Amazon Kindle Kindle ダイレクト・パブリッシング

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Amazon Kindle

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/27 05:33 UTC 版)

Kindle ダイレクト・パブリッシング

Amazon Kindleストアで本を出版するためのサービス[33]。出版コストなしに世界中で販売することができる。

評価

音楽や映像がデジタル化されたのと同様、本のデジタル化もソニー・リーダーをはじめとして過去にさまざまな試みが行われているが、商業的に成功しているとは言いがたかった[34][35]。アマゾンは「本のためのiPod」をコンセプトに開発に3年を費やし、2007年11月にKindleが発売となった。過去の失敗を克服するために、次のような点が特徴になっている[36][37]

  • デジタル版の本はベストセラーの本で約10ドルと、通常の本より安い。2011年6月現在、95万冊中55万冊が$9.99以下。
  • PCを使ってダウンロードする必要がなく、どこにいても1分以内に1冊の本がEV-DOを介して送られてくる。また携帯電話会社との契約が不要である。
  • 端末が省電力で電池寿命がきわめて長い。

端末に関する評価では、第1世代に対する批判として、端末の値段が非常に高価である、端末のデザインが悪い(両側面がすべてボタンになっており、どこを持っても間違ってボタンを押してしまう)、PDFファイルが読めない、ディスプレイがカラーではない、電子ペーパーの特性としてディスプレイの応答速度が遅いなどがあったが、第2世代やDXではデザインが改良されたりPDFビューワーが搭載(第2世代、DX)されることで改善が図られている[38][39][40]

端末の販売は、当初順調とは言いがたく、アマゾンは発売から2011年6月現在に至るまで販売台数を発表していないが、発売開始からおよそ1年後の2008年11月での推定では約24万台のみ売れたとされ[41]、ヤフーテクノロジーサイトなどでも、2008年のワースト製品に選ばれていた[42]。しかしその後、2009年の第四四半期には、全世界でおよそ150万台が売れたとされている[43]。2010年8月発売のKindle 3から急速に売上を伸ばし、2010年に800万台販売し、累計1,000万台以上販売したと推計されている[44]。専用端末の価格が1万円程度まで下がったことが売上の増加の要因のひとつになっている。2011年に入ると紙の書籍よりもKindle書籍の方が売上が多くなり、2011年4月1日現在、紙の書籍の1.05倍の冊数を売上げていて、2010年の同時期の3倍のKindle書籍を売り上げている[27]

アマゾンは2010年1月21日に、作家または出版社が設定した価格が2.99~9.99ドル、電子書籍の価格が紙媒体の書籍の最低価格より20%以上安いなどの条件を満たした場合に、作家や出版社に支払う印税を、電子書籍の表示価格の35%から70%に引き上げた[45]。さらに、JavaによるKindle向けアプリケーション開発キットの提供を発表した。

トラブルと批判

オーウェル事件(電子書籍販売停止と無断削除)

  • 2009年7月17日、アマゾンは、再版権を持たない出版社が販売していた電子書籍2点の販売を停止し、ユーザがすでに買った本についてもKindleから無断で削除したのち料金を払い戻した。削除されたのはジョージ・オーウェルの『1984年』と『動物農場』で[46]、ユーザからは作中の「ビッグ・ブラザー」を体現するような行為だと批判が起こった[47][48][49]。同月23日以降、アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは、Amazon.comのフォーラム[50]やKindle購入者宛メールを通じてこの件について謝罪し、削除を受けたユーザに対して「該当作品の別のコピー、あるいは30ドル分のギフト券または小切手[51]」の提供を申し出た。

ニガード事件(アカウント閉鎖と購入済電子書籍全削除)

