Atg8
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/08/30 00:56 UTC 版)
| autophagy related protein 8 | |||||||
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出芽酵母Atg8の哺乳類ホモログの1つである、ラットMap1lc3bの結晶構造[1]
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| 識別子 | |||||||
| 由来生物 | |||||||
| 3文字略号 | Atg8 | ||||||
| 代替略号 | Apg8, Aut7, Cvt5 | ||||||
| Entrez | 852200 | ||||||
| RefSeq (mRNA) | NM_001178318 | ||||||
| RefSeq (Prot) | NP_009475 | ||||||
| UniProt | P38182 | ||||||
| 他データ | |||||||
| 染色体 | VII: 0.16 - 0.16 Mb | ||||||
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Atg8(autophagy related 8)は、オートファゴソーム膜の形成に必要とされるユビキチン様タンパク質である。オートファゴソーム膜へのAtg8の一過的結合はユビキチン化と類似した系によって行われ、真核生物のオートファジーに必要不可欠な過程となっている。動物ではAtg8のホモログには多くの種類が存在するが(GABARAP、GABARAPL1、GABARAPL2、MAP1LC3A、MAP1LC3B、MAP1LC3B2、MAP1LC3C)、ここでは出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeなど下等真核生物における役割に主に焦点を当てて記載する。
構造
Atg8は117アミノ酸からなり、分子量は約13.6kである。保存されたGABARAPドメイン構造を有し、5本のストランドからなるβシートが片側は2本のαヘリックス、そして反対側は1本のαヘリックスによって挟まれた構造をしている[2]。Atg8とユビキチンとの間には明確な配列相同性はみられないものの、構造は保存されたユビキチン様フォールドをとる[3][4]。
機能
オートファジー
Atg8は、オートファジーに関与する重要な分子的構成要素である。オートファジーは、リソソームや液胞に依存した形で行われる、高分子や細胞小器官のターンオーバーを媒介する細胞過程である[5]。オートファジーは栄養素の枯渇やラパマイシン処理に伴って誘導され、オートファジー関連遺伝子(ATG遺伝子)の応答をもたらす。これまでに30種類以上のATG遺伝子が知られており、Atg8をコードする遺伝子もその中の1つである。ATG遺伝子にコードされるAtgタンパク質がどのように調節されているのか、その正確な機構に関しては現在も研究が行われているが、炭素源や窒素源の存在を報告する全てのシグナルはTORシグナル伝達経路に収束し、Atgタンパク質がこの経路の下流のエフェクターとなっていることは明確に示されている[6]。栄養素の供給が十分な場合、TORシグナル伝達経路は特定のAtgタンパク質の高リン酸化をもたらし、それによってオートファゴソームの形成は阻害されている。栄養素の枯渇後は、タンパク質修飾と転写の双方の機構を介してAtgタンパク質が活性化され、オートファジーが誘導される。
オートファゴソームの形成は二重膜で閉じた小胞による細胞質基質の一部を隔離をもたらすが、この現象によって特徴づけられるオートファジーには3つの種類が存在する。Atg8はその中でもマクロオートファジーと呼ばれる機構において特に重要である。こうしたオートファゴソームの二重膜の外膜は最終的にはリソソームや液胞と融合し、内側の一重膜構造(オートファジックボディ)がこれらの内部へ放出されて分解へ差し向けられる[5]。この過程において、Atg8はオートファゴソームの成熟(脂質化)に特に重要である[7]。
Atgタンパク質の大部分と同様に、富栄養条件下ではAtg8は細胞質基質、そしてPAS(phagophore-assembly site)と呼ばれるオートファゴソーム形成部位に位置しているが、オートファジーの誘導時には膜に結合し、その後PASに局在するようになる[2]。隔離膜(ファゴフォア)の形成には一群のAtgタンパク質とクラスIII PI3キナーゼ複合体のPAS上への蓄積が必要である。その後、Atg8やその他のAtgタンパク質がリクルートされ、膜の湾曲の駆動力となることで隔離膜の伸展が協働的に開始されると考えられている[8]。この隔離膜の伸展には、Atg8へ膜脂質ホスファチジルエタノールアミンが一過的に結合することが必要不可欠であり、結合部位の変異はオートファゴソーム形成の欠陥をもたらす[9]。Atg8はオートファゴソームの両面に対称的に分布しており、Atg8と小胞のサイズには量的な相関関係が存在すると考えられている[10][11][12][13]。
