Caslon
Caslon
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/05/24 06:07 UTC 版)
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| 様式 | セリフ |
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| 分類 | オールドスタイル |
| デザイナー | ウィリアム・カスロン1世 |
| 制作会社 | カスロン活字鋳造所 |
| 発表年月日 | 1725年 |
| 提供元 | マーゲンターラー・ライノタイプ、ランストン・モノタイプ、アドビ、ビットストリーム、アメリカン・タイプ・ファウンダーズ、パラタイプ、H・ベルトルト |
| 派生品 | 多数 |
| 上記表示フォント | Adobe Caslon(キャロル・トゥオンブリー作) |
Caslon(カスロン、カズロン、キャスロン、キャズロン)は、ウィリアム・カスロン1世がロンドンでデザインしたセリフ書体、またはその影響を受けて作られた書体の総称である。
カスロンは、活字を鋳造するための母型(マトリックス)に刻印を打つためのマスターであるパンチの彫金師として活動していた[1][2][3]。彼は、現在でいうオールドスタイル・セリフ体に分類される文字デザインの伝統に則り、ペンによる手書き文字を思わせる比較的有機的な構造の文字を制作した。当時イギリスでは一般的でなかった活字彫刻の伝統をロンドンに確立し、その頃イギリスで人気があったオランダから輸入されたバロック様式の書体の影響を受けた[4][5][6][7]。彼の書体はその品質と魅力的な外観で高い評価を確立し、長文の本文組版に適しているとされた[8][9]。
カスロンのローマン体(立体)の字形には、左上に凹みのある「A」や、右下に下向きの突起(スパー)がない「G」といった特徴がある。また「M」の両脇は直線で[10]、「W」の上部には3つの先端があり、「b」の左下には先細りの短いストロークが見られる[10]。「a」の先端はわずかに球状になっている[11]。アセンダーとディセンダーは比較的短く、本文サイズの文字におけるストロークの太さのコントラストは控えめである。イタリック体で「h」は内側に折れ曲がり、「A」は鋭く傾斜している[10]。オリジナルのデザインでは「Q」「T」「v」「w」「z」に装飾的なスワッシュが付いているが、すべてのリバイバル版がこれを踏襲しているわけではない[10] 。イタリック体の「J」にはクロスバーがあり、カスロンは多くのサイズでこれを回転させた活字をポンド記号として見本帳に掲載した[3]。カスロンはサイズごとに異なるデザインを制作しており、大きいサイズでは、彼が販売した前世紀にジョセフ・モクソンが彫った活字に倣い、「ダッチ・テイスト(オランダ趣味)」のスタイルで、より繊細なディテールとストロークの太さの鋭いコントラストを持たせている[12]。カスロンの大きいサイズのローマン体フォントでは「C」に2つのセリフがあるが、小さいサイズでは右上に半矢印型のセリフが1つだけ付いている。
カスロンの書体は彼の存命中から後世に至るまで人気を博し、19世紀初頭に一時的に人気が衰えた後、特に本文印刷や書籍の組版用として再び人気を取り戻した。数多くのリバイバル版が存在するが、カスロンのオリジナルデザインへの忠実度は様々である[13]。現代のカスロンのリバイバル版では、カスロンの時代には使われなかったボールド体や、大文字と同じ高さの「ライニング数字」といった要素が追加されることも多い[14][注釈 1]。カスロンのリバイバル版をデザインしたウィリアム・バークソンは、本文におけるカスロンを「心地よく、親しみやすい」と評している[15]。
歴史
