四方万里子

現代俳句データベース(人名)

四方万里子

四方万里子の俳句

あやめ草空のくぼみにみんなゐて

かさりこそり半裸のねむり紅葉山

にんげんをうき草に大型書店

まつさらなノート白鳥湖に二泊

まどろみの影を小出しに霙れをり

もう秋を咥へてみづいろのインコ

アフリカへぞろぞろてんとむしだまし

クリムトの抱擁秋へ傾いて

三月がはじまるぱりぱりのサラダ

初雪の灯が点くロングコート黒

十字架の空がぶかぶか石叩

坐禅草そろそろ平家物語

夏終る海の一面なぐり書き

天の川カレーを一夜寝かせおく

宇宙船艦ヤマトが浮上無月なり

山折りの谷折りの風つばくらめ

帚木のそよぎなんなく忘れをり

感触は鰐の背十二月八日

憂国の夏よコントラバスを抱き

揺れながらコスモスになる舟になる

文旦やからだのくもり溶けてゐる

枯れすこし修道院のビスケット

牛刀のしづかな重さ夜の雪

玉葱に芽が出る暗さ本願寺

絨毯にあふるる夜のありしかな

茄子の花日暮ゆつくり使ふ箸

蓑虫の揺れかすかなりマリアの木

野は二月乳房もつとも晴れわたり

鈴ひとつ水に棲みつく春の昏れ

銃眼も恋も霞の木をめぐり

雪降りの底なり眠りまた眠り

音楽の氷柱の家にとどまりぬ

風睡る秋あかつきの子に深し

馬の背に河の全長澄みゐたり

鷹鳩と化すや銀色無地の帯