Bemboとは? わかりやすく解説

Bembo

名前 ベンボ; ベンボー

Bembo

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/07/23 09:22 UTC 版)

Bembo
様式 セリフ
分類 ガラルド
オールド・スタイル
デザイナー
制作会社 モノタイプ
制作年月日 1495年 - 1496年、1928年 - 1929年
派生品
  • Bembo Titling
  • Bembo Condensed Italic(フェアバンク)
上記表示フォント ET Bembo

Bembo(ベンボ)は、1928年から1929年にかけてイギリスのモノタイプによって制作されたセリフ書体であり、主に本文用として広く用いられている。セリフ書体における「オールド・スタイル」に分類され、そのレギュラー体(ローマン体)は、フランチェスコ・グリフォが1495年頃ヴェネツィアの印刷業者アルドゥス・マヌティウスのために彫った活字(「アルダイン・ローマン」と総称される)のデザインに基づいている。Bemboという名称は、マヌティウスがこの活字を用いて最初に出版した、詩人で聖職者でもあったピエトロ・ベンボによる1496年刊の小著に由来する。イタリック体は、1520年代に印刷業者として活動したカリグラファー、ジョヴァンニ・アントニオ・タリエンテ英語版の作品に基づいている。タリエンテは、マヌティウスやグリフォより後の時代の人物である。

モノタイプがBemboを制作したのは、同社の役員であり印刷史家でもあったスタンレー・モリソンの影響のもと、イタリア・ルネサンス期の印刷に対する関心が再燃していた時期であった。これに先立ち、マヌティウスの活字をより忠実に復刻した「Poliphilus」が発表されていたが、Bemboの評価はそれを凌ぐものとなった。また、モノタイプはカリグラファーのアルフレッド・フェアバンク英語版の設計による、非常に個性的な第2のイタリック体も制作したが、こちらも通常版のBemboほどの注目を集めることはなかった。

誕生以来、Bemboは美しく可読性の高い書籍用書体として根強い人気を誇っている。Bemboを採用した著名な例として、ペンギン・ブックスエブリマンズ・ライブラリー英語版叢書、オックスフォード大学出版局ケンブリッジ大学出版局ナショナル・ギャラリーイェール大学出版局英語版エドワード・タフト英語版などが挙げられる。その後、写真植字用のバージョンが発表されたほか、モノタイプをはじめとする複数のメーカーからデジタルフォントとしても復刻されている。

歴史

Bemboのモデルとなった『De Aetna』の見開きページ
『De Aetna』のテキストサンプル
1530年代半ばのピエトロ・ベンボ小ルーカス・クラナッハ画)
Bemboのイタリック体の典拠となったジョヴァンニ・アントニオ・タリエンテの書法手本(1524年)。この部分はタリエンテの筆跡を再現するために彫版され、他の部分は類似したデザインの活字で組まれている。

Bemboのレギュラー体(ローマン体)は、グリフォがマヌティウスのために制作した書体を基にしている[1][2][3]。グリフォ(フランチェスコ・ダ・ボローニャとも呼ばれる)は彫刻師であり、鋼鉄の父型(パンチ)を彫ることで書体を制作した。この父型は、金属活字を鋳造する際の型である母型(マトリックス)を打ち出すための原版として用いられた[4]

マヌティウスは当初、ギリシア語の著作のみを印刷していた。彼が初めてラテン文字による印刷を行ったのは、1496年2月(ヴェネツィア暦英語版では1495年)に出版された『Petri Bembi de Aetna Angelum Chabrielem liber』という書物であった。現在では通常『De Aetna』と呼ばれるこの本は、エトナ山への旅を題材とした全60ページの小著である。著者は当時まだ若きイタリアの人文主義詩人であったピエトロ・ベンボで、彼は後に枢機卿となり、教皇レオ10世の秘書を務め、ルクレツィア・ボルジアの愛人としても知られるようになった[5][6][7]

グリフォは、古典や文学作品の写本で当時好まれていた人文主義者の筆写体の特徴を活字に十分反映させた、最初期の父型彫刻師の一人である。この書風は、人文主義者たちがゴシック書風(ブラックレター)として退けた書籍用書風や、日常的に用いられていたチャンセリー書風英語版とは明確に異なるものであった。ニコラ・ジャンソンをはじめとする初期の「ヴェネツィアン・ローマン」の伝統とグリフォの活字とを分かつ主な特徴の一つは、e の横画が水平に保たれている点にある。この字形は現在では一般的だが、マヌティウスによって広く普及したものである[5][8]。現代の書体デザイナーであるロバート・スリムバックは、先にハリー・カーターが述べたように、グリフォの仕事を「美しさと機能性の理想的な均衡」をもたらした画期的な業績であると評している[9][10]。なお、この書体はアルドゥス・マヌティウスの名にちなんで「アルダイン・ローマン」(Aldine roman) と呼ばれることもある[11]

