【L-3 EOTech】(えるすりーいおてっく)
EOTech
アメリカの防衛産業企業である、L-3 Communicationsの系列のホログラフィックウエポンサイトの製造メーカー。
主な製品
- ホログラフィックウエポンサイト
- マグニファイヤー
- G23.FTS
メーカーホームページ
http://www.eotech-inc.com/
EOTech
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/07/18 16:06 UTC 版)
| 種類 | 非公開会社 |
|---|---|
| 市場情報 | 非上場 |
| 本社所在地 | アメリカ合衆国ミシガン州プリマス |
| 設立 | 1995年 |
| 業種 | 精密機器 |
| 事業内容 | ホログラフィック照準器、ライフルスコープ、ドットサイト、倍率増幅器、暗視・熱画像装置などの開発・製造 |
| 主要株主 | American Holoptics LLC |
| 外部リンク | https://www.eotechinc.com/ |
EOTech(イオテック、正式社名:EOTECH, LLC)は、アメリカ合衆国ミシガン州プリマスに本社を置く光学機器メーカーである。
小火器に装着するホログラフィック照準器、ライフルスコープ、ドットサイト、倍率増幅器、暗視装置および熱画像装置などを開発・販売している[1]。
同社の主力製品であるHolographic Weapon Sightは、一般的なLED式反射照準器とは異なり、レーザー光によってホログラム式レティクルを再生する構造を採用している。
1995年にミシガン州の研究機関Environmental Research Institute of Michiganの技術を基礎として設立され、長期間にわたりL-3 Communicationsおよび後身のL3Harris Technologiesの傘下にあった。2020年7月、American Holoptics LLCがL3HarrisからEOTech事業を取得した[2]。
日本では株式会社ノーベルアームズが販売代理店となっている。
沿革
前史
EOTechの技術的起源は、ミシガン州にあったEnvironmental Research Institute of Michiganにさかのぼる。同研究所では、軍事、航空、環境観測などに使用されるレーザーおよびホログラフィー技術の研究が行われていた。
1970年代には、航空機搭載機関砲などに用いるホログラフィック照準技術の研究が進められた。その後、関連技術を小火器用照準器へ応用する開発が行われた。
1992年には、小火器用ホログラフィック照準器に関する特許が取得されたとされる。
設立と初期製品
1995年、Environmental Research Institute of Michiganの研究事業から派生する形でEOTechが設立された[3]。
1996年、ブッシュネルと共同で民間市場向けの「HOLOsight」を発表した。HOLOsightは、レーザーでホログラム式レティクルを照明する市販型照準器として販売された。
初期の製品は狩猟やスポーツ射撃向けとして展開されたが、その後、耐久性、防水性、暗視装置への対応などを強化した軍・警察向けモデルが開発された。
L-3 Communications傘下
2005年、EOTechは防衛・通信機器企業のL-3 Communicationsに買収された。
買収後は「L-3 Communications EOTech」の名称で事業を展開し、米国の軍、警察、国土安全保障関連機関などへホログラフィック照準器を供給した。この時期には、512、552、553、557などのモデルが販売された。また、小型化されたXPSおよびEXPSシリーズも開発された。
2019年、L-3 TechnologiesとHarris Corporationの合併により、EOTechはL3ハリス・テクノロジーズの事業部門となった。
American Holopticsによる取得
2020年3月、L3Harris Technologiesは、American Holoptics LLCへEOTech事業を売却する契約を締結したと発表した。
同年7月31日に売却が完了し、EOTechはAmerican Holopticsの傘下となった[2]。
American Holopticsは、Koucar Managementの関連企業である。買収後、EOTechはL3Harrisから独立し、民間所有企業として事業を継続した[4]。
事業拡大
2016年、可変倍率式ライフルスコープ「Vudu」シリーズを発売し、ホログラフィック照準器以外の光学照準器分野へ本格的に参入した[1]。
2021年、ミシガン州トラバースシティに新たな事業拠点を設ける計画を発表した。当時、同社は約145人を雇用していた[3]。
2022年、暗視装置などを製造していたIntevac Photonicsを買収し、暗視・デジタルセンサー分野の事業を拡大した[5]。