小胞の伸展が完了すると、オートファゴソームはリソソームへの融合の準備が整った状態となり、Atg8は膜から放出されてリサイクルされるか、もしくはオートリソソーム内で分解される。
Atgは、cytoplasm-to-vacuole targeting pathway(Cvt経路)と呼ばれる、異なるオートファジー関連経路にも必要とされる[14]。この経路は富栄養条件下で機能する酵母特異的経路であり、アミノペプチダーゼIなどの加水分解酵素を選択的に酵母の液胞へ輸送する。Cvt小胞の形成にはPASに局在したAtg8が必要であり、Cvt小胞は液胞へ融合することで分解に必要な加水分解酵素が液胞へ輸送されている。
翻訳後修飾と調節サイクル
Atg8は、細胞質型、そして膜結合型の形態で存在する[15]。膜への結合は、Atg8へ細胞膜の脂質構成要素であるホスファチジルエタノールアミン(PE)が結合することで行われている。この翻訳後修飾過程はAtg8結合系によって行われ、脂質化と呼ばれる。Atg8結合系はシステインプロテアーゼAtg4(カスパーゼファミリーに属する)のほか、Atg7、Atg3、Atg5-Atg12複合体といったタンパク質から構成されている[16]。Atg8結合系は、ユビキチン化システムと類似した形で機能する。Atg8自身がPEへ転移されるユビキチン様タンパク質(Ubl)として機能し、Atg7はE1酵素、Atg3はE2酵素、Atg5-Atg12複合体はE3リガーゼのようにはたらく。
脂質化過程は、Atg8のC末端のアミノ酸がAtg4依存的な形で翻訳後に切断されることで開始される。切断後のAtg8はC末端にグリシン残基(Gly116)が露出し、そこへPEが結合する。まず、Atg8のGly116はATP依存的な形でAtg7のシステイン残基とチオエステル結合を形成する。次の過程でAtg8はAtg3へ転移されるが、その際にも同種のチオエステル結合が形成されていると考えられている。最後にAtg8はAtg3から切り離され、PEの頭部のアミン基へアミド結合を介して結合する。この最終段階はAtg5-Atg12複合体によって刺激され促進されることが示されている[17]。
Atg5とAtg12はどちらも、Atg7やAtg10を介してAtg5へのAtg12の結合を促進する、他のUbl結合系の一部としてもともと同定された因子である。このことは、Atg12結合系とAtg8結合系が事実上相互依存的であることを暗に示している。
哺乳類のホモログ
高等真核生物では、Atg8は酵母のように単一の遺伝子にコードされているわけではなく、多重遺伝子族によって複数のアイソフォームがコードされている。
こうした遺伝子産物の1つがLC3(MAP1LC3A)である[18]。Atg8と同様、LC3が活性型となってオートファゴソーム膜へ局在するためには、タンパク質切断と脂質化が必要である。LC3の活性化過程は、酵母の場合と同じように栄養素の枯渇によって開始されるほか、ホルモンに対する応答としても開始される[11]。
哺乳類のLC3アイソフォームには保存されたSer/Thr12残基が存在する。この残基がプロテインキナーゼAによってリン酸化されると、オートファジー/マイトファジーへの関与が抑制される[19]。
他のホモログGATE-16(GABARAPL2)は、NSFのATPアーゼ活性を刺激し、ゴルジ体のv-SNAREであるGOS-28と相互作用することで、ゴルジ内小胞輸送に重要な役割を果たしている[20]。また、GABARAPは微小管とともにGABAA受容体のクラスタリングを促進している[21][22]。
これらのタンパク質は全て、タンパク質切断による活性化過程に伴って脂質化されて膜に局在化するという、共通した特徴を有する。しかしながら、GATE-16とGABATAPの膜結合は非脂質化状態でも可能なようである。LC3やGABARAP、GATE-16以外にも、ATG8L(GABARAPL1)というホモログも発見されている。このタンパク質の活性化過程についてはいまだ不明点が多いが、哺乳類のAtg4ホモログの1つであるATG4Aと相互作用することが明らかにされている[23]。
出典
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関連項目
外部リンク
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