キムパプ
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/15 13:44 UTC 版)
| キムパプ | |
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| 各種表記 | |
| ハングル: | 김밥 |
| 発音: | キムパプ(キンパプ) キムバプ(キンバプ) |
| RR式: | gimbap |
| MR式: | kimbap |
| 英語: | kimbop |
キムパプ(キンパ、キムパ、韓: 김밥)は、海苔で米飯を巻いて作る韓国料理。キムは「海苔」、パプは「飯」を意味する。
巻き簾や海苔を使用する調理法などは、日本の海苔巻きと同じであるが、キムパプには酢飯が使用されず、ごま油を混ぜた白飯が加えられていることが一般的であり、また中に入る具材が日本の海苔巻きに比べて多く、生魚が使用されないなどの違いがある[1]。
発音
国立国語院制定の標準語では長音と平音で「キーンバッ(김ː밥)」が正しい発音であったが、2003年の調査によると標準語圏では60歳代以外は短音と濃音の「キンパッ(김빱)」が多数派を占めた。2016年11月に長音と濃音の「キーンパッ(김ː빱)」も標準語の発音である定められた。標準語どおりに発音するのはアナウンサーなど限定的で、大衆に広まっている発音とのズレを問題視する声もある[2]。この節のみ、「キムパプ」ではなく実際の発音に近いカタカナ表記を用いる。
歴史
韓国文化体育観光部傘下の国立国語院と日本政府が共同で編纂した『韓国伝統文化事典』によると、「日本の海苔巻きに由来」するとされている[3]。
日本起源説
1685年(貞享2年)に早ずしが誕生し、酢飯と寿司種を使用する江戸の料理として広く広がった。1716年(正徳6年・享保元年)、品川で海苔の養殖が始まり、江戸の町に海苔が普及することになった。1749年(寛延2年)編纂の『料理山海郷』で初めて巻き寿司が紹介されたが、海苔は用いられていなかった[4]。1776年(安永5年)編纂の『新撰献立部類集」では海苔を使った巻き寿司の料理法が紹介されている[5]。このように、日本の海苔巻きは江戸時代中期、1750年頃には誕生していたと考えられている。
日本起源説に従うと、大韓帝国が日本に併合された1910年(明治43年)以降に海苔巻きが朝鮮半島に伝来し、酢ではなくごま油を使用し、キムチなどを具材とするなど現地化が進んだのが起源と考えらている。日本固有の巻き簾を使用する調理法も同じであり、また板海苔は日本の和紙製作技術から派生して生み出されたものである。キムパプの名前は1935年の新聞が初出とされる[6]が、韓国では日本語式に「ノリマキ」と呼ばれていたが、1948年に韓国政府の国語醇化政策により「キムパプ(김밥)」と呼ぶよう指定された。
1958年3月29日の『東亜日報』に掲載された記事では、「酢・砂糖・塩・グルタミン酸ナトリウムをご飯に混ぜる」とある。しかし、その後はキムパプのレシピから酢が除外され、代わりにごま油が追加された[7]。
しかし、1990年代まで一般に「ノリマキ」の名称で呼ばれていたため、1995年に文化体育部(現在の文化体育観光部)が『日本語套用語醇化資料集』、1996年に国立国語院が『日本語套生活用語醇化集』を発行し、生活用語として残っている日本語的語彙の一つとして「ノリマキ」を挙げ、これを「キムパプ」と置き換えて表記するよう推進し、以降「キムパプ」という呼び名が定着した[8]。
韓国起源説
以下は大韓民国成立後に現地のマスコミなど韓国の民間が流布した科学的にも歴史資料的にも根拠のない俗説であり、前述の『韓国伝統文化事典』によって否定されている。
- 三国時代起源説
- 俗説では三国時代が起源とされるが誤りで、出典とされる『三國遺事』にあるのは延烏という男が、海の「藻」を採取する描写のみである[9]。「藻」ではなく「海苔」についての最古の記録は15世紀の『慶尚道地理志』および『東国輿地勝覧』である。慶尚道と全羅道で海苔が生産されていたとある[10]。
- サム起源説
- サム(쌈)とは、味付け調理された肉や具材をサンチュ(상추)のような葉物野菜で包んで食べる料理で、キムパプとは全く関連はない。日本産の海苔や炊いたジャポニカ米を一般市民が食べる習慣も日韓併合期以降に広まったものである。野菜や海藻で飯を包む「縛苫(パクジョム、박점)」や「福裹(ポックァ、복과)」を小正月に供えるという記述が登場するのは、1819年の『洌陽歲時記』や1849年の『東國歳時記』からである。なお、縛苫を「縛占」、福裹を「福裏(ポッリ)」と誤記した記事がメディアでも多数見受けられる。
