HEAT20
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/05/08 05:23 UTC 版)
| 団体種類 | 一般社団法人 |
|---|---|
| 略称 | HEAT20(ヒート20) |
| 設立 | 2020年7月22日 |
| 所在地 | 東京都千代田区神田富山町7番地 |
| 法人番号 | 3010005032092 |
| 主要人物 | 坂本雄三(初代理事長) 鈴木大隆(理事長) 岩前篤(理事) 布井洋二(理事) |
| 活動地域 | |
| 主眼 | 低環境負荷・安心安全・高品質な住宅・建築の実現 |
| 活動内容 | 住宅の断熱性能に関する性能水準の提案(G1・G2・G3)、調査研究、技術開発、普及活動、人材育成 |
| ウェブサイト | https://www.heat20.jp/ |
HEAT20(ヒート20)は、一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」の略称であり、同法人が提案する住宅外皮性能水準の名称としても用いられる。
2026年4月、同法人は和文名称を「一般社団法人 みらい 建築・住宅 研究機構」へ変更する方針を公表した。ただし、正式名称は社員総会での決議後に確定するとされている[1]。
概要
HEAT20は、欧米における民間主導の住宅性能向上の取り組みを参考に、日本においても技術開発の目標を提示することを目的として、2009年[2]に研究者、住宅会社、建材メーカーなどの有志によって「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」として発足した。その後、2020年に一般社団法人化された[3]。日本の気候条件を踏まえた住宅性能のあり方を提示している。
坂本雄三は初代理事長を務め、2026年4月に鈴木大隆が理事長に就任した[4]。
特徴
HEAT20は、住宅の断熱性能や室内温熱環境を検討する際に参照される民間指標の一つである。外皮性能に加えて室内の温熱環境も考慮した評価を行う点に特徴がある。
住宅シナリオに基づく評価
HEAT20では、住宅性能を外皮平均熱貫流率(UA値)のみで評価するのではなく、「住宅シナリオ」に基づいて評価する[5]。
住宅シナリオとは、以下を同時に満たす状態を指す。
- 室温環境(Non-Energy Benefit:NEB)
- 省エネルギー性能(Energy Benefit:EB)
このため、G1・G2・G3といった水準は、住宅における室内環境およびエネルギー性能の両面を示す指標とされる。
室温環境の重視
冬期における室温環境を重視しており、住宅内の温度差の抑制や低温状態の回避など、居住環境の改善を目的としている。
地域別基準
日本の気候区分に応じて性能基準が設定されている。
グレード
HEAT20では住宅の断熱性能を3段階(G1・G2・G3)で評価する。これらのグレードは、外皮性能(UA値)だけでなく、住宅シナリオに基づく室温環境およびエネルギー性能を含めて定義される。グレードが高くなるほど、室内の温度差が小さくなり、低温領域(概ね15℃未満)の発生が抑制される傾向がある。
| グレード | 1・2地域 居室連続暖房 |
3地域 LDK平日連続暖房 その他は部分間歇暖房 |
4・5・6地域 部分間歇暖房 |
7地域 部分間歇暖房 |
|---|---|---|---|---|
| G1 | 概ね13℃を下回らない | 概ね10℃を下回らない | ||
| G2 | 概ね15℃を下回らない | 概ね13℃を下回らない | ||
| G3 | 概ね16℃を下回らない | 概ね15℃を下回らない | 概ね16℃を下回らない | |
これらの室温環境の目安は、地域区分や暖房方式により異なる。また、表中の温度は暖房期最低室温(OT)の3%タイル値を基準とした目安である。
これらのグレードは、住宅の断熱性能差を検討する学術研究においても比較水準として用いられることがあり、HEAT20 G2を条件の一つとした研究例もみられる[6]。
夏期・中間期の性能提案
HEAT20では、冬期の断熱性能に加え、夏期および中間期の室内環境に関する性能水準として「G-A」「G-B」が提案されている。これらは主に日射遮蔽や通風、室温上昇の抑制といった観点から評価される[7]。
断熱等級との関係
日本の断熱等級(断熱等性能等級)[8]は、住宅の外皮性能を評価する国の基準である。HEAT20は民間団体による提案指標であり、断熱等性能等級とは同一の制度ではないが、いずれも外皮平均熱貫流率(UA値)を用いて住宅の断熱性能を示す点で共通している。
国の基準の変遷とHEAT20
HEAT20が発足した2009年当時、国の断熱等性能等級の最高水準は等級4(1999年制定の次世代省エネ基準)であった。HEAT20は、当時の国の基準を上回る住宅外皮性能水準を民間の立場から提示した。