2025年には設立30周年を迎えた[6]。
製品
Holographic Weapon Sight
Holographic Weapon Sightは、EOTechを代表する等倍照準器である。一般に「HWS」と略される。
レーザーダイオードの光を、照準器内部に記録されたホログラム式レティクルへ照射し、射手側の視野内に照準パターンを再生する。
一般的なLED式ドットサイトでは、発光ダイオードの像を曲面レンズで反射させる。一方、HWSではレーザーとホログラム素子を使用する。
多くのモデルでは、中央の1 MOAドットと、その周囲に配置された約68 MOAの円形レティクルを組み合わせた照準パターンを採用している。
500シリーズ
500シリーズは、同社の初期から中期を代表するホログラフィック照準器である。
主な製品には以下がある。
- 511
- 512
- 551
- 552
- 553
- 557
512は単3形電池を使用する民間・法執行機関向けモデルである。552は外形が類似するが、暗視装置に対応する輝度設定を備える。
553はCR123形電池とクイックリリース式マウントを採用し、軍事用途を想定して設計された。
XPSおよびEXPSシリーズ
XPSおよびEXPSシリーズは、500シリーズよりも小型化されたホログラフィック照準器である。
本体を短くするため、CR123形電池を銃身に対して横向きに配置している。
XPSシリーズは固定式マウントと背面操作ボタンを備える。EXPSシリーズはクイックリリース式マウントを採用し、操作ボタンを本体側面に配置している。
側面ボタンは、照準器の後方に倍率増幅器を配置した状態でも操作しやすいよう設計されている。
主な製品には以下がある。
- XPS2
- XPS3
- EXPS2
- EXPS3
XPS3およびEXPS3は暗視装置に対応する。
518および558
518および558は、単3形電池を使用する500シリーズに、側面操作ボタンやクイックリリース式マウントを組み合わせたモデルである。
558は暗視装置に対応する。
HWS用レティクル
HWSには、用途に応じて複数のレティクルが用意されている。
代表的なレティクルは、約68 MOAの円と中央の1 MOAドットを組み合わせた「0」レティクルである。
ほかに、弾道補正用の複数ドットを備えたレティクルや、特定の弾薬・銃器に合わせたレティクルが存在する。
マグニファイア
EOTechは、等倍照準器の後方に取り付ける倍率増幅器を製造している。
倍率増幅器を使用することで、HWSを近距離では等倍のまま使用し、必要に応じて中距離用の拡大照準器として使用できる。
主な製品には以下がある。
- G23
- G30
- G33
- G43
- G45
G33およびG43は3倍、G45は5倍の倍率を持つ。
多くのモデルでは、照準器を横へ倒すことができるスイング式マウントが使用される。
Vudu
Vuduは、可変倍率式ライフルスコープのシリーズである。
近距離から中距離までを対象とする低倍率可変式スコープと、精密射撃や遠距離射撃を対象とする高倍率モデルがある。
主な倍率構成には以下がある。
- 1-6×24
- 1-8×24
- 1-10×28
- 3.5-18×50
- 5-25×50
- 8-32×50
VuduシリーズはHWSとは異なり、通常の光学レンズと電子照明式レティクルを使用する。
EFLX
EFLXは、拳銃、小銃、散弾銃などへの装着を想定した小型LED式ドットサイトである。
HWSとは異なり、レーザーおよびホログラムを使用せず、LEDの照準点をレンズで反射させる一般的な反射式照準器である。
初期モデルは開放型の発光部を採用し、DeltaPoint Pro系の取り付け規格を使用する。
暗視・熱画像装置
Intevac Photonicsの買収後、同社は暗視装置、デジタル暗視装置、熱画像装置なども取り扱っている。これらは軍、警察、政府機関向けを中心に展開される。
ホログラフィック照準器の構造
レティクルの生成
HWSでは、レーザーダイオードが発した光を光学系で反射・拡散し、ホログラム素子へ照射する。
ホログラム素子にはレティクルの画像情報が記録されており、レーザー光を受けることで、射手から見える照準パターンが再生される。
窓の破損時
ホログラム式レティクルは、照準窓の一部分が遮られたり損傷したりした場合でも、残された部分からレティクルの一部または全体を確認できる場合がある。ただし、破損の位置や程度によって視認性や照準精度は低下する。
視差
HWSは、設計上の基準距離では視差が小さくなるよう調整されている。
実際には、射手の視線位置、標的までの距離、製造誤差、温度変化などによって一定の視差や照準誤差が生じる。 「完全に視差がない」という表現は正確ではない。
電力消費
レーザー光源とホログラム再生機構を使用するため、一般的な省電力LED式ドットサイトに比べると電力消費が大きい。 製品によって単3形電池、CR123形電池などを使用する。
軍・法執行機関での使用
EOTech製品は、アメリカ軍、特殊作戦部隊、警察、連邦政府機関などで使用されてきた。 553など一部のモデルは、アメリカ特殊作戦軍向けの照準器として調達された。