フランスでは、1496年から1499年にかけて『De Aetna』のオリジナル大文字を用いた書体が使用されたのは約12冊の書籍に限られていたとみられるにもかかわらず、1530年以降、ロベール・エティエンヌクロード・ギャラモンをはじめとする多くの印刷業者や活字父型彫刻師(パンチカッター)がこの活字に影響を受けた[11][12][13]。歴史家のベアトリス・ウォードは1920年代、この活字が影響力を持った理由について、小規模な試験的プロジェクトとして制作されたと思われるオリジナル版『De Aetna』の印刷品質が高かったためではないかと推測している[5]。『De Aetna』は、おそらく実験的な試みとして異体字を交えて印刷されており、その中には頂部が平らな大文字と同形式の小文字 p なども含まれていた[11][a]。1499年にグリフォは大文字を彫り直し、書体の外観をわずかに変更した。この改刻版は、アルドゥス・マヌティウスが出版した有名な挿絵入り書籍『ヒュプネロトマキア・ポリフィリ』の印刷に用いられている[15][16][17]

何度か大文字が差し替えられつつも、グリフォのローマン体は1550年代までマヌティウスの印刷所で使用され続けた。その後、設備の刷新に伴い、ギャラモン、ピエール・オータン英語版ロベール・グランジョンらがグリフォの影響を受けて制作したフランスの書体が導入されることとなる[18]。マヌティウスの印刷物を多数収蔵するカリフォルニア大学ロサンゼルス校のキュレーターは、これを「全面的な刷新であった……印刷所は先例に従い、フランスで人気を博していたこれらの活字は西ヨーロッパ全域へ急速に広まった」と評している[15]。これらのようなオールド・スタイルの活字は、18世紀から19世紀にかけてより幾何学的なディドニ式(モダン・ローマン)の活字が登場したことで、最終的に使われなくなった[19][20][21][22]。しかし19世紀後半、アーツ・アンド・クラフツ運動の興隆とともに再び人気を取り戻した[23]

1500年、マヌティウスは同じくグリフォがデザインしたイタリック体を用いて印刷された初の書籍を出版した[24]。この書体は今日のようにローマン体と組み合わせて用いることを前提としたものではなく、当初は小型本に適した、よりくだけた代替書体として意図されていた[25][26][27][28]

イタリック体

Bemboのイタリック体は、直接的にはグリフォの活字に基づくものではなく、書家であり書法教師でもあったジョヴァンニ・アントニオ・タリエンテ英語版(ジョヴァンナントニオと綴られることもある)の作品に基づいている。マヌティウスやグリフォの時代より後の1524年、タリエンテはヴェネツィアで書法手本『The True Art of Excellent Writing』(すぐれた筆記の真の技法)を出版した。これには銅版画のほか、彼自身のカリグラフィーに基づくと推測されるイタリック体活字で組まれたテキストが一部含まれていた[29][30][31][b](タリエンテは書法だけでなく、読み書き、算術、刺繍の独学用手引書や、恋文の文例集なども出版していた[32][33][34])。この書体もフランスで模倣され、1528年以降には模倣版が登場している[13]。この時期に作られ、大きな影響を与えたもう一つのイタリック体として、同じく書家から印刷業に関わるようになったルドヴィコ・ヴィチェンティーノ・デッリ・アリギ英語版の書体がある。ほぼ直立したアリギのイタリック体デザインもフランスで模倣され、さらに20世紀のフォントデザインにも影響を与えることとなる[13]。モリソンはその後もタリエンテの作品に関心を寄せ続け、晩年にはタリエンテの装飾模様のデザインを取り上げた書籍『Splendour of Ornament』を編集した[35][c]

モノタイプにおける歴史

Bemboにおける斜めの軸(右手による手書きを模し、字画は上部中央のやや左で最も細くなる)と、水平の横画を持つ e。下図はモノタイプの同時代の書体Centaur英語版で、1470年代のやや古い印刷様式に基づいており、e の横画が傾いている。どちらのデザインも、適度に下向きに傾斜した上部セリフなど、オールド・スタイルに典型的な特徴を備えている。
金属活字のBembo。

モノタイプのBemboは、1495年のアルダイン・ローマンの復刻版として最も有名なものの一つである。ロンドン南部サリー州サルフォーズ英語版にあるモノタイプ工場のデザインチームによって、同社幹部で印刷史家のスタンレー・モリソンの影響のもと制作された[36][37][38]。それ以前の60年間、アーツ・アンド・クラフツ運動に関わった印刷業者の多くは、ニコラ・ジャンソンによるさらに古い書体に関心を寄せていたが、モリソンは同時代の他の書体よりもアルドゥス・マヌティウスの書体を高く評価していた[39][40][41]。彼が評価した主な理由は、水平の横画を持つ e の均整や、大文字が最も高い小文字のアセンダーよりもわずかに低く作られている点など、文字構成のバランスの良さにあった[d]。彼はアルダイン・ローマンについて、「筆記ではなく彫刻に着想を得たものであり、文字ではなく彫刻なのである」と評している[42][43]。彼の友人で印刷業者のジョヴァンニ・マルデルシュタイヒ英語版もまた、アルダイン・ローマンの魅力について「グリフォは、ペンで書かれた文字特有の丸みを帯びた形状の影響から脱却した。その代わりに、より細身で、いわばよりモダンな、(彫刻に)適した形を発展させたのである。(中略)ジャンソンのスタイルがアール・ヌーヴォー期の美的感覚に強く訴えかけたのに対し、今日の建築やタイポグラフィにおける我々の嗜好は、より簡潔で抑制の利いた形態へと傾いている」と語っている[14]