カスロンは、ロンドンで銃器などの金属製品に装飾を施す彫金師の見習いとしてキャリアをスタートさせた[19][18]。カスロンの生涯に関する主要な情報源である印刷業者で歴史家のジョン・ニコルズによると、その仕事の正確さがロンドンの著名な印刷業者たちの目に留まり、彼らはカスロンに印刷用の鋼鉄製父型を彫るための資金を前渡しした。最初は外国語用、そして評判が高まるにつれてラテンアルファベット用も手がけるようになった[20][21]。父型彫金は難しい技術であり、その技法の多くは彫金師によって秘匿されるか、父から子へと受け継がれた。ニコルズによれば、カスロンも後にこの慣習に倣い、誰も見ることができない部屋に閉じこもって、息子にその技術を内密に教えたという[4][22]。当時のイギリスの印刷業者は自前の活字製作にほとんど成功しておらず経験も乏しかったため、オランダやフランスから購入した機材を使用せざるを得なかった。そのためカスロンの活字は、当時人気のあったオランダ活字書体の影響を明らかに受けている[23][24][25]。ジェームズ・モズリーは、彼の初期の作品を次のように要約している。「カスロンのパイカは……アムステルダムの印刷業者ディルク・フォスケンスの未亡人の見本帳(1695年頃)に見られるパイカ・ローマンとイタリックに極めて忠実に基づいており、ボウヤーが数年間使用していたものであった。カスロンのパイカは1725年から彼の印刷物でこれに取って代わる……1728年に初めて使用され、20世紀に大いに賞賛されたカスロンのグレート・プライマー・ローマンは、明らかにフォスケンスのテキスト・ロメインと関連がある。これは17世紀初頭の書体で、ロンドンのいくつかの印刷業者が使用し、現在ではハウダの父型彫金師ニコラ・ブリオの作とされている」[4]。モズリーはまた、他のいくつかのカスロン書体もフォスケンスのパイカを「知的に翻案」したものだと評している[4][26][27][28]。
カスロンの活字は、その出来栄えの良さで急速に名声を築き、1733年にはヘンリー・ニューマンが「その道の職人としてヨーロッパ中の誰をも凌駕することを目指しているかのような、あの芸術家の作品」と評し、「そのため我々の印刷業者は、かつて大いに価値を置いていたエルゼビアその他の活字を、もはやオランダに発注することはない」と述べている[4][29][注釈 3]。モズリーはカスロンのロング・プライマーNo. 1を「ゆったりとしたプロポーションを持ち、通常はきつすぎない字間で鋳造されていた書体であり、これらは小さいボディサイズの書体に求められる特徴である。それでいて非常に堅牢に作られているため、それで組まれた単語はその形を保ち、快適に読むことができる……2段組ページの狭い段組や、ごく普通の八つ折り判で最も効果を発揮する書体である」と評している[31]。カスロンは自身が彫金したものではないフレンチ・キャノンを販売していたが、これはジョセフ・モクソンの作品にいくつかの変更を加えたものであった可能性があり、彼の大きいサイズの書体はこのハイコントラストなモデルに倣っている[17]。彼はチェンバーズの『サイクロペディア』に見本帳を寄稿することで自身の活字を宣伝したが、これは古書ディーラーによって切り取られ、別々に販売されることが多かった[16]。
カスロンの生涯にヨーロッパ大陸で広まりつつあった、より繊細で様式化され実験的な「トランジショナル」書体、とりわけ前世紀の「ロマン・デュ・ロワ」や、パリのピエール=シモン・フルニエ、アムステルダムのフライシュマン、そしてカスロンのキャリアの終盤に登場したバーミンガムのジョン・バスカヴィルによるバスカヴィル体と比較すると、カスロンの活字は非常に保守的であった。ジョンソンは、彼の1764年の見本帳が「100年前に作られていてもおかしくない」と指摘している[32]。スタンレー・モリソンはカスロンの活字を「幸福な古風さ」と表現した[33]。
ヨーロッパでは広く使われなかったものの[18]、カスロン活字は大英帝国中に流通し、イギリス領北アメリカもその例外ではなかった。アメリカ独立宣言の印刷に使用されたのはその一例である[34]。ウィリアム・カスロン1世の死後、彼の活字の使用は減少したが、1840年から1880年にかけてイギリスのアーツ・アンド・クラフツ運動の一環として復活を遂げた。
通常の本文用書体に加え、カスロンはブラックレター、すなわち「ゴシック」体も彫っており、これらも彼の見本帳に印刷されていた。これらは、タイトルページ、強調、ドロップキャップなどの目的で使用された[35]。カスロンの時代にはボールド体は存在しなかったが、彼の大きいサイズの書体にはかなり太いものもある[14]。
