TOI-1338とは? わかりやすく解説

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TOI-1338

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/05/26 14:29 UTC 版)

TOI-1338
2014年11月にSkyMapper英語版が撮影したTOI-1338(中央)
仮符号・別名 TOI 1338
星座 がか座[注 1]
見かけの等級 (mv) 11.975[1]
変光星型 食連星[2]
分類 主系列星[3]
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 0.1321+0.0024
−0.0025
au[4]
離心率 (e) 0.155489+0.000011
−0.000010
[5]
公転周期 (P) 14.6085659+0.0000062
−0.0000057
[5]
軌道傾斜角 (i) 90.403+0.045
−0.047
[5]
近点引数 (ω) B: 117.7638+0.0042
−0.0041
°[5]
準振幅 (K) A: 21.619±0.007 km/s[4]
惑星の数 2
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  06h 08m 31.9675204416s[1]
赤緯 (Dec, δ) −59° 32 28.081703112[1]
視線速度 (Rv) 30.8781±0.0364 km/s[1]
固有運動 (μ) 赤経: -12.057 ミリ秒/[1]
赤緯: 34.513 ミリ秒/年[1]
年周視差 (π) 2.4752 ± 0.0099ミリ秒[1]
(誤差0.4%)
距離 1318 ± 5 光年[注 2]
(404 ± 2 パーセク[注 2]
TOI-1338の位置
物理的性質
半径 A: 1.313±0.0038 R[5]
B: 0.30582±0.00094 R[5]
質量 A: 1.0936±0.0072 M[5]
B: 0.3069±0.0012 M[5]
表面重力 A: 4.0±0.08[4]
自転速度 A: 3.6±0.6 km/s[4]
自転周期 A: 19±3[4]
スペクトル分類 A: F8V[2]
B: M[2]
光度 A: 2.089±0.098 L[3]
B: 0.0091±0.0016L[3]
表面温度 A: 6031±46 K[3]
B: 3220±135 K[3]
金属量[Fe/H] A: +0.01±0.05[4]
年齢 60±3 億年[3]
他のカタログでの名称
TYC 8533-950-1、2MASS J06083197-5932280、TIC 260128333、EBLM J0608-59、RAVE J060832.0-593228、BEBOP-1[1]
Template (ノート 解説) ■Project

TOI-1338BEBOP-1またはEBLM J0608-59とも呼称される)とは、地球からがか座の方向に約1,300光年 (400 pc) 離れた位置に存在する食連星である。この連星系は、大きな黄白色のF型主系列星と小さな赤色矮星(M型主系列星)から構成されている[3][6]。地球から観測すると、TOI-1338の見かけの等級は11.7で、肉眼での観測は不可能である[6]。周囲には、土星サイズのスーパーパフに分類されるTOI-1338 bと、土星質量の巨大ガス惑星であるTOI-1338 cという2つの周連星惑星公転していることが知られている[5]

大きさの比較
太陽 TOI-1338 A
大きさの比較
太陽 TOI-1338 B

位置と明るさ

TOI-1338は、がか座に位置しており、天の赤道から南に約59.5度の位置にある[6]地球から可視光線で観測すると、見かけの等級が11.7の単独の恒星として見え[注 3]肉眼や小型望遠鏡では観測できないほど暗い恒星である[6]ガイアによる2020年時点の視差測定によると、TOI-1338から地球までの距離は、1,318 ± 5光年 (404 ± 2パーセク) である[1][6][注 4]NASA Exoplanet Archiveでは、これよりやや小さい1,302 ± 10 ly (399 ± 3 pc) という値が出ている[7]。この恒星系は星間赤化がほとんど見られず(減光量が E(B–V)=0.0036±0.0018 と非常に低い)、地球との間に宇宙塵がほとんど存在していないことを示唆している[3]:4579

2026年の時点で、TOI-1338は、少なくとも1つの周連星惑星トランジットを起こすことが知られている恒星系の中では最も明るい恒星系である[8]。そのため、天文学者らはTOI-1338を透過光分光法を用いて惑星のトランジットを観測するのに適した対象であると考えており、この観測によって惑星の大気組成を解明することができると期待されている[8][9]:705[5]:11

観測の歴史

TESSによる観測データから作成したTOI-1338の光度曲線。挿入図は、拡大表示したTOI-1338 Aの食とTOI-1338 Bの食を示している。

TOI-1338は1990年代にヒッパルコス衛星によって初めてカタログ化され、2000年にティコ第二星表に掲載された[1]。2000年代には、スーパーWASPによる観測でTOI-1338が周期的にを起こしていることが判明した。しかし、当初TOI-1338の食はホット・ジュピタートランジットによるものであると誤認されていた[4]:2[3]:4577。2009年にEclipsing Binary, Low Mass(EBLM)プロジェクトによる詳細な観測が行われ、TOI-1338が食連星系であることが確認された。これにより、EBLM J0608-59という名称が与えられた[4]:2[9]:705