Bemboの開発は、金属活字の使用から脱却することなく過去50年間に起きた一連の印刷技術の飛躍的進歩を背景に行われた。パントグラフ英語版彫刻機により、大きな図面から父型(パンチ)を正確に機械加工できるようになった。これにより、目的の文字と全く同じ寸法の鋼鉄からマスターパンチを手彫りしていた従来の書体よりも、より精緻な仕上がりが得られるようになった。さらに、幅広いサイズの活字を迅速に開発することも可能になった[44][45]。加えて、手作業による組版は当時の鋳造活字組版(ホットメタル)システムに取って代わられつつあり、なかでもモノタイプのシステム英語版は(ライノタイプと競合しつつ)最も普及していたものの一つであった。いずれのシステムも、キーボード操作で活字を迅速に鋳造できたため、手作業で活字を鋳造して組版に組み込む手間を省くことができた。活字そのものではなく、活字を鋳造するための母型(マトリックス)のみを保管すればよくなったため、印刷業者はより多様な書体を利用できるようになり、さまざまな書体への需要が高まっていった[46]。一方、芸術的な観点からは、19世紀に導入された機械的で幾何学的なディドニや「近代化されたオールド・スタイル」書体を好む傾向が薄れ、それ以前に開発された「真のオールド・スタイル」のセリフ体への関心が再燃していた。この変化はその後も長く続くこととなる[47][48][49]。同時に、鋳造活字組版は新たな制約も生んだ。モノタイプのシステムでは(ライノタイプより制約は少なかったものの)、1行に収まる文字数を機械的に計算するため文字幅を特定の寸法に揃えざるを得ず、その制約下でも調和して見える文字を制作する工夫が求められた[49]

モリソンは15世紀のイタリア印刷史に関心を抱いており、文通相手でもあった印刷業者ジョヴァンニ・マルデルシュタイヒとこの主題について議論を重ねていた。彼とモリソンの間では、Bemboの開発を論じる一連の書簡も交わされている[50][51][52]。また、印刷にある程度の関心を持っていた桂冠詩人ロバート・ブリッジス英語版宛ての書簡でも、このプロジェクトについて論じている[e]。プロジェクトのため、モリソンは『De Aetna』を一部購入し、その後、書体のモデルとしてモノタイプへ売却した[12]

Bemboの技術的な制作工程は、当時のモノタイプの標準的な手法に則っていた。文字は、熟練の製図部門チームによって紙上に拡大原図として描かれた。このチームを率いて指導したのは、モノタイプがドイツの印刷業界から迎えたアメリカ人技師のフランク・ヒンマン・ピアポント英語版とフリッツ・シュテルツァーであった。設計図を作製した製図スタッフは女性の割合が極めて高く、その多くは地元や近隣のライゲート英語版美術学校から採用されていた[53]。これらの図面をもとに、ベントン式パントグラフ彫刻機を用いて、母型を刻印するための金属製の父型が切削加工された[54]。残りの文字を完成させる前に、まず限られた数の文字だけを彫って試し刷りを行い、ページ全体の黒み(カラー)のバランスを確認するのが、当時のモノタイプの標準的な手順であった[54]

モノタイプの宣伝部門は、1931年の見本帳において、完成したイタリック体を「上品で落ち着きがある」と評し、奇抜すぎるデザインを避けようとした意図を強調した[55]。しかし、検討されたデザインはこれだけではなかった。モリソンは当初、書家アルフレッド・フェアバンクにアリギの作品に基づいたほぼ直立したイタリック体のデザインを依頼し、それをBemboと対になるイタリック体として採用することを検討していたが、結果的にその用途には奇抜すぎると判断した[30]。最終的にモノタイプは、タリエンテの活字に影響を受けたより標準的なデザインを作製し、フェアバンクのデザインは「Bembo Condensed Italic」として販売した[56][57][58]。これは2003年に「Fairbank」としてデジタル化され、モノタイプのBemboのデジタルフォントとは別に販売されている[59][60][61][62]。モリソンは回顧録の中で、フェアバンクのデザインは「ページ全体をその書体だけで組んだときに最も美しく見える」と認めている[30]。一方のフェアバンクは後に、自分のイタリック体がローマン体と対になる書体として意図されていたとは知らされておらず、もし知っていれば別のデザインにしていたと不満を漏らした[63][64]

当時のモノタイプをはじめとする各社の金属活字書体では一般的であったように、この書体も約15ポイントという比較的大きなサイズで制作されたグリフォの単一サイズ用デザインに修正を加え、サイズごとに異なるデザインで制作された[49]。具体的には、小さなサイズでは文字間を広げ、エックスハイトを高く(小文字を大きく)し、印字の際の黒みをより強くする一方、大きなサイズではより細く優美にし、文字間を詰めたデザインとした[49][f]