カスロン風書体に対する批判の一つに、大文字のデザインが太すぎて目立ちすぎ、紙面に不均一な濃度を生むという懸念があった。印刷業者で書体デザイナーのフレデリック・ガウディも批判者の一人であった。「大文字の極端に太いステムと小文字の細いステムとの間の強いコントラストが……『まだらな』紙面を作る」。彼は、このスタイルへの不満が、1911年頃に代替案としてケナリー・オールドスタイルを制作し、書体デザインにより深く関わるきっかけになったと述べている[36]。
衰退
カスロンの書体は、18世紀後半になると関心を失っていった。その一因は、まずバスカヴィルのような「トランジショナル」スタイルの書体が登場したこと、そしてさらに大きな要因として、ボドニなどの印刷業者による高品質な印刷技術の影響を受け、イギリスで「ディドニ(モダン)」デザインの人気が高まったことにある[39][18][注釈 4]。彼のカスロン活字鋳造所はロンドンのチズウェル・ストリートで事業を続けたが、代替デザインや追加デザインの販売を始めた[40][41]。孫のウィリアム・カスロン3世は、ジョセフ・ジャクソンの没後彼の会社を買い取り、ソールズベリー・スクエアに競合する鋳造所を設立するため、一族から独立した[42]。ジャスティン・ハウズは、1816年以前からカスロンの書体の一部を新しいスタイルに更新しようとする試みがあった可能性を示唆している。彼は、1840年代に鋳造されたカスロンの活字に「Q、[開いた字形のイタリック]h、ſh、Q、T、Yといった、カスロン自身には馴染みのない数種類の字体が含まれており、これらは18世紀末にオールド・フェイスを時代に合わせるための控えめな試みとして彫られた可能性がある」と指摘している。さらに、「h、ſh、Tは、1816年発行の[ある書籍]に見られるが、その大部分は使い古された組置き活字で印刷されたものと思われる」と述べている[3]。
カスロンの書体がほとんど使われなくなる中でも、印刷業界における彼の名声は揺るがなかった。印刷業者であり社会改革家でもあったトーマス・カーソン・ハンサードは、1825年に次のように記している。
18世紀初頭、この国の活字鋳造家の才能は首都の印刷業者たちにほとんど評価されず、彼らはオランダから活字を輸入するのが常であった。……そして、もしウィリアム・カスロンという天才が現れ、我が国をタイポグラフィにおける劣等という不名誉から救い出さなければ、現代の印刷業者たちもいまだに輸入という不便を強いられていたかもしれない。[43]
同様に、エドワード・ブルは1842年にカスロンを「イギリス活字の偉大なる長であり父」と呼んだ[44]。
人気の復活
19世紀に入り、アーツ・アンド・クラフツ運動が興隆すると、18世紀の印刷への関心が再び高まった。その中でカスロン書体も人気を取り戻し、チズウィック・プレスなどの企業による書籍や美術印刷で用いられるようになったほか、広告などのディスプレイ用途でも使用された[45][46][47][48]。
チズウィック・プレスをはじめとする美術印刷工房は、カスロン活字鋳造所からオリジナルのカスロン活字を購入した。また、電鋳版によってこれらの字母の複製も作られた[45]。1860年代からは、ミラー・アンド・リチャード社の「モダナイズド・オールドスタイル」(1860年頃)を皮切りに、カスロンのスタイルに近い新しい書体が登場し始めた[49](ブックマン・オールドスタイルはこの書体の子孫にあたるが、オリジナルのカスロンとは大きく異なり、エックスハイトを高くして太く作られている[49])。カスロン活字鋳造所は、機械鋳造が可能なように一部のサイズをよりクリーンな新バージョンにひそかに置き換え、新しいスワッシュキャピタルも彫っている[45]。
アメリカでは「カスロン」はほとんど一つのジャンルと化し、オリジナルとは無関係な新しいデザインが数多く生まれた。それらは、アメリカの共通ライン(common line)に合わせてディセンダーを短くしたり、ライニング数字やボールド体、コンデンス体などを加えたりといった改変が施されており、多くの鋳造所が独自のバージョンを制作(多くの場合は盗用)した[50]。1920年代までには、アメリカン・タイプ・ファウンダーズ社は、名前ではなく番号で呼ばれるものもあるなど、多種多様なスタイルを提供していた[51]。キーボード操作で活字を鋳造する機械を販売していたライノタイプ、モノタイプ、インタータイプ、ラドローといったホットメタル植字の会社も、それぞれ独自のカスロンを発表した。