同社は米国防総省、国土安全保障省、連邦捜査局などへホログラフィック照準器を販売した[7]。
ただし、軍・警察で使用されたことは、全ての部隊や職員へ一律に支給されたことを意味しない。
性能問題と米国政府との和解
2015年11月、米国司法省は、L-3 Communications EOTech、親会社L-3 CommunicationsおよびEOTech社長を相手取り、不正請求防止法などに基づく民事訴訟を提起した。
訴訟は提起と同時に和解され、L-3とEOTechは合計2,560万ドルを米国政府へ支払うことに同意した[7]。
米国司法省によると、問題となったHWSには、極端な高温または低温環境で照準点が移動する「thermal drift」と呼ばれる現象があった。
また、高湿度環境では光学系内部へ水分が侵入し、照準器のガラス表面が曇ったり、照準点の明るさが低下したりする可能性があった。
EOTechとL-3は、これらの問題を認識しながら、国防総省などへ長期間にわたり十分に開示しなかったことを和解文書で認めた[8]。
司法省によると、同社は政府に対し、製品が高温、低温および高湿度環境でも仕様どおり作動すると説明していた。また、性能や信頼性へ影響する情報を開示する契約上の義務を負っていた[7]。
和解後、EOTechは対象となる民間顧客を含む購入者に対して返品・返金プログラムを実施した。
その後、同社は製造工程、品質管理および製品仕様を変更したと説明している。
模倣品
EOTechのHWSは、外形や商標を模倣した製品が世界各国で流通している。模倣品には、外形のみを再現し、内部には一般的なLED式ドットサイトの構造を使用したものがある。
同社は、製品のシリアル番号、包装、刻印、光学性能などを確認し、正規販売店から購入するよう案内している。
製造・拠点
本社はミシガン州プリマスに所在する。
HWSは米国内で設計、開発および製造されていると同社は説明している[1]。
2021年には、ミシガン州トラバースシティに新たな拠点を設ける計画を発表した[3]。
脚注
- 1 2 3 “About EOTECH” (英語). EOTECH. EOTECH, LLC. 2026年7月15日閲覧。
- 1 2 “L3Harris Technologies Completes Sale of EOTech to American Holoptics” (Press release) (英語). L3Harris Technologies. 2020年7月31日. 2026年7月15日閲覧.
- 1 2 3 “Plymouth-based optics manufacturer EOTech establishing new operations in Traverse City” (英語). Michigan Economic Development Corporation. State of Michigan (2021年7月29日). 2026年7月15日閲覧。
- ↑ “EOTECH Commits to Customer Service with New Website” (英語). EOTECH. EOTECH, LLC (2021年1月18日). 2026年7月15日閲覧。
- ↑ “EOTECH Acquires Intevac Photonics” (英語). EOTECH. EOTECH, LLC (2022年1月3日). 2026年7月15日閲覧。
- ↑ “EOTECH Celebrates 30 Years of Electro-Optics Excellence” (英語). EOTECH. EOTECH, LLC (2025年1月7日). 2026年7月15日閲覧。
- 1 2 3 “Manhattan U.S. Attorney Files and Simultaneously Settles False Claims Act Lawsuit Against Defense Contractor and Its President for Selling Defective Sights to the Government” (英語). United States Department of Justice. United States Attorney's Office, Southern District of New York (2015年11月25日). 2026年7月15日閲覧。
- ↑ “United States ex rel. v. L-3 Communications EOTech, Inc. Settlement Agreement” (英語). United States Department of Justice. United States Department of Justice (2015年11月25日). 2026年7月15日閲覧。
関連項目
外部リンク
- EOTechのページへのリンク