特徴

Bemboの特徴的な文字を、2種類のデジタル復刻版および他の一般的な本文用書体と比較したもの。

Bemboの際立った特徴として、大文字 Q のテールが字形の中央から始まっていること、大文字 J にわずかなフックがあること、そして M の両端がわずかに外側に開いていることが挙げられる。A の頂部は平らである。多くの小文字には緩やかで流れるような曲線が見られ、r と e のアームの終端はやや上向きかつ外側へ広がっている。小文字の c と e は、字面がわずかに前方へ張り出した形になっている[48]。h・m・n の右側のステム(縦画)は完全に垂直ではなく、下に向かってわずかに左へ湾曲している[g]。イタリック体では、k の右下のストロークが優美な曲線を描いており、p・q・y のディセンダーの先端は平らな水平のストロークで終わっている[67]。1950年代にモノタイプは、その特徴について「セリフは細いスラブ状で、ブラケット部(縦画とセリフのつなぎ目)も細く、小文字ではベースラインに沿って右へ長く伸びている」と記している[68]。すなわち、多くのセリフ(特に W などに見られる水平のセリフ)は、文字の主画へ向かって明瞭な曲線を描くのではなく、ほぼ均一な太さの細い線となっているのである。また、アセンダーはキャップハイト英語版よりも高い位置まで達している[69]

Bemboにおける2種類の R のデザイン。すべてのデジタル版に両方が収録されているわけではない[h]

金属活字のBemboには2種類の大文字 R が含まれている。一つはフランチェスコ・グリフォによるオリジナルの彫刻に倣った長く伸びた脚を持つものであり、もう一つは、印刷業者の好みに応じて本文用に使えるよう、脚をやや内側に収めたものである[70]

Bemboはルネサンス期の活版印刷の特徴を厳密に再現するのではなく、20世紀の感性や当時のデザイン感覚と融合させている。フランチェスコ・グリフォの最初期の『De Aetna』の大文字に見られる特異な点として、右上にセリフがないように見える非対称な M が挙げられる。活字鋳造時の不具合によるものと推測されるほど奇妙な形だが、ギャラモンや同時代のフランスの活字父型彫刻師による模倣書体では、しばしばそのまま取り入れられた[13]。モノタイプによる復刻版の最終版ではこの形状は採用されなかったが、特別注文で入手することは可能であった[i]。また、アルドゥス・マヌティウスがギリシア文字のウプシロンの伝統に則って用いた、湾曲した大文字の Y もモノタイプ版では採用されなかった(この Y は「Poliphilus」や「Blado」の一部バージョンでは使われていたが、「Poliphilus」のデジタル版には採用されていない)[73][74][75][j]。アレクサンダー・ネスビットは、この大文字について「(グリフォの)活字の精神を受け継ぐ複合的なデザイン」と評している[76]。歴史家のジェームズ・モズリーは、最初期のバージョンからの他の変更点として、大文字のウェイト(太さ)の軽減、従来の右側セリフを追加した G の改変、e の幅の拡大を指摘しており、Bemboの数字はモノタイプがすでに開発していた書体「Plantin英語版」の数字を基にしていると示唆している[77][12]

イタリック体においては、タリエンテの活字に見られる伸びやかなアセンダーが短くされ、右側のカールはより標準的なセリフに置き換えられている。ルネサンス期のイタリック体は、ローマ時代の碑文の伝統に則り直立した大文字とともに用いられていたが、モノタイプは小文字の傾斜に合わせたイタリック体の大文字も制作した。ボールド体(グリフォや同時代の人々はボールド体を使用していなかったため、モノタイプによる独自の発明である)は非常に黒みが強く、レギュラー体とは明確なコントラストをなしている。さらに、15世紀や16世紀に使われていたテキスト数字(小文字の高さに合わせた数字)に加え、ライニング数字(大文字の高さに合わせた数字)も追加された[78]

ブックデザイナーのエリザベス・フリードレンダー英語版は、ウィンストン・チャーチルの第二次世界大戦回顧録の章頭用に、Bemboではめったに見られないスワッシュ大文字をいくつかデザインした[79][80]

関連書体

PoliphilusとBlado

モノタイプのPoliphilusの大文字の見本刷り。マヌティウスの様式に倣った異体字の「ヤシの木型Y」(palm Y) が含まれている。
1531年にアントニオ・ブラドが出版した書籍。小文字にはイタリック体、大文字には正立体を用いるという、当時の一般的なイタリック体の用法が確認できる。傾斜した大文字を用いる現代的なイタリック体の概念は、この時点ではまだ普及していなかった[81]

モノタイプはすでに、同時代のイタリアの印刷術とカリグラフィーに着想を得た2つの書体、ローマン体の「Poliphilus」とイタリック体の「Blado」(いずれも1923年制作)を設計していた[82][83][84]。これらは、古い時代の印刷物の趣を再現するため、Bemboの滑らかな線に比べてより個性的で不規則な作りとなっている。その後もモノタイプのカタログに残り、デジタル化もされているが、今日ではBemboほど広く知られてはいない[74][85][86][87][88]。したがってBemboは、大衆市場への訴求を目指して既存のデザインコンセプトを発展させたものと見なすことができる。つまり、グリフォのデザインの基本構想を取り入れつつ、(Poliphilusとは異なり)1920年代に可能となったより高度な印刷技術に適合するよう、その外観を刷新したのである。実際、Bemboの当初の仮称は「Poliphilus Modernised(近代化されたPoliphilus)」であった[77][82]

