タイダルウェーブ作戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/11 03:17 UTC 版)
爆撃とその結果
1943年8月1日早朝04時00分、ベンガジ付近の飛行場群から作戦機が発進し、ワラキア平原までは順調に飛行した[11]。ところが先頭の第376爆撃航空群の先頭機がトゥルゴヴィシュテの変針点で東南に旋回しすぎ、ブカレスト方向へ向かってしまった[11]。第376爆撃航空群はブカレストを視認する位置まで来てようやく誤りに気付き、北へ変針しプロイェシュティへ向かった[12]。このため、プロイェシュティの南にあったドイツ軍の防空陣地上空をまともに通過する経路となって激しい対空砲火により多くの損害を出すこととなり、さらには編隊を解いたため、効果的な爆撃とならなかった[9]。
第93爆撃航空群も先行した第376爆撃航空群と同様にいったんは進路を誤ったが、それより前に修正し、プロイェシュティへは南西から侵入する経路となった。それでも同じようにドイツ軍の対空砲火を受け多くの損害を出した[12]。
プロイェシュティへ向かった残りの第98及び第44爆撃航空群は計画どおりの経路をとったが、手前のフロレシュティ (Florești) からプロイェシュティとの間でドイツ軍のQ列車(無蓋貨車に対空機関砲などの対空兵装を施した車両)と並走する形となり、これとB-24に搭載している機銃で交戦した[9]。この2個爆撃航空群はQ列車を破壊し、計画どおりプロイェシュティへ北西方向から侵入し爆撃を行った[9]。
プロイェシュティへの爆撃を行った4個爆撃航空群は、異なる方向からほぼ同時に侵入することとなって錯綜する状況となったが、衝突は起きなかった[9]。
カンピーナへ向かった第389爆撃航空群は計画どおりの爆撃を行った[13]。
各爆撃航空群はその後南西方向へ計画どおり離脱したが、その途上ドイツ第4戦闘航空団所属の戦闘機メッサーシュミット Bf109、メッサーシュミット Bf110及びルーマニア軍のIAR-80 (航空機)の攻撃を受け、損害を出した[14][* 4]。
損害は、5個爆撃航空群179機が出撃し、任務途中で帰還したもの14機、墜落43機、トルコ領へ不時着8機、補助飛行場等へ不時着15機、出撃時の飛行場へ帰還できたものは99機だった[14][* 5]。人員については、全乗員約1,780名のうち戦死310名、捕虜となった者130名の損害だった[14]。
この作戦で投下された爆弾の量は約310トンで、プロイェシュティの石油生産能力が45%低下した[14]。
この作戦については犠牲も多かったが、戦果もあったとする見解[14]と、犠牲に見合う戦果ではなかったとする見解[15]がある。
この作戦に参加した者のうち5名が合衆国議会名誉勲章を受章した[14]。
注釈
- ^ ミッチャム (2008)、p.478 では、参加機数を177機としている。ベッカー (1974)、p.426 では、178機としている。
- ^ ドイツの 1/3 とイタリアの全需要をまかなった[1]。
- ^ 連合爆撃攻勢作戦計画中の優先目標リストで、主目標の一つとして石油生産・燃料精製工業が挙げられ、プロイェシュティについては地中海方面からの攻撃とされた[4]。
- ^ ミッチャム (2008)、p.478 では、枢軸国空軍による迎撃について往路、目標地域上空及び復路でギリシャに配備された第27戦闘航空団第4飛行隊(IV/JG27)、ルーマニアの第4戦闘航空団第1飛行隊(I/JG4)及びブルガリア戦闘機連隊の攻撃を受けたとしている。ベッカー (1974)、p.426 では、復路で第4戦闘航空団第1連隊(第1飛行隊と同義)、第27戦闘航空団第4連隊(第4飛行隊)の一部及びルーマニア戦闘機に加え、第6夜戦航空団(夜戦戦闘航空団)第4連隊(第4飛行隊)のBf110数機が追撃し、一部を海上で捕捉したとしている。
- ^ ミッチャム (2008)、p.478 では、43機が撃墜され、13機が不時着等で喪失、50機以上が損傷を受けたとしている。ベッカー (1974)、p.426 では撃墜機数を48機としている。
出典
- ^ a b c 白石 (2009)、p.86
- ^ 白石 (2009)、pp.86-87.
- ^ a b c d e f 白石 (2009)、p.87
- ^ マーレイ (2008)、p.293
- ^ 白石 (2009)、pp.87-88.
- ^ a b 白石 (2009)、p.88
- ^ 白石 (2009)、pp.88-89.
- ^ a b c d 白石 (2009)、p.89
- ^ a b c d e 白石 (2009)、p.92
- ^ 白石 (2009)、p.90
- ^ a b 白石 (2009)、p.91
- ^ a b 白石 (2009)、pp.91-92.
- ^ 白石 (2009)、pp.92-93.
- ^ a b c d e f 白石 (2009)、p.93
- ^ ミッチャム (2008)、p.478
固有名詞の分類
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