白練緯地松皮菱竹模様小袖
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/12 03:09 UTC 版)
2009年からの修復
平成21年(2009年)10月から平成23年(2011年)9月までの2年間をかけて、白練緯地松皮菱竹模様小袖の修復作業が行われた[67]。
修理前、練緯地の経糸に使用されている生糸の劣化が進み、硬質化したことによって経糸の断裂が進んでいた[1]。その上、過去の粗い修復作業によって修復箇所に新たな断裂が発生していることも確認された[1]。そこで作業中にばらばらにならぬよう簡易な補強を行った後に、いったん全面的に解体した[1]。
そして補強用の練緯地を新たに制作した、全面に渡って補強用の練緯地を使用することになったため、もともとの生地よりも薄手なものとした[1]。補強布地は本体への色移りの可能性を考慮して染料を選択し、また本体の縫い絞り染めとは異なり、糊による防染を施した後に挿し染めで模様を描いた[1]。
修復作業の中で、これまでに複数回の仕立て替えと2回の修理が行われたことが確認された[68]。これまでの修復作業時に使用された糸や補修用の布地は全て除去され、しわ伸ばしの作業、そして修復時の針跡について整形が行われた[69]。その上で補強用の布地を極細の糸で縫い合わせ、可能な限り制作時に戻す形で仕立てた[68]。なお、表地と裏地の間の綿は修復前に比べて寸法が変わったため新調し、これまで使用していた綿は別途保存することになった[68]。
摺箔帯
付属の摺箔帯は、幅約5.8センチメートル、長さは約287.8センチメートルである[40]。茶色の練緯地に芯を入れており、模様は表裏同じものが帯の両端と中央部に金摺箔で段状に描かれている[40][66]。模様のモチーフは菊紋、桐紋、梅紋、木瓜紋、三つ葉葵紋である[40]。
家康所用の衣装に関する記録、「駿府御分物帳」の能衣装の部分には摺箔帯が記されていることから、家康が能を舞う際に摺箔帯を用いていたことがわかり、このことも白練緯地松皮菱竹模様小袖が能を舞うための小袖であることの裏付けのひとつとされている[40]。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m 東京国立博物館(2011)、p.87.
- ^ 国立文化財機構. “小袖 白練緯地松皮菱竹模様小袖”. 国立文化財機構. 2022年8月11日閲覧。
- ^ 福島(2018)、p.18.
- ^ a b c 重要文化財編纂委員会(1983)、p.287.
- ^ 福島(2018)、pp.105-106.
- ^ 福島(2018)、p.138.
- ^ a b 福島(2018)、p.106.
- ^ a b 福島(2018)、p.107.
- ^ 福島(2018)、pp.105-107.
- ^ 福島(2018)、p.113.
- ^ 福島(2018)、p.112.
- ^ 福島(2018)、pp.112-113.
- ^ 福島(2018)、pp.113-116.
- ^ a b 福島(2018)、p.116.
- ^ 福島(2018)、p.110.
- ^ 福島(2018)、pp.116-117.
- ^ 北村(1965)、pp.8-9.
- ^ 福島(2018)、pp.117-119.
- ^ 福島(2018)、p.126.
- ^ a b c d 福島(2018)、p.89.
- ^ 伊藤(1972a)、p.267.
- ^ 重要文化財編纂委員会(1983)、pp.287-288.
- ^ a b c 福島(2018)、p.105.
- ^ 福島(2018)、p.104.
- ^ 山邊(1954)、p.104.
- ^ 北村(1980)、p.57.
- ^ 徳川(1968)、p.12.
- ^ 伊藤(1972a)、p.268.
- ^ 伊藤(1972b)、pp.31-33.
- ^ 伊藤(1972b)、p.33.
- ^ 徳川(1994)、p.443.
- ^ a b 福島(2018)、p.123.
- ^ 長崎(2018)、p.32.
- ^ 福島(2018)、pp.132-134.
- ^ 福島(2018)、pp.230-233.
- ^ 福島(2018)、pp.233-235.
- ^ 福島(2018)、pp.123-124.
- ^ a b 福島(2018)、p.124.
- ^ 福島(2018)、pp.124-126.
- ^ a b c d e f g 徳川(1972)、p.30.
- ^ a b 福島(2018)、pp.134-136.
- ^ a b c 小林(1974)、p.1.
- ^ 小林(1974)、pp.28-31.
- ^ 小林(1974)、pp.43-45.
- ^ 小林(1974)、pp.45-46.
- ^ a b 福島(2018)、p.98.
- ^ 福島(2018)、pp.99-100.
- ^ 小林(1974)、pp.48-50.
- ^ a b 福島(2018)、pp.96-97.
- ^ 小林(1974)、pp.46-48.
- ^ a b 福島(2018)、pp.98-99.
- ^ 小林(1974)、pp.29-30.
- ^ 小林(1974)、p.51.
- ^ 小林(1974)、p.115.
- ^ 小林(1974)、pp.110-115.
- ^ 福島(2018)、p.94.
- ^ a b 福島(2018)、pp.91-92.
- ^ 伊藤(1972b)、p.31.
- ^ 福島(2018)、pp.97-98.
- ^ a b c d 福島(2018)、p.131.
- ^ 福島(2018)、p.132.
- ^ 小山(2005)、p.37.
- ^ 丸山(1986)、pp.205-206.
- ^ 丸山(1986)、pp.217-221.
- ^ a b 福島(2018)、p.92.
- ^ a b c d 重要文化財編纂委員会(1983)、p.288.
- ^ 東京国立博物館(2011)、p.89.
- ^ a b c 東京国立博物館(2011)、p.88.
- ^ 東京国立博物館(2011)、pp.88-89.
- 白練緯地松皮菱竹模様小袖のページへのリンク