Poliphilusの名称は、マヌティウスがラテン文字で印刷した最も著名な書籍の一つ『ヒュプネロトマキア・ポリフィリ』に由来する。この書物には『De Aetna』と同じローマン体が用いられたが、大文字は新たに彫り直されていた。Poliphilusは、同書の英訳版の出版を企画していたメディチ・ソサエティ (Medici Society) のために制作されたものである[15][89][22]。一方、Bladoの名称は、アリギの同僚であった印刷業者アントニオ・ブラドにちなんで名付けられた[30][90]。スタンレー・モリソンはBemboのローマン体を好んでおり、Poliphilusについてはあまり高く評価していなかった[82]。Bemboとは異なり、PoliphilusとBladoの金属活字にはいずれも、オリジナルの活字と同様に、ギリシア文字の影響を受けた上部が湾曲した Y が採用されていた[16][74]

Centaur

金属活字見本帳に大きなサイズで組まれたArrighiとCentaur

モノタイプは、Bemboとほぼ同時期にCentaur英語版のライセンスを取得して発売した。デザインを手がけたのはアメリカのブックデザイナー、ブルース・ロジャース英語版である[91]。そのローマン体は、Bemboよりもわずかに古いイタリア・ルネサンス期の活版印刷、具体的には1470年頃のヴェネツィアにおけるニコラ・ジャンソンの書体に基づいている。一方、フレデリック・ウォード英語版が手がけたイタリック体はBemboと同様に1520年代の書体に由来し、これも1520年頃のアリギの活字を緩やかに踏襲したものである[92][93][94]。Bemboと比較すると骨格がやや細身であるが、この特徴はデジタル復刻版において特に顕著である[95][k]

ペンギン・ブックスでは、古典作品の版の見出しやタイトルにCentaur、とりわけその大文字とイタリック体を頻繁に使用した。ただし、傾いた e のような字形の違いがあるため、小文字についてはBemboほど自然には調和しない[96][97]

GriffoとDante

Bemboは20世紀におけるイギリスの書籍印刷を席巻することになるが、ジョン・ドレイファス英語版によれば、「モリソンはグリフォのローマン体の改刻版に完全に満足していたわけではなく」、「機械的な改刻ではオリジナルの真の魅力が引き出されていない」と感じていたという[14]。彼の友人である印刷業者ジョヴァンニ・マルデルシュタイヒは、自身の私家印刷工房「オフィチーナ・ボドニ」で使用するための新たな復刻書体を設計する試みを2度行った。最初の試みはモリソンとの協議の上で進められ、父型彫刻師シャルル・マランフランス語版(彼はその数年後、モリソンのためにPerpetua英語版の父型も彫刻している)の手によって制作された。より繊細なこの「Griffo」の復刻版(1929年)は手印刷で使用され、マルデルシュタイヒの工房外で用いるために展開されることはなかった[14]

1940年代に入ると、マルデルシュタイヒは2番目のデザインとなる「Dante英語版」の計画に着手した。これも1946年以降、マランによって時間をかけて彫刻されたが、モノタイプにも採用された[14]。モノタイプの「Dante Series 592」、「Dante Semi Bold Series 682」、および「Dante Titling Series 612」は、ディド・サイズでのみ製造された。これはBemboよりも個性的なアルダイン・ローマンの復刻であり、Bemboほどの人気を集めることはなかった[49]

見出し用書体

ローマン・スクエア・キャピタル英語版に着想を得てフェリーチェ・フェリシアーノ英語版が描いたヒューマニスト・キャピタルに基づく、モノタイプの「Felix Titling」

モノタイプは、ルネサンス期の活版印刷を基に、Bemboを補完するものと見なせる見出し用書体を複数制作している。その一つが、Bemboの大文字を直接のベースとしつつ、見出し用の大きなサイズに合わせてより繊細なデザインに仕上げた「Bembo Titling」である。もう一つが、1463年にフェリーチェ・フェリシアーノ英語版が描いたヒューマニスト・キャピタルに着想を得て1934年に制作された、より幾何学的な「Felix Titling」である[98][99]。また、金属活字時代にモノタイプはCentaurの見出し用書体も発表しており、これはペンギン・ブックスでしばしば使用された。ただし、モノタイプによるCentaurのデジタル版には、この見出し用書体は含まれていない[100]

年表

ルネサンス期

グリフォ、マヌティウス、アリギ、タリエンテの死後である1564年に、ローマでアントニオ・ブラドによって印刷されたタイトルページ。
  • 1496年 グリフォのローマン体。
  • 1501年 グリフォのイタリック体。以降50年間にわたりイタリック体が発展していく。
  • 1515年 マヌティウス没[101]
  • 1518年 グリフォ没[102]
  • 1520年代 タリエンテがヴェネツィアで、ルドヴィコ・ヴィチェンティーノ・デッリ・アリギがローマ(あるいはヴェネツィア)で活動し、ともに書法手本を出版する。
  • 1522年 - 1525年 タリエンテが書法手本『The True Art of Excellent Writing』を出版し、同時期にアリギも『La Operina』などの書法手本を出版する[29][103][104][l]。アリギの友人であるジャン・ジョルジョ・トリッシーノ英語版はアリギについて、「カリグラフィーにおいて彼は現代の誰よりも優れていたため、かつてはペンでしか為し得なかったことを、いまや印刷によって実現しており、その美しい活字で彼は他のすべての印刷業者を凌駕している」と記している[31]。同時代の人物であるアントニオ・ブラドは、アリギの作品に由来するとみられるイタリック体を用いてローマで出版活動を行う。
  • 1527年 イタリア中部で戦乱が起こる。アリギが歴史の表舞台から姿を消す。ローマ劫掠で命を落とした可能性がある[31][107]
  • 1528年 タリエンテがヴェネツィアで没[104]
  • 1535年 ブラドが教皇庁の印刷業者に任命され、1567年に没するまでその職務を全うする[108][109]
  • 1530年代 - 1550年代 マヌティウスらの影響を受け、フランスが活字鋳造産業の中心地となる。ヴェネツィアのアルド印刷所において、古いイタリアのデザインがフランスの活字書体に取って代わられる[15]。イタリック体の大文字は小文字と同じように傾斜させるという伝統が確立する[110]

