戦略情報システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/30 01:54 UTC 版)
具体例
SISの事例は沢山あり、大手企業による限られたものでは決してない。ベンチャー企業といった企業にも多々認められる。その先駆例として、近畿日本ツーリストの旅館予約オンライン・システム(CRS)の事例がある。1964年の東京五輪に合わせて営業開始した新幹線に代表される大量高速輸送時代の始まりとともに、国内旅行は団体手旅行から個人旅行へとシフトしはじめていた。同社の当時の副社長馬場勇はリアルタイム・システムの導入を決断し、1967年に実施に漕ぎつけた。当時、資本金2億円の企業(従業員3000人)が、社運を賭けた3億円もの初期投資を行い、世界的みても画期的な予約システムを完成させた。このシステムは1970年の大阪万博(日本人の3人に2人が訪問、約6400万人)で多大な威力を発揮した。この経緯については、城山三郎の『臨3311に乗れ』に詳しい。馬場勇個人については、ウィキペディアを参照。
1970年代の事例としては、日本経済新聞社の電算写植システム(CTS、1967年開始、1978年完成)があげられる。日経の社長に園城寺次郎は、総合情報産業への進出という長期構想を掲げ、新聞紙面の電算化により新聞データの多重活用を試みた。日本語特有のコンピュータ化の技術的困難さに阻まれ、多大なの情報化投資による多額の借入金残高にもかかわらず、10年にも及ぶ開発の末にCTSを完成した。その結果、本誌のほかに産業紙、流通紙などを発行させ、当時業界5位の新聞社を現在の姿に発展させる基礎を築いた。この顛末は、杉山隆男の『メディアの興亡』(昭和61年)に詳しい。
21世紀のSIS事例としては、セブンイレブンのコンビニATMの導入である。セブンイレブンは、1999年に自社グループ内の店舗にATMを設置しコンビニ店での利便性を高めたあと、セブン&アイの元会長である鈴木敏文の決断と指導のもとで「アイワイバンク」(2001年、現セブン銀行)を設立し、コンビニATMからの手数料収入(当初は銀行からの)で成立するビジネスを創造した。その後、コンビニ店内だけでなく証券会社、空港、地下鉄など多方面に拡大し、2021 年末に設置台数は26,000 台に達し郵貯銀行のATMネットワークに並ぶ、日本最大のATMネットワークに発展している。詳しくは、セブン銀行のホームページ(「これまでの取り組みと社会的課題の変化」)を参照。
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