元気回復行動プラン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/11 00:47 UTC 版)
元気回復行動プラン(Wellness Recovery Action Plan, WRAP)は、リカバリーモデル。
概要
元気回復行動プラン(Wellness Recovery Action Plan, 略称: WRAP)は、精神的困難を抱える人々が自らの回復(リカバリー)を促進するために開発された自己管理プログラムである。WRAPは当事者自身が主体的に自分のリカバリー計画を作成し、より良い生活を築くことを目的とする。現在では精神疾患の有無を問わず、広くメンタルヘルス向上の手法として活用されている。
歴史
WRAPは、アメリカのメアリー・エレン・コープランド博士によって1997年に開発された。彼女自身が双極性障害と診断され、治療薬の副作用に悩まされたことが契機となった。1989年、彼女は双極性障害やうつ病を持つ120名へのインタビュー調査を実施し、回復に成功した人々に共通する要素を抽出した。その結果をもとにWRAPが体系化され、プログラムとして確立された。
その後、WRAPはアメリカ国内で広まり、2003年には「コープランドセンター」が設立された。さらに、ランダム化比較試験(RCT)による研究でWRAPの有効性が示され、アメリカ連邦保健省(SAMHSA)のエビデンスに基づく実践(EBP)リストに登録された。現在では、カナダ、イギリス、オーストラリア、日本など世界各国で導入が進んでいる。
WRAPの実施方法
WRAPは個人で実践することも可能だが、グループ形式での実施が推奨される。WRAPファシリテーター(研修を受けた指導者)が進行役となり、参加者同士が体験を共有しながら学び合う。通常、週1回のクラスを8〜12週間にわたって開催する形式が一般的である。
WRAPの基本構成は以下の3つの要素からなる:
- リカバリーに大切な5つのこと
- 希望
- 責任
- 学ぶこと
- 権利擁護
- サポート
- 元気に役立つ道具箱
- 日常生活を快適にするための習慣や対処法を集めたもの。
- 6つのプラン
- 日常生活管理プラン
- 引き金と対応プラン
- 注意サインと対応プラン
- 調子が悪くなってきたときの対応プラン
- クライシスプラン
- クライシス後プラン
WRAPの特徴
WRAPは単なる疾病管理プログラムではなく、以下の特徴を持つ:
- ピアサポート:専門家による治療ではなく、参加者同士の学び合いを重視。
- 自己決定:プログラムの参加や計画作成は完全に自主的。
- 個別化:一人ひとりに合った方法を見つける。
- エンパワメント:自己成長と自立を促進。
- リカバリー的アプローチ:生活全体の向上を目指す。
参考文献
- 元気回復行動プランのページへのリンク