな台を持つものは上記のものに限られる。

定理 ― をコンパクト台を持つ超関数で基本解を持つものとし、をの基本解とし、をテスト関数とする。このとき、超関数が

を満たし、さらにがコンパクトな台を持てば、

が成立する[2]。

実際、

が成立する。がコンパクト台を持つという仮定は3番目の等号を示す際畳み込みが結合律を満たす事を示すのに用いた[2]。

例

微分作用素 L を

として、微分方程式 Lf = sin(x) を考える。この基本解は LF = δ(x), つまり

を解くことによって得られる。ヘヴィサイド函数 H に対して

が成立することはよく知られているから、両辺を積分して

となる(ここで C は積分定数である)。便宜的に、ここでは C = − 1/2 ととる。

を積分して、新たな積分定数をゼロとすることで、

が得られる。

動機付け

基本解が得られれば、元の方程式の求める解を見つけることは簡単である。実際、その方法は畳み込みを用いることで達成される。

基本解はまた、境界要素法による偏微分方程式の数値解においても重要な役割を担う。

留意すべきこと

上で述べた作用素 L と微分方程式

を考える。この右辺 と基本解 の畳み込み

がこの方程式の解をあたえる。ここからわかることは、十分な正則性(例えば、コンパクトな台の存在や -可積分性)を持たない函数も解として扱う場合にはいくらか注意を要するということである。実際、この方程式の(正則な)解として を考えたほうが自然であるし、また上述の積分はすべての x に対して発散してしまう。にもかかわらず、f を表すこの二つの式は、シュヴァルツ超函数としては同じもなのである。

きれいに求まる例

を考える。ただし I は単位閉区間 [0,1] の特性(指示)函数とする。この場合、F(x) = |x|/2 に対する畳み込み I ∗ F が解であること(すなわち、二階導関数が I に等しくなること)は直ちに確かめられる。

いくつかの偏微分方程式の基本解

ラプラス方程式

ラプラス方程式

に対し、二次元および三次元の基本解はそれぞれ次のように与えられる。

遮蔽されたポアソン方程式

パラメータ k が実数で、基本解が修正されたベッセル函数であるような、静電遮蔽された電荷を記述するポアソン方程式(screened Poisson equation)

に対し、次の二次元および三次元のヘルムホルツ方程式が基本解を持つ。

重調和方程式

重調和方程式

には、次の基本解が存在する。

信号処理

信号処理において、同様の微分方程式の基本解は、あるフィルタのインパルス応答と呼ばれる。

関連項目

出典

  1. 1 2 3 4 5 Charnley 2013, p. 4.
  2. 1 2 3 4 5 Rivière & Orriols 2025, p. 48.
  3. 1 2 Müller 2026, p. 143.

参考文献




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