しかし、ブックデザイナーのヒュー・ウィリアムソンによれば、20世紀のイギリスでは、モノタイプ社やライノタイプ社からベンボ、ギャラモン、プランタン、バスカヴィル、タイムズ・ニュー・ローマンといった他のオールドスタイル書体やトランジショナル書体のリバイバル版が登場したことで、カスロンの人気は二度目の衰退期に入ったという[53]。
カスロン書体は、主に1960年代から1970年代にかけての写真植字、そしてその後のデジタル組版という新しい技術にも再び対応した。その結果、「カスロン」という名の書体は数多く存在するが、これらは「カスロン」という名称に強制力のある商標がなかったこともあり、オリジナルのデザインをさまざまな忠実度で再現したものである。
カスロンのオリジナルパンチおよび字母の多くは、カスロン社のコレクション(多くの代替文字や追加文字も含む)として現存しており、現在はイギリスのセント・ブライド図書館およびタイプ・ミュージアムのコレクションの一部となっている。カスロン社のパリ事務所であるフォンドリー・カスロンが所蔵していた複製は、ナントの印刷博物館のコレクションに移管された[54]。カスロン書体に関する学術的研究は、アルフレッド・F・ジョンソン、ハリー・カーター、ジェームズ・モズリー、ジャスティン・ハウズといった歴史家たちによって行われてきた。
活字鋳造時代の各バージョン
Caslon Old Face
H・W・カスロン&サンズ社は、カスロンのオリジナルの活字を「Caslon Old Face」として、原版(あるいは少なくとも初期)の字母から再発売した。カスロンの最後の直系子孫であるヘンリー・ウィリアム・カスロンは、1874年に自身が亡くなる直前、トーマス・ホワイト・スミスを新しい経営者として迎え入れた。事業を引き継いだスミスは、事業の継続性を装うため、息子たちに姓をカスロンに変えるよう命じた[45]。同社は「カスロン回覧」という定期刊行物を発行するなど、意欲的な販売促進プログラムを展開した。1920年代まで、ジョージ・W・ジョーンズをはじめとする一流の印刷業者による見本帳を発行し続けた[3]。
カスロンの一部の書体には、歴史主義的な印刷のためにスワッシュキャピタルなどの新しい特徴が加えられた[45][55]。1887年頃から、この書体は追加のスワッシュキャピタル付きで販売されるようになった[56]。ハウズによれば、これらは「フランソワ・ギュヨの(人気のあった22ポイントの)イタリック体(1557年頃)にかなり忠実に基づいたもの」で、「18世紀初頭までイギリスの印刷物に見られた」という[3]。1893年頃からは、書体をより均整のとれたものにし、機械鋳造可能な字母を作るために、いくつかの文字を彫り直す作業も開始した[3]。カスロンというブランド名の威光のためか、オリジナルのカスロン書体への彫り直しや修正の一部は、公には認められていなかったようである[45]。H・W・カスロン社はまた、電鋳版で作られた字母を他の印刷業者にライセンス供与したが、一部の会社は無許可で複製を作成した可能性もある[45]。
1937年、H・W・カスロン&サンズ社はスティーブンソン・ブレイク社に買収され、以降同社は社名に「カスロン活字鋳造所」の名を付した[57]。
活字鋳造機メーカーのモノタイプ社とライノタイプ社は、カスロンのオリジナル書体に基づくとされる(あるいはそう謳われた)「Caslon Old Face」を発売した。ライノタイプ社のバージョンはデジタル化され、ビットストリーム社からリリースされている[58]。
Caslon 471
Caslon 471は、アメリカン・タイプ・ファウンダーズ(ATF)社が販売した「オリジナル」のカスロン書体である[59]。ATF社はこれを「カスロン氏が1766年に残したそのままのカスロン・オールドスタイル・ローマン体およびイタリック体」と宣伝した[60]。これは、ATF社の前身企業が保有していた電鋳版から鋳造されたものと見られる[59]。トーマス・メイトランド・クリーランドは、追加のスワッシュキャピタル一式をデザインした[56]。