20世紀

  • 1910年代 イタリア・ルネサンス期のイタリック書風が、エドワード・ジョンストンアルフレッド・フェアバンク英語版などのカリグラファーによって復興される[30]
  • 1923年 モノタイプが、アリギとアントニオ・ブラドの作品に基づくイタリック体「Monotype series 119」と、グリフォの作品に基づくローマン体「Poliphilus (Monotype series 170)」を発売。
  • 1926年 エドワード・ジョンストンが自身のイタリック体カリグラフィーに基づく書体を開発したが、広く普及するには至らなかった[30]
  • 1926年 フレデリック・ウォード英語版がアリギの作品に基づくイタリック体「Monotype series 252」を制作。現在ではほぼ常に「Centaur英語版」の対になる書体として使用されているが、当初は独立した書体であった[30]
  • 1928年 - 1929年 モノタイプが、グリフォの作品に基づきつつもより滑らかな質感を持つ「Bembo (Monotype series 270)」を開発・発売。同社はアリギの作品に基づくフェアバンクのイタリック体の採用も検討したが断念し、Bemboの標準イタリック体にはタリエンテのモデルが採用された[30]。フェアバンクのイタリック体、すなわち「Bembo Condensed Italic (Monotype series 294)」のホットメタル用母型は、10pt、12pt、13pt、16ptの4サイズのみ製造された。
  • 1929年 モノタイプが「Centaur」とウォードのイタリック体を組み合わせた書体として発売[91]
  • 1960年代 モノタイプが写真植字用の「Bembo」を発表[111]。他社からもBemboの復刻版が発表される[112][113]

評価

60ポイントおよび72ポイントの大型サイズのBembo。金属活字時代、24ポイントを超えるサイズでは異なるデザインが用いられており、より繊細な造形であることがわかる[114]。さらに、f などのアセンダーがキャップラインを大きく越えて伸びている。

Bemboは書籍の出版において、とりわけイギリスで高い人気を博してきた。HMSO英語版(英国出版局)が外部委託の印刷業務向けに定めたスタイルガイドにおいても推奨書体とされている[115]ケンブリッジ大学出版局の社史でも、最も頻繁に用いられた書体の一つとしてBemboが挙げられている。スタンレー・モリソンは同大学と深いつながりがあり、彼の個人アーカイブ(およびモノタイプの資料の多く)は彼の死後、同大学に収蔵された[116][117]

書体に関する評価として、ジェフ・プライスは作品集『Typographic Specimens: The Great Typefaces』の中で、Bemboは「極めて均一な黒みの組版を実現する能力」で知られるようになり、それが「発売以来、書籍用書体として最も人気のあるものの一つであり続ける」要因になったと論じている[118]ロジャー・ブラック英語版は1983年に、「私にとってBemboは時代を超越したローマン体の最高傑作である。もし無人島に一つだけ書体を持っていくとしたら、これを選ぶ」と語っている[119]。デジタルフォントデザイナーのニック・シンも、「Bemboには、熟練の制作技術とそれを支える高精度なテクノロジーから生み出された洗練された壮麗さがあり、それはオリジナルの精神をよく体現している。そして、新技術向けを謳って作られた大半の新しいデザインを見劣りさせるほどの、独特の優美な線質を備えている」と評している[120]。さらに、オックスフォード大学出版局の編集者ジョン・ベルは、出版業界を風刺した連作の滑稽詩『Mutiny on the Bembo』の題名に、この書体名を借用している[121][122][123]

デジタル化と派生書体

標準ウェッジ(S5-13.75セット)による鋳造用に準備された、Bembo 270-16ローマン体の大型組版用母型ケース。鋳造活字組版システムでは、キーボードの操作により、機械加工された母型を用いて活字が鋳造される。
モノタイプ組版機のキーボード。印字する文字は上部のペーパーリールに記録される。
Bembo 270-24ポイント・ローマン体用(19.5セット)の大型組版用母型ケース。
金属活字の鋳造に用いられるモノタイプ鋳造機。

モノタイプによるデジタル化

モノタイプは、「Bembo」および後発の「Bembo Book」という2種類の独立したデジタル化版を発売している。さらに、大文字のみで構成された細身の見出し用フォント「Bembo Titling」や、別デザインのイタリック体「Fairbank」も提供している[124][125]。「Bembo Book」は、線が太く本文での使用に適している点や、文字間隔をより適切に組めるよう R の脚を短くした代替字形が利用できる点から、より優れた版と評価されている[70][126][127]