EBLMプロジェクトでは、2009年から2022年にかけてチリにある望遠鏡で2つの恒星の物理的特性を明らかにすることを目的としてTOI-1338を広範囲に観測した[10]:2573。その間、他の2つの独立したプロジェクトもTOI-1338の観測を開始した。その2つは2014年に開始されたBinaries Escorted By Orbiting Planets(BEBOP)プロジェクトと[4]:7[9]:705、2018年に開始されたTESSである[注 5]。2020年、天文学者らがTOI-1338の周囲を公転している最初の太陽系外惑星の発見を公表した際にTOI-1338(「TOI」は「TESS Object of Interest」の略)という名称が知られるようになった[4][12]。もう1つの名称であるBEBOP-1は、2023年にBEBOPプロジェクトの天文学者らがTOI-1338の周囲を公転している2番目の惑星の発見を公表した際に、この恒星系に与えられたものである[9][13]

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は2026年9月24日と25日にTOI-1338を観測する予定である。この日、内側を公転しているTOI-1338 bが2つの恒星の前を通過(トランジット)すると予測されている[注 6]。JWSTは透過光分光法を用いてこのトランジットを観測し、惑星の大気組成を解明する予定である。観測が成功すれば、周連星惑星の大気に関する詳細な情報を得られる初の観測となる[8]

連星

物理的特性

TOI-1338は、スペクトル分類がF8型の恒星TOI-1338 AとM型の赤色矮星TOI-1338 Bからなる単線分光連星である。TOI-1338 BはTOI-1338 Aより約9等級暗く、スペクトルから検出することは不可能である[15][4]。連星系のうち、TOI-1338 Aは、太陽よりも高温(温度 6031 K)、高輝度(光度 2.1 L)、大型(半径 1.32 R質量 1.1 M)である[3]:4581。もう一方のTOI-1338 Bは、太陽よりも低温(温度 3300 K)、低輝度(高度 0.009 L)、小型(半径 0.31 R、質量 0.31 M)である[6][3]:4581。この連星系の年齢は60億年である[3]

軌道

この2つの恒星は14.6日の周期で互いの周囲を公転しており、平均約0.13天文単位 (19,000,000 km) 離れている[9]:704。2つの恒星の軌道は天球面に対して89.7°傾いており(つまり真横から見下ろす形)、明るさの変化は非常に小さいものの、TOI-1338 Aの食とTOI-1338 Bの食の両方が観測できる。TOI-1338 Aの食は、温度の高いTOI-1338 Aが温度の低いTOI-1338 Bによって部分的に掩蔽されるときに起こる。これは約5時間続き、明るさは約4%減少する。TOI-1338 Bの食は、温度の低いTOI-1338 Bが温度の高いTOI-1338 Aによって掩蔽されるときに起こる。これも約5時間続くが、明るさの低下は0.5%未満である[4]

惑星系

TOI-1338系の想像図

惑星TOI-1338 b(またはTOI-1338 (AB) b[16])は、大きさが海王星土星の中間で、連星系と約1°以内の同一平面上を公転している[4]。TOI-1338 bの質量は地球の約11倍と推定されており、同じく周連星惑星であるケプラー47cと同様に低密度であることが示唆されている[5]

TOI-1338 Aの自転は、連星系およびTOI-1338 bの軌道面とほぼ一致している(赤道傾斜角 β = 2.8±17.1 °)。ロシター・マクローリン効果が周連星惑星を持つ恒星に対して測定されたのはこれが2回目である。ケプラー16は、このような測定を行った最初の惑星系であった。TOI-1338系の自転軸の一致は、TOI-1338 bが単一の周連星円盤から形成されたことを示唆している[17]

2023年には、ドップラー分光法により2番目の周連星惑星TOI-1338 c(またはTOI-1338 (AB) c[18]BEBOP-1c)が発見された。TOI-1338 cの公転周期は約215.5日、地球の75倍の質量を持つ巨大ガス惑星で、高精度視線速度系外惑星探査装置(HARPS)とESPRESSOによって発見された。TOI-1338 cはドップラー分光法のみを用いて発見された最初の周連星惑星である[9]。また、連星系やTOI-1338 bともほぼ同一平面上にある[5]

TOI-1338系の2つの図。左: 地球から見たときの図。TOI-1338 bの軌道は横向きで、TOI-1338 Aの手前を通過している様子が描かれている。右: 上から見たときの図。惑星の軌道・軌道の不安定領域・ハビタブルゾーン(HZ)が描かれている。
TOI-1338の惑星[5]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b 11.3±2.1 M 0.4607+0.0084
−0.0088
[4]
95.4001+0.0062
−0.0056
0.0331+0.0022
−0.0021
90.494+0.013
−0.014
°
7.661±0.053 R
c 75.4+4.0
−3.6
 M
0.794±0.016[9] 215.79+0.46
−0.51
0.037+0.032
−0.026
97.0+6.7
−6.8
°

脚注

注釈

  1. このウェブサイト赤経赤緯[1]から導出
  2. 1 2 パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  3. 2つの恒星は互いに非常に近い軌道を描いているため、画像上ではそれぞれの恒星を分離して識別することができない。Kostov et al. (2020)の図6を参照[4]
  4. ガイアの初期データリリース3(EDR3)によると、TOI-1338の視差は2.4752±0.0099 ミリ秒角である[1]。視差は、次の式で距離に変換できる:



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