2022年現在、Caslon 471のデジタル版は一般に流通していない[61]。
Caslon 540
Caslon 540は、ATF社による第2のリバイバル版であり、行間を詰めて組めるようにディセンダーが短縮されている[59]。そのイタリック体は、揃いのスワッシュ活字セットとともにレトラセット社によって販売された。そのためこの書体のリバイバル版は、ローマン体なしで販売されることがある(下記参照)。特にイタリック体のアンパサンド(&)は非常に特徴的で、Caslon 540の他の文字がまったく使われていない組版においても、単独で他の書体と混植されることが多い。
Caslon 540のデジタル版リバイバルは、ビットストリーム社[62]、ライノタイプ社[63]、パラタイプ社[64]から販売されている。パラタイプ版にはキリル文字が含まれる。これらのリバイバル版はローマン体とイタリック体のみで、他のウェイトは含まれていない。ただし、これらのメーカーはCaslon Bold(すなわちCaslon 3)とそのイタリック体も別製品として販売している[65][66][67]。さらに、エルスナー+フレーク社[68]、ITC社[69]、URW社[70]は、ローマン体なしでイタリック体のみを販売している。
Caslon 3
Caslon 540をわずかに太くしたバージョンで、1905年にATF社からリリースされた[71]。Caslon 3(Caslon Boldとも呼ばれる)のデジタル版リバイバルは、ビットストリーム社[65]、ライノタイプ社[66]、パラタイプ社[67]から販売されている。パラタイプ版にはキリル文字のグリフが含まれる。
Caslon Openface
アセンダーが非常に高く、アメリカで人気を博した装飾的なオープンフェイスのセリフ書体である。その名に反してカスロンとは何の関係もない。この書体は、元はパリのペニョ鋳造所がCochinファミリーの一部として制作したフランスの書体「Le Moreau-le-Jeune」を、ATF社の支社であったバーンハート・ブラザーズ&スピンドラー社が輸入したものである[72][73][74][75]。デジタル版リバイバルは、ビットストリーム社[76]とモノタイプ社[77]から販売されている。
モノタイプ社(イギリス)
イギリスのモノタイプ社は、3種類のカスロンリバイバルを制作した[78]。
- 1903年、シリーズ20、Old Face Special
- 1906年、シリーズ45、Old Face Standard
- 1915年、シリーズ128・209、Caslon & Caslon Titling
Imprint
イギリスのモノタイプ社による、より均整のとれたカスロンの改刻版。1913年に短期間刊行された印刷業界誌『ジ・インプリント』を発行していたロンドンの出版社からの依頼で制作された[79]。エックスハイトが高く、ローマン体をより補完するイタリック体を提供することを意図していた。以来、人気を保ち続けており、モノタイプ社によってデジタル化されている[80]。
ラドロー・タイポグラフ社(アメリカ・イリノイ州シカゴ)
ラドロー社は多種多様なカスロン系の書体を保有していた。
Caslon 641
Caslon 540のヘビー(極太)版で、1966年にATF社からリリースされた。
Caslon 223と224
Caslon 223と224は、ルバーリン・スミス・カーナーズ社(LSC)、そしてITCに所属していたエド・ベンギャットによってデザインされた写真植字用の書体ファミリーである。多くのITCファミリーと同様に、これらは広告向けの派手で力強い骨格を持っており、カスロンのオリジナルの書体とはあまり関連性がない[59]。223が最初のバージョン(LSC社の番地に由来)で、その後、本文組版により適したプロポーションを持つバージョンが続き、224と番号が振られた[59]。
デジタル版のみのリリース
Adobe Caslon(1990年)
