三大奇書とは? わかりやすく解説

三大奇書

(黒い水脈 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 03:26 UTC 版)

三大奇書(さんだいきしょ)は、日本推理小説・異端文学史上における『黒死館殺人事件』・『ドグラ・マグラ』・『虚無への供物』の3作品を指す。竹本健治の『匣の中の失楽』を加えて「四大奇書」と呼ぶ場合もあるが、それに異論を唱える人もいる。中国における奇書という言葉は本来「面白い、優れた書物」という以上の意味はないが、日本では奇抜な、幻惑的なというニュアンスが加わることが多く、本項での用法では特にその傾向が強い。


  1. ^ a b 日本の推理小説界で「三大奇書」および「四大奇書」という言葉が使われた古い例としては、二上洋一「日本探偵小説界の三大奇書と言えば、小栗虫太郎創る所の「黒死館殺人事件」、更には、夢野久作これを描く「ドグラ・マグラ」、次いで、塔晶夫こと中井英夫が生み出した「虚無への供物」を指し、更に又、「幻影城」主、島崎博編集長の言葉によれば、若きノヴェリスト竹本健治の「匣の中の失楽」を入れて、日本探偵小説四大奇書と呼ぶのだそうな。」(竹本健治『匣の中の失楽』(双葉文庫、2002年10月)p.663より引用、初出:『幻影城』1978年10月号、初出時は金田一郎名義)
  2. ^ 松山俊太郎による講談社文庫版『匣の中の失楽』(1983年)の解説では、『黒死館殺人事件』、『ドグラ・マグラ』、『虚無への供物』が「日本異端文学史上の三大偉業」とされており、「三大偉業の精華を綜合することが、『匣の中の失楽』を執筆する、公的な目的」だったとされている。
  3. ^ 笠井潔「竹本健治の『匣の中の失楽』を読むと、ごく自然に、日本探偵小説の三大巨峰をなす『黒死館殺人事件』、『ドグラ・マグラ』、『虚無への供物』といった作品のことを連想してしまう。」(『週刊読書人』1984年2月6日号より)
  4. ^ 笠井潔「完全犯罪としての作品」(初出:『幻想文学』9号(1984年12月))より(『物語のウロボロス』(筑摩書房、1988年)に所収)
  5. ^ a b 『ミステリ・ベスト201 日本篇』(新書館、1997年)収録の、村上貴史による「匣の中の失楽」紹介文では「日本アンチミステリの三大巨篇」とされている。また、同じ紹介文で『匣の中の失楽』について「第四の奇書と呼ばれることもある本書だが、(後略)」と書いている。
  6. ^ 「夢野久作の『ドグラ・マグラ』、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』に比肩する巨大な癲狂院を、あえて戦後の現実のなかに構築したこの長編は、ポーに始まる推理小説の最後の墓碑銘とまで賞讃・畏怖されてきました。」(『中井英夫作品集』(三一書房、1969年10月刊)の内容案内に掲載された「刊行のことば」より(創元推理文庫『中井英夫全集 1 虚無への供物』p.744に掲載のものより引用))
  7. ^ 間接的な証言としては、以下のものがある。寺田裕「今、手元に文献がないので正確な引用はできないが、たしか埴谷雄高は、わが国探偵小説のベスト3として、『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』『黒死館殺人事件』を挙げていたと記憶する。これらの作品が、長い空白の後、一九七〇年代初期に異端の文学として再評価されたことはご存知の方も多いだろう。」(『幻影城』1979年1月号、「五色殺戮「匣の中の失楽」論」より)
  8. ^ 双葉文庫版『匣の中の失楽』裏表紙には、「『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』『虚無への供物』に続く「第4の奇書」と呼ばれる本作品。」と書かれている。
  9. ^ 千街晶之『読み出したら止まらない! 国内ミステリー マストリード100』日本経済新聞出版社、2014年、258頁。ISBN 9784532280314
  10. ^ 講談社ノベルス版帯に「《黒い水脈》=四大奇書に連なる第五の奇書!」、講談社文庫版に「日本推理小説界の四大奇書に連なる第五の奇書!」とある。
  11. ^ 同作が舞台化された際に公演HPに「「本格ミステリ」であり「五番目の奇書」でもある、この小説が舞台化されるなど、誰が想像しただろう。」というコメントを寄せている。
  12. ^ 単行本帯に「『黒死舘殺人事件』『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』に続く 世紀の〈奇書〉、ついに降臨。」とある。
  13. ^ 台湾版『匣の中の失楽』帯参照[1]
  14. ^ 台湾版『匣の中の失楽』に付された島崎博による解説は「四大推理奇書之四・《匣中的失樂》」と題されている。
  15. ^ a b 外部リンク「四大奇書完結--匣中的失樂」参照
  16. ^ 中国版『ドグラ・マグラ』および『黒死館殺人事件』の表紙・帯参照 ASIN B001NXYGW6
  17. ^ 韓国版『虚無への供物』によせた出版社の紹介文参照[2]
  18. ^ 韓国版『ドグラ・マグラ』によせた出版社の紹介文参照[3]
  19. ^ 常数晃大「P. B. シェリーによる科学的想像力―世界の再発見」『英米文化』第47巻、2017年、 47-62頁、 doi:10.20802/eibeibunka.47.0_47


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