その他、韓国学中央研究院が発刊した『韓国文化大百科事典』では、キムパプは海苔にもち米とおかずを巻いて食す伝統に由来するという説を提示している。
製法・食べ方
乾燥した海苔の上に胡麻油などで味を付けたご飯を均一に薄く敷き、その上に細長い形に整えられた具材を載せる。具材は、複数の材料を用いることがほとんどである。具材は沢庵、薄焼き卵、人参、牛蒡、ハム、ほうれん草、胡瓜などが最も一般的である[11]。その他、キムチ、エゴマの葉、牛肉、ツナ、カニかまぼこ、チーズ、チャンジャなどがある。
この他、具なしのキムパプ(後述の忠武キムパプ)や刻んだニンニクのチャンアチ(醤油漬け)のみを米飯に混ぜてから海苔で巻いたキムパプもある。最後にご飯と海苔で具材を巻き込み、海苔の表面にごま油を塗り白胡麻を振って風味付けをする[11]。
できあがったものを輪切りにし、何もつけずにそのまま食するのが一般的であるが、焼いて食べたり、卵液をつけたものを焼いて食べることもある。トッポッキの汁を付けて食べる人も多い[12]。キムチやたくあんなどの漬物およびスープが共に供される場合が多い。
種類
具材の種類や料理形態には様々な種類があり、地方や店によるバリエーションも豊富である。1990年代半ばまでは高級化路線が人気を集めたが、IMF経済危機後から昔スタイルの簡素なものが流行し始めた[13]。
- 一般的なキムパプ
- 具材を米飯と海苔で円柱状に巻いたもの。中に入る具材により様々な種類と名称がある。一般的なものとしては、キムパプを盛り合わせた「モドゥムキムパプ」、ツナが多めに入った「チャムチキムパプ」、「野菜キムパプ」、「チーズキムパプ」、「キムチキムパプ」などがある。
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忠武 キムパプ - 具の入っていない一口サイズの握り飯に海苔を巻いたものを、イカの甘辛い和え物やカクトゥギと共に食する。慶尚南道の忠武(現在の統営市)が発祥の地とされていることから、この名前がついた。独立後、一人の漁師が船の上でキムパプと大根キムチとイイダコの辛い和え物を食べたのがルーツであるという説がある。この時のキムパプは下味のない海苔とご飯を使用するものだった。一度洋上に出ると何日も帰れないので、食べ物が傷まないようにキムパプの具材も最小限に、また下味も付けなかったのだ[14]。
- 本来のスタイルはおかずに串が刺してあり、「串キンパプ(꼬지김밥)」が通称であったが、1981年に汝矣島で開かれた伝統文化祭「国風81」を担当した全斗煥の側近許文道が、学生時代の思い出の味であった串キンパプを「忠武キンパプ」の名で出展して以降、統営の名産品としてその名が広まった。出展者の女性によると、1947年には統営港で旅客を相手に串キンパプの販売が行われていたという[15]。
- コマキムパプ
- 一口で食べられる、小さなサイズのキムパプ。コマ(꼬마)は朝鮮語で子供の意。
- ヌードキムパプ
- 海苔が苦手な欧米人向けにアメリカで考案された裏巻きのカリフォルニアロールに似せて作られたキムパプ。韓国で近年登場した比較的新しい種類。
- 三角(サムガク)キムパプ
- 具材の入った三角形の握り飯に海苔を巻いたもの。日本の三角おむすびが伝来したもの。詳細はおにぎりを参照。
慶州市の「キョリキムパプ」は具材の大部分を卵焼きが占めており、卵焼きキムパプと呼ばれる。済州島では秋刀魚を丸ごと入れた「サンマキムパプ」が存在する[14]。
流通・消費形態
当初、白米や海苔は高価だったため富裕層が多く消費していたが、近年はファストフード的なものとして、韓国はじめ世界各国の韓国人コミュニティーで調理・販売されている。主食にも間食にもなる手軽なメニューとして、韓国内では広く流通し、幅広い層に消費されている。家庭では食卓のメニューとしてより、遠足やハイキングなどの野外活動の弁当のメニューとして調理されることが多い。屋台やコンビニエンスストア、高速道路のサービスエリア、登山客向け施設などでもキムパプは販売されている。駅や列車内では、駅弁の定番メニューとなっている。
