姉の身に地割れ及びて水仙花
作 者 | |
季 語 | |
季 節 | 冬 |
出 典 | |
前 書 | |
評 言 | 危うさを水仙の花に託しているこの一句は、おそらくギリシャ神話を下敷きにしたものだろう。冥界の神ハデスは、豊穣の神デメテルの娘、ペルセポネーに恋したが母のデメテルが承知しなかった。そこで大神ゼウスに頼みこんで一計を策する。野原で遊ぶペルセポネーが花を摘んでいるところへ、美しい水仙の花を咲かせて彼女を誘ったのだ。ペルセポネーが水仙に手を伸ばすと、突然大地に裂け目ができて大きな口が開いた。見る間にハデスがそこから神馬を御して現れ、水仙に気を取られていたペルセポネーは悲鳴を上げたが、ハデスに素早く抱えられてそのまま地底の国にさらわれてしまう。それ以来、ペルセポネーは地底(冥界)の王妃になったという。水仙の花は別名「死の花」と呼ばれていることを認知せずにこの句と向かうと、上五中七の意味合いがうまく受け取れないだろう。すっと清楚に開く水仙。しかし、「姉の身に地割れ」が「及」んでいる。精神的な危うさを含み、現存するかしないのか、「姉」の置かれたシチュエーションには悲劇が待ち受けている予感のする一句。 |
評 者 | |
備 考 |
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