モノタイプによる初期のデジタル版Bemboは、一般には成功作とは見なされていなかった[128][129]。これには主に2つの問題点が指摘されている。一つは、原画をそのままデジタル化したため、オリジナルの金属活字に比べて文字の黒みが極端に薄まってしまった点である。金属活字ではインクの滲みによって線が太くなるが、現代の印刷機器では滲みが大幅に抑えられているためである[130]。もう一つは、初期のデジタル版が9ポイントの金属活字の原画を基に設計された点である。その結果、書籍においてBemboが最も頻繁に使用されるポイントサイズでは、元の金属活字とはプロポーションが異なるフォントとなってしまった。セバスチャン・カーターは、特に M の字幅が広すぎると指摘している[114][131][89]。これらによりデジタルフォントのプロポーションに違和感が生じ、印刷サイズに合わせて3種類のオプティカルサイズが用意されていた金属活字や写真植字版の持つ繊細さを再現しきれていなかった[111][132][133][134][m][136]。後にモノタイプの幹部となる小林章は、初期のデジタル版について「一種の妥協の産物だ。(中略)もともと鋳造活字用にデザインされた書体は、細くて弱々しく見えてしまうことが多い。(中略)Bembo Bookは、私がおおよそ期待していた通りの仕上がりだ」と述べている[135]

「Bembo Book」の方が優れたデジタル化版と評価されている一方で、オリジナルのデジタル化版にも依然として利点がある。オリジナル版には、セミボールドとエクストラボールドという2種類のウェイトが追加されているほか、小文字の a や g を手書きに近いシンプルな字形にしたインファント・スタイルが用意されている。また、全体的に細身のデザインであるため、インクの滲みが出やすい印刷機で重宝される場合もある。さらに、クロスライセンスによって多様なベンダーから販売されており、非常に安価で入手できることも多い。その一例として、Fontsite社はオリジナルのデジタル化版の派生フォントを再販する権利を取得し、「Borgia」や「Bergamo」といった別名で販売している。これらには、スモールキャピタルや歴史的代替文字などのOpenType機能が追加されている[137]。ただし、どちらのバージョンにも、より繊細で優美なデザインを特徴としていた大型サイズのBembo活字のデジタル化は含まれていない[114]

グリフォに影響を受けた他の書体

Bemboの主要な競合書体の一つとして、2014年にライノタイプから発売されたヨヴィツァ・ヴェリョヴィッチ英語版による「Agmena」がある[138][139]。ラテン文字・ギリシア文字・セルビア語などのキリル文字に対応する統合セリフ体として設計されており、Bemboよりもカリグラフィー的なイタリック体を特徴とし、スワッシュ大文字やギリシア文字の合字にも対応している[140][141][142]

グリフォのデザインをより自由に解釈した書体として、ジョン・ダウナー英語版がデザインし、ビットストリームから発売された「Iowan Old Style英語版」がある。印刷向けのBemboよりもエックスハイトが大きく、ダウナーの前職である看板描きの影響を受けており、離れた場所からの視認性や、ディスプレイ、看板での読みやすさを重視して設計された[143]。現在ではApple Booksアプリのデフォルトフォントにも採用されている[144][145][146]

Bemboから直接的な影響は受けていないものの、同じくグリフォの影響を受けている書体に、ロバート・スリムバックによる「Minion」がある[147]アドビから発売されたこの書体は、2008年の調査において、高品質な印刷物で使用される最も人気のある書体の一つにランクインしている[148][149]

同様の着想を得たデザインのほかにも、写真植字およびデジタルフォントの時代にかけて、Bemboをより直接的に模倣またはデジタル化した書体が数多く制作された。「Bembo」はモノタイプの商標であるため、これらのバージョンは別の名称で発売されている。たとえば、ある非公式の写植版はカトリック聖職者が被るビレッタ帽にちなんで「Biretta」と名付けられ、エアハルト・カイザーによる別のバージョンは、東ドイツの印刷企業Typoart向けに制作された[150][112][113][151][152]。デジタル時代に入ると、Rubicon社が小サイズ向けの「Bentley」というバージョンを制作し、ビットストリームは「Aldine 401」の名でバージョンを発売している[153][154][155]。後者については、ライセンスを受けたParaType社が2008年にキリル文字セットを追加した[156]

自由かつオープンソースのフォント

BemboをベースとしたCardoフォント

Bemboをベースとしたオープンソース書体として、CardoとET Bookの2つが挙げられる。Cardoフォントは、デビッド・J・ペリーが古典研究での使用を目的として開発したもので、ギリシア文字やヘブライ文字を含み、SIL Open Font Licenseの下で無償公開されている[157]。一方、統計学者でありデザイナーでもあるエドワード・タフト英語版は、初期のBemboのデジタル化に満足できず、自著向けに代替となるデジタル化版の制作を依頼した。「ET Bembo」とも呼ばれるこの書体は、スタイルや対応言語が限定されたものであったが、タフトは2015年9月、これを「ET Book」という名称のオープンソースフォントとしてMITライセンスの下で一般公開した[158][159]。その後、2019年にダニエル・ベンジャミン・ミラーがSIL Open Font Licenseの下でXETBook(extended ET Bookの意)を公開した[160]。さらに、マイケル・シャープがこれをETbbへと発展させ、現在はCTANLaTeXプロジェクト・パブリック・ライセンス英語版の下で提供されている[161]