また、韓国にはキムパプの専門チェーン店が存在する。1995年に仁川で開業したキムパプ天国(김밥천국)はキムパプ市場の大衆化の先鞭をつけた。当時キムパプ天国で販売された「1000ウォンキムパプ」は、安いにもかかわらず具材の量は豊富で、サラリーマンたちの朝食として重宝がられた[11]。これ以降、1000ウォンの低価格で販売する店舗が現れ、競争が激化した。2000年代には50以上のチェーン店が展開され、市場規模は6000億ウォンとされた。大手のチェーン店には、キムガネ(김家네)、鐘路キムパプ(종로김밥)、キムパプナラ(김밥나라)などがある。
韓国以外の国や地域でも、日本のローソンや無印良品で発売され、専門店が各地に増えるなど人気が高まっている。日本はそもそも海苔巻きに親しみがあることや、2020年以降のコロナ禍でテイクアウトが拡大した際、キムパプがテイクアウトしやすい料理であったことなども、流行の理由として挙げられる[16]。
2025年には昨今の韓流ブームや同年にNetflixにて配信公開されたアニメ映画『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』(ソニー・ピクチャーズ アニメーション制作)の影響でキンパブームが流行し、SNSではキンパを丸ごと1本かぶりつく「キンパチャレンジ」と呼ばれる動画が相次いで投稿された[17]。
脚注
- ↑ 中央日報 2009.
- ↑ 딕씨 (2011年11月15日). “한국어표준발음듣기 서비스 참여자 인터뷰”. naver.com. 2023年3月17日閲覧。
- ↑ 韓国国立国語院 編、三橋広夫, 趙完済 訳『カラー日本語版 韓国伝統文化事典』教育出版、2006年、90頁。ISBN 4-316-80103-1。
- ↑ “【料理山海郷】”. base1.nijl.ac.jp. 2020年5月15日閲覧。
- ↑ 赤野裕文「寿司の変遷と酢の力」『日本食生活学会誌』第31巻第4号、日本食生活学会、2021年、201-206頁、 doi:10.2740/jisdh.31.4_201、 ISSN 1346-9770、 CRID 1390287907269842432。
- ↑ “휴지통”. 동아일보(東亜日報). 1935年1月15日. p. 2.
- ↑ 黄 2022, p. 68-69.
- ↑ 金尾幸夫. “国語純化運動”. 財団法人自治体国際化協会. 2023年3月17日閲覧。
- ↑
(中国語) Page:三國遺事 卷第一 1512年 奎章閣本.pdf/63, ウィキソースより閲覧, "一日延烏歸海採藻" - ↑ 黄 2022, p. 69.
- 1 2 3 黄 2022, p. 70.
- ↑ “キンパッ”. seoulnavi.com. 株式会社ソウルナビ. 2012年9月12日閲覧。
- ↑ “김밥 ―국내외 한식당 대표음식 125개 스토리텔링 (1번째)”. 文化体育観光部 (2010年8月26日). 2017年12月16日閲覧。
- 1 2 黄 2022, p. 71.
- ↑ “이택희의 맛따라기 단맛 물씬 활어회 천국 … 숙취 아침에 간절한 졸복국·메기탕”. news.joins.com. JoongAng Ilbo Co., Ltd. (2017年5月19日). 2017年5月23日閲覧。
- ↑ 阿古真理 (2022年2月3日). “韓国「キンパ」が日本でこんなにも浸透したワケ”. 東洋経済ONLINE. 2023年3月17日閲覧。
- ↑ 西嶋広美 (2025年8月7日). “NetflixのK-POPアニメ映画で再燃する“キンパブーム”?日本でも大人気“韓国のり巻き”の魅力”. Yahoo!ニュース エキスパート. LINEヤフー株式会社. 2025年8月7日閲覧。
参考文献
- “ウナギの尻尾にこだわるアナタは韓国人”. japanese.joins.com. JoongAng Ilbo Co., Ltd. (2009年6月8日). 2009年7月5日閲覧。
- ファン・ヘウォン(黄海嫄)「懐かしい母の味 韓国のキムパプ」『Koreana』第29巻第4号、The Korea Foundation、済州特別自治道西帰浦市、2022年、68-71頁、 ISSN 1225-4592。
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