  • 2012年9月、ノルウェー在住の女性のKindleに不具合が発生し、Amazonと連絡していたところアカウントが閉鎖された。そして、Kindleから購入済みの電子書籍が、Amazonによりすべて削除された。ところが、新聞などで報じられたあと、閉鎖されたアカウントが理由の説明なく復活した。
  • この事件から、Kindleコンテンツ(電子書籍等)の料金など支払い後もライセンスが提供されるのみで、コンテンツがAmazon管理下にあることが抱える問題点、DRM(デジタル著作権管理)に関する課題に注目が集まった[52]
  • 電子書籍には所有権はなく、利用者は「利用権を購入」しているのみである。そのため、なんらかの理由でアカウントが停止されれば、すべての蔵書を失うことには注意が必要である[53]

中国でのKindleストア閉鎖

  • 2022年、アマゾンは中国市場向けのKindleストアを2023年6月末に閉鎖すると発表した。購入済みの書籍の閲覧もできなくなる。
  • アマゾンは中国当局による圧力や検閲が原因ではないと説明した。

  1. ^ Source Code Notice Amazon.com, Retrieved June 1, 2017.
  2. ^ Amazon.com Help Kindle E-Reader Software Updates”. 2020年2月20日閲覧。
  3. ^ Amazon Kindle 1st-gen specs”. gdgt. 2009年7月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年10月17日閲覧。
  4. ^ “キンドル発売、8000円台から 米アマゾン予約開始”. 日本経済新聞. (2012年10月24日). http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD2401Q_U2A021C1MM0000/ 2014年7月23日閲覧。 
  5. ^ Amazon: Reinventing the Book”. Newsweek (2007年11月17日). 2018年3月7日閲覧。
  6. ^ Kindle電子書籍リーダー 通販”. 2020年9月6日閲覧。
  7. ^ “米Amazon.com、携帯電話内蔵の電子ブックリーダー「Kindle」を発売”. INTERNET Watch (Impress Watch). (2007年11月20日). https://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2007/11/20/17577.html 2013年7月20日閲覧。 
  8. ^ “Amazonの「Kindle Touch 3G」ではWikipedia以外のサイトにアクセスできない?”. マイナビニュース (マイナビ). (2011年10月6日). https://news.mynavi.jp/article/20111006-a090/ 2013年7月20日閲覧。 
  9. ^ 当然プラインドタッチは不可能であり、電卓入力のように一つの指でキーを選んで入力する形式である。
  10. ^ “Amazonの第4世代「Kindle」試用レポート ~日本からも1万円以下で買える電子ペーパー端末”. PC Watch (Impress Watch). (2011年10月6日). https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/481798.html 2013年7月20日閲覧。 
  11. ^ “米Amazonが大画面の「Kindle DX」発表、9.7型ディスプレイ搭載”. INTERNET Watch (Impress Watch). (2009年5月7日). https://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2009/05/07/23337.html 2013年7月21日閲覧。 
  12. ^ “Amazon、Kindleのバッテリー時間向上とPDFリーダー対応を発表”. INTERNET Watch (Impress Watch). (2009年11月25日). https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/331160.html 2013年7月28日閲覧。 
  13. ^ “Amazon「Kindle 3G + Wi-Fi」試用レポート”. PC Watch (Impress Watch). (2010年9月7日). https://pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/392075.html 2013年7月20日閲覧。 
  14. ^ Amazon.com: Kindle Wireless Reading Device, Free 3G, 6" Display, White - 2nd Generation: Kindle Store
  15. ^ ワイヤレス接続オフ、ライトの明るさ設定10で1日30分読書に使用した場合。
  16. ^ ワイヤレス接続オフ、ライトの明るさ設定10で使用した場合。
  17. ^ “日本は10月22日出荷:日本向けには内蔵メモリ4Gバイト――Amazon、Kindle Paperwhiteの最新モデルを発表”. ITmedia eBook USER (アイティメディア). (2013年9月4日). https://www.itmedia.co.jp/ebook/articles/1309/04/news038.html 2013年10月19日閲覧。 
