東海エンジニアリングサービスとは? わかりやすく解説

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東海エンジニアリングサービス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/15 16:47 UTC 版)

株式会社東海エンジニアリングサービス(とうかいエンジニアリングサービス、英: Tokai Engineering Service Inc.)は、光学レンズの試作及び光学レンズ金型・金型材料の製造・販売を行う日本の企業である。本社を愛知県名古屋市北区に置き、京都市南区と岐阜県各務原市に工場を有する[1]。化学気相成長法(CVD)による炭化ケイ素(SiC)素材を用いた光学レンズ成形用金型材料の開発・製造を主要事業とする[2]

沿革

2001年(平成13年)1月1日に有限会社として設立され、2006年12月1日に株式会社へ組織変更された[3]。2015年4月には京都オフィスを独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する京大桂ベンチャープラザに開設し[4]、2021年4月に京都工場へ変更した[3]。2020年12月には本社を名古屋市北区へ移転している[3]

2018年度(平成30年度)には経済産業省・中小企業庁の戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)に「低温高密度プラズマ改質技術を用いた赤外用レンズ量産製造用金型の開発」が採択され[5]、芝浦工業大学デザイン工学部との共同研究を実施した。2020年度(令和2年度)には「車載用センサーの高性能化・信頼性向上に貢献するCVD-SiCの超微細・極厚高速成膜技術を用いた高精度光学ガラス素子成形金型並びに成形技術の開発」がサポイン事業に採択された[3]

2025年4月、同社は産業用高出力レーザー市場向けに次世代SiCミラー技術「MirrorBeta」を発表した[6]

事業内容

主要事業は以下の4つに分類される[1]

セラミック材料

CVD法による炭化ケイ素(SiC)素材の製造を行う。高純度・高密度の結晶構造を持つCVD-SiC材料は、光学用途に最適化された特性を有する[7]。同社はCVD-SiC製光学レンズ成形用金型材料を15年以上にわたり量産してきた実績を持つ[6]

光学レンズ成形用金型材料

CVD-SiC材料を用いた光学レンズ成形用金型材料の開発・製造を行う。高熱伝導率と低熱膨張係数を活かし、高精度な光学部品の成形を可能とする[6][8]

非球面レンズ用金型

非球面レンズの製造に用いられる金型の設計・製作を手掛ける。超精密加工技術を用いて、ナノメートル精度での形状加工を実現している。

非球面レンズ製造

光学レンズの試作及び量産製造を行う。直径0.2mmから100mmまで、多様なサイズに対応可能な成形技術を有する[3]

技術的特徴

加工技術

同社は4軸同期による高精度加工技術を導入し、自由曲面をナノメートル精度で加工・計測する能力を持つ。また、独自のC言語ベースの評価プログラムを開発し、ミラー全体の品質評価を高精度に行うシステムを構築している[8]

中部大学との共同研究では、サポイン事業を通じて微粒子化技術によるSiC表面の極鏡面化技術の開発が行われた[9]

成形技術

プレス成形技術においては、ガラス材料の熱膨張係数やクリアランスを精密に考慮した金型設計を採用し、シミュレーションに基づく最適な成形条件の確立により、従来の機械加工と同等以上の精度を維持しながら量産性の向上とコスト削減を実現している。

CVD-SiC材料特性

CVD法による製造過程では、微細で均一な粒子構造を実現し、光学用途に最適化された結晶構造を持つSiC素材を製造している[6]

応用分野

産業用レーザー

同社の技術は、自動車産業における溶接工程、半導体製造、精密機械加工など、高出力レーザーを活用する産業分野において期待されている[6]

高出力レーザー光学系

CVD-SiCは高出力レーザー用ミラー基板として研究開発が進められている。量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所では、レーザー核融合研究用のペタワット級レーザーシステムにCVD-SiC基板ミラーの適用研究が行われている[10]

2020年に発表された研究論文では、CVD-SiCが高出力レーザーミラー基板として従来の銅基板と比較して熱変形が少なく、光学性能の維持に優れることが報告されている[11]

脚注

出典

  1. ^ a b J-GoodTech 企業情報 独立行政法人中小企業基盤整備機構
  2. ^ 光製品ナビ 企業情報 オプトロニクス社
  3. ^ a b c d e 会社概要 株式会社東海エンジニアリングサービス公式サイト
  4. ^ 京大桂ベンチャープラザ 独立行政法人中小企業基盤整備機構
  5. ^ 平成30年度戦略的基盤技術高度化支援事業採択案件 経済産業省中小企業庁
  6. ^ a b c d e 東海エンジニアリングサービスが次世代SiCミラー技術MirrorBetaを発表 xexeq.jp 2025年4月9日
  7. ^ 光製品ナビ 企業情報 オプトロニクス社
  8. ^ a b 光学業界の革新へ、TESが自由曲面ガラスミラーの量産化を実現 Nagoya Startup News 2025年2月
  9. ^ 鈴木浩文ほか「超微粒子遊離砥粒加工による化学気相蒸着法炭化ケイ素(CVD-SiC)の極鏡面創成に関する研究」『精密工学会学術講演会講演論文集』2022年度精密工学会春季大会, 2022年, pp. 475
  10. ^ レーザー核融合研究用ペタワット級レーザーシステム 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所
  11. ^ "Development of Chemical Vapor Deposition Silicon Carbide as an Alternative Substrate Material for High-Power Laser Mirrors." Crystals 10.9 (2020): 831. https://www.mdpi.com/2073-4352/10/9/831



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