専用書体

ロンドン・ナショナル・ギャラリーのワードマークはBemboに基づいている。
BAA Bemboが使用されたヒースロー空港の案内標識

ヒースロー空港などのイギリスの空港では、長年にわたりBemboを大幅に改変した派生書体が使用されていた。これはシェリー・ウィンターズによってデザインされ、「BAA Bembo」あるいは「BAA Sign」と名付けられたもので、ウェイトが非常に太く、エックスハイトが大きいという特徴があった[162][163]

ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、建物正面に館名を彫刻する際の原図として、当時のコーポレートフォントであったBemboを使用した[164][165]

マシュー・カーターイェール大学のコーポレートフォントとして開発した「Yale英語版」書体は、フランチェスコ・グリフォの活字に基づいている。同大学はデジタル版のBemboに満足できず、大学の教員でもあったカーターに専用フォントの制作を依頼した[166]。カーターはこのデザインについて、「プロジェクトの発案者であり責任者でもあったイェール大学の印刷責任者ジョン・ガンベルも、アルダイン体という発想を気に入っていた。(中略)かつて大学の印刷物にモノタイプのBemboが使われていた時期があり、それが有用な前例となった」と述べている[167]。このフォントは、「イェール大学の学生、教職員、および認可された委託業者が、大学の出版物や通信物に使用する」場合にのみ利用でき、「個人的な目的や商業目的での使用は禁じられており、大学関係者以外への配布も認められていない」[168]

デジタル化以前の時代には、IBMIBM Composer用のフォントとして、Bemboから着想を得た「Aldine」を提供していた。IBM Composerは、小規模な印刷向けの写真拡大用原稿や、高品質なオフィス文書の作成を目的とした、最高級の電動ゴルフボール・タイプライターシステムである[169][170]。しかし最終的にこのシステムは、より安価な写真植字システム、さらには1980年代のワープロや汎用コンピュータに取って代わられたため、過渡期の製品に終わった[171]

注釈

  1. 印刷業者・書体デザイナーのジョヴァンニ・マルデルシュタイヒ英語版は別の見解を示しており、限られた数の異体字を使用した目的は、写字生による手書き文字の雰囲気を表現するためであったと推測している[14]
  2. これは正式な書名を短縮したものである[32]
  3. モリソンの死後に出版された。30年前にモリソンのアートディレクションの下でTimes New Romanをデザインしたヴィクター・ラーデント英語版による、タリエンテのアートワークの復元図版が収録されている[35]
  4. 前述の通り、現在では「アルダイン・ローマンは、クロード・ギャラモンをはじめとする職人らが1530年代に制作したフランス・ルネサンス期の新しい書体に決定的な影響を与え、ひいてはそれ以降に作られたほぼすべての書体の源流となった」という見解が定着している。モノタイプのモリソンと彼の共同研究者であるベアトリス・ウォードは、この結論を広める上で極めて重要な役割を果たした[39]
  5. この関心が実を結び、ブリッジスの晩年の出版物2点には、イタリア・ルネサンス期の印刷を復刻したモノタイプの書体が用いられることとなった。ブリッジスの詩『The Tapestry』はArrighi英語版体で印刷され、『The Testament of Beauty』はモリソンのデザインによるBemboのイタリック体で印刷された。
  6. このスケーリングがどのように行われたかを示す一例として、ライノタイプの熟練デザイナーであったチョーンシー・グリフィスは数年後、自身が手がけた新聞用書体について、6ポイントサイズの文字幅は12ポイントサイズの半分ではなく、約71%の幅を持たせたと述べている[65]
  7. デジタル化後、モノタイプの書体デザイナーであるスティーブ・マットソンは、この特徴が低解像度の画面表示において問題となると指摘している[66]
  8. この画像では、見出しにFontSite社による極めて繊細なデジタルフォント「Bergamo」を使用し、本文にはオープンソースの「ET Book」を使用している。モノタイプの「Bembo Book」は、両方のスタイルを収録している数少ないデジタルフォントの一つである。
  9. 別形の M を示す見本としては、1962年のネオン・タイプ部門 (Neon Type Division) のカタログがある[71]。また、大英博物館の展示カタログでも使用された[72][12]
  10. そのより控えめな形態が、ヘルマン・ツァップの「Palatino」で使用されている[70]
  11. 最初のデジタル化においてかなり細身の仕上がりとなったが、Bemboとは異なり、その後本文向けのものが追加されることはなかった。これは、もとよりタイトル用として頻繁に用いられる書体であったためと考えられる。
  12. アリギの著書は、アリギと出版元との間の紛争が絡んでいるとみられる複雑な出版の経緯を持っており、その年代や印刷地の特定は容易ではない[105][106]
  13. 初期のデジタルフォントの多くは、オリジナルの金属活字の原画から忠実にデジタル化されたものであっても、今日では細すぎると見なされている。これは、紙にインクが染み込んで滲む現象をあらかじめ計算に入れ、原画の段階で紙面上での理想の太さよりも細く設計されていたためである。しかし現代の印刷手法では、金属活字時代ほどインクの滲みは生じない[135]

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