  18. ^ KindleがなくてもKindleは読める。iOS版とAndroid版の違いを超ていねいに解説”. 2014年7月8日閲覧。
  19. ^ Amazon kindle(キンドル)アプリの使い方
  20. ^ iPhone/iPad版Kindle:辞書機能を内蔵し、WikipediaおよびGoogle検索にも対応
  21. ^ Amazon、「Kindle for PC」公開 Windows向け閲覧アプリ 和書も対応 - ITmedia ニュース
  22. ^ Amazon.co.jpが「Kindle for Mac」アプリを提供開始、電子書籍をあなたのMacで - PR TIMES
  23. ^ ブラウザで本が読める「Kindle Cloud Reader」が利用可能に - ITmedia eBook USER
  24. ^ New York Times, Page C3, November 20, 2007
  25. ^
  26. ^ [1] Silicon Alley Insider, May 6, 2009
  27. ^ a b Amazon.com Now Selling More Kindle Books Than Print Books
  28. ^ アマゾン読み放題、講談社などの全タイトル消える」朝日新聞DIGITAL 2019年4月22日閲覧
  29. ^ Kindleパーソナル・ドキュメントサービスとは” (2012年11月24日). 2019年4月23日閲覧。
  30. ^ Kindle Publishing Programs
  31. ^ Amazon Kindle Publishing Guidelines
  32. ^ Amazon、新たな電子書籍ファイルフォーマット「Kindle Format 8」を発表”. 2013年5月26日閲覧。
  33. ^ [2]
  34. ^ [3]"Amazon's Breakthrough E-book"ビジネスウイーク 2007年11月19日
  35. ^ [4]"Why e-books are bound to fail" April 27, 2007, ComputerWorld
  36. ^ [5] "Can Amazon Kindle Digital Book Fever?" ビジネスウィーク 2007年11月19日
  37. ^ [6] "Opinion: Why Amazon's Kindle is revolutionary" ComputerWorld, November 21, 2007
  38. ^ [7] "Amazon's Kindle vs. Sony's Reader" 11/19/2007 CNET記事
  39. ^ [8] "In Defense of the Kindle" New York Times, Nov 20, 2007
  40. ^ http://blogs.cnet.com/8301-13506_1-9822044-17.html "Amazon Kindle: Flop" 11/21/2007 CNET Blog
  41. ^ [9]
  42. ^ http://blog.wired.com/business/2008/11/oprah-wont-boos.html
  43. ^ Updating Kindles sold estimate: 1.49 million”. 2009年12月28日閲覧。
  44. ^ Amazon、Kindleシリーズの累計販売台数ついに1000万台突破か - 電子書籍情報が満載! eBook USER
  45. ^ https://japan.cnet.com/article/20407080/
  46. ^ 削除されたのは該当出版社が発行していた版のみで、再版権を持つ他社が発行するものには影響していない。
  47. ^ アマゾンは「ビッグブラザー」? 電子書籍を無断で遠隔削除”. AFPBB News (2009年7月19日). 2010年2月1日閲覧。
  48. ^ Fried, Ina (2009年7月17日). “Amazon recalls (and embodies) Orwell's '1984'” (英語). CNET News. 2010年2月1日閲覧。
  49. ^ Frucci, Adam (2009年7月17日). “Big Brother Amazon Remotely Deletes Purchased Copies of 1984 and Animal Farm From Thousands of Kindles” (英語). Gizmodo. 2010年2月1日閲覧。
  50. ^ Bezos, Jeffrey P. (2009年7月23日). “An Apology from Amazon” (英語). 2010年2月1日閲覧。
  51. ^ Krazit, Tom (2009年9月7日). “アマゾンのベソスCEO、Kindleからのコンテンツ無断削除を謝罪”. CNET Japan. 2010年2月1日閲覧。
  52. ^ あなたが買った“本”は、勝手に消されてしまうかもしれない 英国の騒動から浮かび上がる電子書籍の課題日経ビジネスオンライン 2012年11月14日
  53. ^ 三上 洋 (2021年9月9日). “「4000冊の蔵書が一瞬で吹っ飛ぶ」アマゾンの電子書籍が抱える根本的な落とし穴”. プレジデント社. 2022年5月26日閲覧。


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