婚外子国籍訴訟 控訴審の判断

婚外子国籍訴訟

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 07:26 UTC 版)

控訴審の判断

平成18年2月28日東京高裁判決

(A)事件の控訴審である東京高裁平成18年2月28日判決は、要旨次のように判示した[3]

国籍法3条1項違憲を理由に生後認知をうけた子の認知を請求することは、日本の国籍を取得する規定の効力が失われるだけであって父母が婚姻をしないために嫡出子たる身分を取得しない子が日本の国籍を取得する制度が創設されるわけではないから、そのような主張は法理論上失当である。 法3条1項を類推ないし拡張解釈もできないし、これを認めると、裁判所に類推解釈ないしは拡張解釈の名の下に国籍法に定めのない国籍取得の要件の創設を求めるものにほかならないというべきところ、裁判所がこのような国会の本来的な機能である立法作用を行うことは許されない。

平成19年2月27日東京高裁判決

(B)事件の控訴審である東京高裁平成19年2月27日判決は、要旨次のように判示した[4]

法3条1項は、日本人父の子の出生が父母の婚姻前であるか後であるかによることのみによって国籍取得の在り方に違いが生ずることの不均衡をできるだけ是正することを目的として定められたものであり、日本人父の準正子は、類型的にみて、父母の婚姻により日本人父の家族関係に包摂され、我が国との結び付きが密接になることから、法務大臣に対する届出による伝来的な国籍取得を認めたものと解することができる。また,同条項が法務大臣に対する届出により国籍を取得できる要件として、「父母の婚姻及び認知により嫡出子たる身分を取得した子」と明示し「婚姻」、「認知」、「嫡出子」という明確な概念によって立法者の意思も一義的に示されているといえ、類推や拡張解釈はできない(最判昭和41年11月16日)。

法3条1項のうちの上記要件のみが憲法14条1項に違反して無効であるとして、そのことから非嫡出子が認知と届出のみによって日本国籍を取得できるものと解することは、法解釈の名の下に、実質的に国籍法に定めのない国籍取得の要件を創設するものにほかならず、裁判所がこのような国会の本来的な機能である立法作用を行うことは憲法81条の違憲立法審査権の限界を逸脱するものであって許されない。

また、法3条1項の趣旨からすると、被控訴人(原告)ら主張の上記要件が憲法14条1項に違反して無効であるとすれば、法3条1項全体が憲法14条1項に違反して無効となると解するのが相当であるが、仮に法3条1項が無効とされるとすれば、父母の婚姻及び日本人父による認知の要件を具備した子が日本国籍を取得できる根拠規定の効力が失われるだけであり、そのことから,出生した後に日本人父から認知を受けたものの、父母が婚姻しないために嫡出子たる身分を取得しない子が日本国籍を取得する制度が創設されるわけではないことも明らかであるといわざるを得ない。そして、当該法条が違憲無効である場合に、いかなる内容の立法をするかは国会の権能に属するのであり、裁判所が、立法政策として日本人父の認知と届出のみによる日本国籍取得を認める方法しかあり得ないと判断し、そのような解釈をして日本国籍の取得を認めることは許されない。







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