UEFAのファイナンシャル・フェアプレー規則とは? わかりやすく解説

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UEFAのファイナンシャル・フェアプレー規則

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/04 02:55 UTC 版)

UEFAのファイナンシャル・フェアプレー規則(UEFA Financial Fair Play Regulations)とは、UEFAがUEFAに加盟するプロサッカークラブの財政健全化を目指し、2011年から導入され、2014年から正式に施行された規則である。FFPの略称で呼ばれることが多い。2022年6月に改定され、UEFA Financial Sustainability Regulations(財務の持続可能性に関する規制)に名称が改められている。

概要

2007年にUEFA会長に就任したミシェル・プラティニによって提唱され、2009年の理事会で導入が決定された。この規則によって、UEFAに加盟するクラブは、移籍金や人件費などの支出が、移籍金や入場料、テレビ放映権料、大会賞金、スポンサー収入などのクラブがサッカーによって得た収入を上回ることを禁じられた。金融機関からの借入金によってやオーナーの資産によって赤字を補填することもできない。ただし、サッカークラブの本質である育成に関する費用や、スタジアムや練習場などに施設を整備する費用は支出に含まれないとされている。審査は過去3年間の合計で行われる。2014-15シーズンまでは4500万ユーロ、2017-18シーズンまでは3000万ユーロの赤字までは許容され、2018-19シーズン以降は赤字が許容されない。規則に違反した場合は、罰金やUEFAチャンピオンズリーグUEFAヨーロッパリーグの選手の登録人数の制限、CLやELの出場権剥奪などの制裁が科される[1][2]

財務の持続可能性に関する規制

2022年4月に承認され6月に発効した新規則では、延滞未払金・サッカー収益・チームコストの3つの管理を厳格化することが求められている。延滞金は他クラブ・従業員・社会保険並びに税務当局・UEFAへの全ての支払いに関して年3回基準日があり、90日以上の延滞が発生するとペナルティとなる。また、赤字に関しての許容額はFFP時代よりも1000万ユーロ分緩和されたが、借入金ではなく資本の強化や拠出をすることが求められるようになっている。選手・監督の給与、移籍金、仲介手数料への支出に関しては旧規則では収益以上の支出は許されていなかったが、これが強化され、収益の70%以内に制限されることとなった。ただし、経過措置として2023/2024シーズンは90%、2024/2025シーズンは80%と段階的な適用となっている[3]。また、移籍金に関するルールも整備され、移籍金の償却は最大5年とされた(ただし、サインボーナスは含まれない)。[4]

クラブへの影響

FFPの導入によって、それまで赤字経営を続けてきたクラブは経営方針の転換が迫られ、主力選手の売却や補強が制限されるケースが多くみられる。一方で、FFP対策として、オーナーと関係を持つ企業とのスポンサー契約を結び、収入を増やすクラブもみられる。2023年の学界の体系的な見解では、このルールはいくつかのリーグのバランスに悪影響を及ぼしているという[5]

  • マンチェスター・シティ-2014年に違反による罰金処分とCLの登録人数の制限の処分を受けた[6]。FFP対策としてオーナーであるアブダビ王族の経営するエティハド航空と巨額のスポンサー契約を締結している。ただし、このスポンサー契約は、適正な価格を上回っているとUEFAに判断されている[2]。ところが2020年2月14日、このスポンサー収入がエティハド航空を迂回したオーナーによる投資と判断され、2季の欧州カップ戦締め出し処分を受けた[7]。(その後、CASにより処分は覆された)
  • パリ・サンジェルマン-2014年に違反による罰金処分とCLの登録人数の制限の処分を受けた[6]。カタール観光局と巨額のスポンサー契約を締結しているが、UEFAから適正な価格を上回っている契約であると判断されている[2]
  • インテルナツィオナーレ・ミラノ-2015年に違反により制裁を科された[8]。FFPの影響から主力選手の放出に迫られ、チームが弱体化している。
  • ACミラン-ベルルスコーニ元会長の資金により補強資金を確保していたが、FFPにより2012年にイブラヒモビッチチアゴ・シウヴァら主力選手を放出し、チームは弱体化。2017年に中国企業に買収され、2017年夏の移籍市場で2億ユーロを投じて補強を行ったが、FFP違反の可能性が取りざたされている[9]。2018年6月、FFP違反により2018-19シーズンのEL出場権を剥奪された(その後、CASにより処分は覆された)[10][11]
  • ASローマ-2015年に違反により制裁を科された[8]。FFP対策のために、主力選手の売却をして資金を確保している[12]
  • パナシナイコス-2018年に違反によりUEFA主催大会の出場権を3年間剥奪された[13]

上記の他にも、違反により制裁を受けているクラブが存在する。

脚注

  1. ^ 欧州サッカーの勢力地図が変わるか。赤字経営の禁止、ビッグクラブに影響大の“ファイナンシャルフェアプレー”制度とは?”. フットボールチャンネル (2014年3月4日). 2018年4月29日閲覧。
  2. ^ a b c 【欧州サッカー時事解説】「ファイナンシャル・フェアプレー」とは?”. サッカーダイジェスト (2015年1月7日). 2018年4月29日閲覧。
  3. ^ Explainer: UEFA’s new Financial Sustainability regulations” (英語). UEFA.com. Union of European Football Associations (2022年4月7日). 2025年8月27日閲覧。
  4. ^ UEFA Club Licensing and Financial Sustainability Regulations” (英語). UEFA.com. Union of European Football Associations (2024年6月1日). 2025年8月27日閲覧。
  5. ^ Ramchandani, Girish; Plumley, Daniel; Davis, Adam; Wilson, Rob (2023-02-28). “A Review of Competitive Balance in European Football Leagues before and after Financial Fair Play Regulations” (英語). Sustainability 15 (5): 4284. doi:10.3390/su15054284. ISSN 2071-1050. https://www.mdpi.com/2071-1050/15/5/4284. 
  6. ^ a b UEFA、FFPでシティやPSGを処分 80億円以上の罰金”. goal.com (2014年5月16日). 2018年4月29日閲覧。
  7. ^ シティに衝撃! FFP違反で今後2季にわたってCL締め出しへ!【超ワールドサッカー】”. 超ワールドサッカー. 2020年4月14日閲覧。
  8. ^ a b “インテル、ローマなど10クラブがFFP違反で制裁。日本人所属の2クラブも”. フットボールチャンネル. (2015年5月9日). https://www.footballchannel.jp/2015/05/09/post86959/ 2018年4月29日閲覧。  {{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)
  9. ^ “ミランが財政赤字でFFP抵触か、UEFAからの制裁に直面”. afpbb news. (2017年12月16日). https://www.afpbb.com/articles/-/3155642 2018年4月29日閲覧。 
  10. ^ UEFA.com (2018年6月27日). “CFCB Adjudicatory Chamber renders AC Milan decision” (英語). UEFA.com. 2018年6月30日閲覧。
  11. ^ ミラン、逆転で新シーズンのEL出場権獲得!1年間の出場停止処分が覆る”. www.goal.com. 2019年2月9日閲覧。
  12. ^ “昨夏に放出のサラーに大活躍許す…ローマのモンチSD、移籍の経緯を告白”. サッカーキング. (2018年4月26日). https://www.soccer-king.jp/news/world/cl/20180426/748296.html 2018年4月29日閲覧。  {{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)
  13. ^ “優勝42回の名門に鉄槌…欧州大会3年間の出場停止処分。財政難で債務返済が延滞”. フットボールチャンネル. (2018年4月25日). https://www.footballchannel.jp/2018/04/25/post266815/ 2018年4月29日閲覧。  {{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)

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