その後、脱炭素社会の実現に向けた政策を背景に、2022年4月に断熱等性能等級5が、同年10月に断熱等性能等級6・7が新設された。等級6・7の検討にあたっては、HEAT20のG2・G3水準が民間基準として参照され[9][10]、等級6はG2、等級7はG3の外皮性能水準と概ね対応するものとして整理されている。
ただし、HEAT20は外皮性能だけでなく、住宅シナリオに基づく室温環境や省エネルギー性能も含めて評価する指標である[11]。そのため、断熱等性能等級とHEAT20のグレードは、外皮性能の水準としては近い関係にあるものの、評価の考え方は同一ではない[12]。
さらに、2025年以降に新築する住宅では断熱等性能等級4以上が求められるようになり、遅くとも2030年までに、省エネ基準をZEH水準へ引き上げる方針が示されている。かつて最高等級であった等級4は、実質的に新築住宅の最低水準へと移行しつつある[13]。
グレードと断熱等級の対応
一般に、HEAT20の各グレードと断熱等性能等級との関係は、外皮性能水準の目安として以下のように整理されることがある。
| HEAT20 | 断熱等性能等級(目安) |
|---|---|
| G1 | 等級5程度 |
| G2 | 等級6程度 |
| G3 | 等級7相当 |
ただし、この対応は主に外皮性能水準に関する目安であり、HEAT20のグレードと断熱等性能等級が同一の評価体系であることを意味するものではない。
ZEHとの関係
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、断熱性能の向上、高効率設備の導入、再生可能エネルギーの活用により、年間の一次エネルギー消費量の収支を概ねゼロとすることを目指す基準である。HEAT20は主に断熱性能および室内の温熱環境に着目した指標であり、両者は評価対象や目的が異なる。
一般に、ZEHの達成にあたっては一定以上の断熱性能が求められるため、HEAT20のG1またはG2程度の水準が言及されることがある。ただし、ZEHはエネルギー収支を評価する制度であり、HEAT20とは直接的に対応するものではない。
書籍
- 一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会 (監修)『G2の家のつくりかた暮らしかた』エクスナレッジ、2023年12月3日。ISBN 978-4767831466。
- 一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会 (著)『HEAT20設計ガイドブック2021 正しい住宅断熱化の作法』建築技術、2021年5月27日。 ISBN 978-4767701691。
脚注
- ↑ “HEAT20:鈴木大隆氏が新理事長に就任、和文名称を変更へ”. 建材流通. 2026年5月8日閲覧。
- ↑ “HEAT20 設計ガイドブック+PLUS”. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “HEAT20”. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “HEAT20:鈴木大隆氏が新理事長に就任、和文名称を変更へ”. 建材流通. 2026年5月8日閲覧。
- ↑ “住宅シナリオと外皮性能水準”. HEAT20. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “住宅断熱性能の違いが生理学的反応及び在宅作業成績に与える影響”. 日本建築学会環境系論文集 2026年5月8日閲覧。.
- ↑ “新たに戸建住宅の『夏期・中間期の外皮性能水準』を提案”. HEAT20. 2026年5月8日閲覧。
- ↑ “断熱性能 | ラベル項目の解説|建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表⽰制度”. 国土交通省. 2026年4月8日閲覧。
- ↑ “住宅性能表示制度の見直しについて”. 国土交通省. 2026年5月8日閲覧。
- ↑ “断熱等級に6・7新設 水準はHEAT20・G2、G3相当”. 新建ハウジング. 2026年5月8日閲覧。
- ↑ “HEAT20、認証制度の運用を開始=エンドユーザーに訴求する環境構築”. 住宅産業新聞. 2026年5月8日閲覧。
- ↑ “省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド”. 国土交通省. 2026年5月8日閲覧。
- ↑ “省エネ基準引き上げへ。脱炭素化も。”. 国土交通省. 2026年4月8日閲覧。
外部リンク
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