チームオーダー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/31 07:08 UTC 版)
禁止ルールの廃止 (2011 - )
上記のドイツGPの問題から波紋を受け、チームオーダーに対する賛否両論を再び問う必要性が生まれた。又、各チームやF1関係者に対しドイツGPを例に「チームオーダーをどう考えているか?」という質問が相次いだ。
- (※:下記の#チームオーダーへの評価も参照)
2010年12月10日にモナコで開かれたWMSCの最終的な会議によってFIAスポーティングレギュレーション第39条の1項、つまりはチームオーダー禁止ルールを削除する事で合意した。これにより2011年度よりチームオーダーは合法となる[22][23][24]。但し、国際競技規約の第151条・規則違反のc項にある「競技の公正または自動車スポーツの利益を阻害する性質を有する詐欺行為または不正行為。」を犯したドライバー、チームに関しては罰則を与えられる。
禁止ルール廃止後の事例
- 2011年イギリスGP
- レース終盤、レッドブルの2台が2・3位を走行し、マーク・ウェバーが後方からセバスチャン・ベッテルを追い上げていた。チーム代表のクリスチャン・ホーナーからウェバーに対して「Maintain the Gap(差を保て)」という指示が出されたが、ウェバーは尚もベッテルを攻め立てた。レース後のインタビューでは、ウェバーが無線の指示を無視したことを認めたため話題となった[25]。
- ホーナーは指示の理由を共倒れのリスクを避けるためと説明し、「最終的には一番重要なのはチームだ。チームより重要な個人など存在しない[26]」と述べた。しかし、前年のドイツGPの騒動ではフェラーリを公然と批判しており(後述)、解禁後とはいえチームオーダーを発動したことに批判を受けた[27]。
- 2013年マレーシアGP
- 2011年イギリスGPの逆ケース。マレーシアGPはタイヤの消耗が激しいため、レッドブルは最後のタイヤ交換を終えた時点の順位のままフィニッシュするという取り決めを交わしていた。レースはウェバーとベッテルのワンツー体制となり、ウェバーは取り決めを信じてペースダウンした。しかし、ベッテルは無線指示を無視してオーバーテイクを仕掛け、ウェバーから優勝を奪った。レース後、ウェバーは「マルチ21」という暗号のような単語を出してベッテルのチームオーダー破りを非難[28]。ベッテルは故意ではなかったと謝罪したが、ホーナー代表もベッテルが個人の利益を優先したと認めた[29]。
- また、3・4位のメルセデスもチームオーダーを発動。ガス欠を恐れてペースを落としたルイス・ハミルトンを抜きたいとニコ・ロズベルグが訴えたが、チームから順位を守るよう説得された。レース後、ハミルトンは「彼は僕のポジション(3位)を得るのにふさわしかった」と認めた[30]。
- 2015年モナコGP
- レッドブルチームはリカルドがライコネンを押し出してポジションをあげたのち、クビアトの後ろにつけた。そのあと「ハミルトンを抜けるのか試すぞ」という無線指示に従い、クビアトはリカルドに順位を譲る。レース最終盤に入って、「ハミルトンかベッテルを攻略できない場合は、クビアトに順位を譲り返す[31]」指令が出されたレッドブルらしい戦略を見せたレース。結局クビアト4位、リカルド5位であった。
- 2018年ロシアGP
- ルイス・ハミルトンのピットインタイミングを1周間違えてしまったメルセデスのトト・ヴォルフ代表[32]は、緊急策としてハミルトンを前に出すようにバルテリ・ボッタスに指示。そのまま1-2フィニッシュでレースは終了となり、チームストラテジーミスとはいえ2013年のマレーシアGPと似た状況を生んだ。ただ、この件はボッタスのモチベーションを下げる結果となり、ボッタスのドライバーズランキングが下げる一因となった。また、2021年4月の記事によれば、当時はシーズン終了と同時にチームを去ることを真剣に考えたことを明かしている[4]。
- ^ 用語辞典「チームオーダー」 FUJI-TV オフィシャルF1ハンドブック コンストラクターズ 146頁 フジテレビ出版/扶桑社 1993年7月30日発行
- ^ “FORMULA ONE SPORTING REGULATIONS”. Federation Internationale de l'Automobile (FIA 国際自動車連盟 公式ホームページ 一般公開用F1レギュレーション.pdf拡張子ファイル). (2010年6月23日) 2010年7月28日閲覧。
- ^ なお、チームオーダーによって、グレッグ・レモンは1985年のツール・ド・フランスで優勝することを禁じられた。詳細はグレッグ・レモンの項を参照のこと。
- ^ a b “ボッタス、2018年ロシアGPの屈辱的なチームオーダーで「F1引退も考えた」と明かす”. jp.motorsport.com. (2021年4月15日)
- ^ 「一触即発! コンビ崩壊の危機」『F1 RACING 2010年9月情報号』、三栄書房、2009年、85頁。
- ^ R.シューマッハのF1初優勝は2001年に達成。
- ^ “F1コラムNo.21 2001年オーストリアGPレビュー M.シューマッハVSクルサードのチャンピオン争いへ”. Evaryday F1. (2001年5月) 2011年4月30日閲覧。
- ^ “チームオーダーの余波、FIAがフェラーリを事情聴取へ---F1オーストリアGP”. Responce.jp. (2002年5月14日) 2010年7月28日閲覧。
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- ^ “Full copy of Nelson Piquet Jr. statement to the FIA on 30 July 2009 (ピケJr.による供述書のコピー全容)”. F1SA. (2009年9月10日) 2009年9月10日閲覧。
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- ^ "ハミルトン「ニコの方が表彰台にふさわしかった」:メルセデス日曜コメント". オートスポーツweb.(2013年3月25日)2013年3月26日閲覧。
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- ^ “メルセデスのウルフ代表「ハミルトンのピットが遅れたのは自分の責任」”. jp.motorsport.com (2018年10月1日). 2018年10月2日閲覧。
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- ^ “クリスチャン・ホーナー 「ウェバーはチームの役割を演じる」”. F1 Gate.com. (2010年10月18日) 2010年10月26日閲覧。
- ^ “レッドブル、チームオーダーを検討”. F1 Gate.com. (2010年10月25日) 2010年10月26日閲覧。
- ^ “マックス・モズレー 「フェラーリは厳罰に値する」”. F1 TopNews. (2010年8月22日) 2010年9月15日閲覧。
- ^ “モズレーFIA会長による仰天ドライバースワップ案”. FMotorSports. (2006年5月21日) 2010年9月15日閲覧。
- 1 チームオーダーとは
- 2 チームオーダーの概要
- 3 禁止ルールの廃止 (2011 - )
- 4 チームオーダーへの評価
- 5 参考文献
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