Adobe Caslonは、キャロル・トゥオンブリーがデザインした非常に人気のあるリバイバル書体である[81][13]。1734年から1770年にかけて印刷されたカスロン自身の見本帳を基にしており[82]、Adobe Originalsプログラムの一環として開発された。このフォントには、スモールキャップス、オールドスタイル数字、スワッシュ、合字、異体字、分数、上付き・下付き文字、装飾記号といった、現在の高品質なデジタルフォントでは標準的となった多くの機能が追加されている[83][84]。
Adobe Caslonは雑誌『ザ・ニューヨーカー』の本文書体として採用されているほか、バージニア大学および南カリフォルニア大学の公式書体の一つでもある[85][86]。また、アドビのTypekitプログラムでも提供されており、一部のウェイトは無料で利用できる。
Big Caslon(1994年)
マシュー・カーターが手がけたBig Caslonは、カスロン鋳造所が保有していた3つの最大サイズ活字の「ファンキーさ」に着想を得ている。これらの活字は、カスロンの本文用書体とは対照的でありながらも補完的な関係にあり、ドラマチックな太さの抑揚を持つ独特のデザインが特徴である。そのうちの一つは、元々カスロンではなくジョセフ・モクソンが製作したものと見られている[17][4]。この書体は18ポイント以上での使用を想定して設計された[87][88]。標準ウェイトはAppleのmacOSにバンドルされており、スモールキャップスや長いsのような異体字も含まれている。当初はカーター自身の会社カーター&コーンから発表されたが、2014年にはデザインを見直し、ボールドとブラックのウェイトおよびそれに合わせたイタリック体を追加して、Font Bureauから再リリースした[89][注釈 6]。雑誌『ボストン』や『ハーバード・クリムゾン』で採用されている[92]。
LTC Caslon(2005年)
LTC Caslonは、ランストン・タイプ・カンパニー(LTC)が1915年に発表した14ポイントのCaslon 337をデジタル化したものであり、この337自体もオリジナルのカスロン書体のリバイバルである[93][94]。このファミリーには、レギュラーとボールドのウェイトがあり、分数、合字、スモールキャップス(レギュラーとレギュラーイタリックのみ)、スワッシュ(レギュラーイタリックのみ)、そして中央ヨーロッパ言語の文字セットが含まれる[95]。特徴的なのは、かつての活字鋳造時代のカスロンと同様に、すべてのスタイルでディセンダーの長さを2種類から選択できる点である。長いディセンダーはより優雅なデザインを、短いディセンダーはより詰まった行間設定を可能にする。
この書体のリリースを記念して、LTCは初回販売時に、ダウンテンポ系の電子音楽ユニット「ザ・ウィリアム・カスロン・エクスペリエンス」の音楽CDと、限定版のアップライトイタリック体「LTC Caslon Remix」を特典として同梱した[96][97]。
King's Caslon(2007年)
King's Caslonは、キングス・カレッジ・ロンドンのために制作され、Dalton Maag社からリリースされたカスロンの現代版である[98]。この書体ファミリーには、本文用の2つのウェイト(レギュラーとボールド)に加え、ディスプレイ用の書体があり、それぞれにイタリック体が付随する[99]。
King's Caslonの本文用スタイルは、従来の多くのカスロン復刻版と比べてストロークのコントラストが低い。一方、ディスプレイ用スタイルは、よりコントラストが高く設計されている。
Williams Caslon Text(2010年)
ウィリアム・バークソンがカスロンの精神性を現代に再現しようと試みた書体で、本文での使用を意図して設計された[100][101]。あらゆる点で完全に忠実な復刻を目指したわけではないが、多くの点でカスロンのオリジナルの見本帳に忠実である。印刷プロセスの変化を補うため、従来の復刻版よりもウェイトは重めに設定されている。また、イタリック体の傾斜は他の多くのカスロンリリースよりも緩やかで、ストロークの角度にも変化がつけられている。バークソンは、一連の詳細な記事の中で自身のデザイン選択について解説している[102][15]。
Font Bureau社からリリースされたこの書体には、ボールド体とボールドイタリック体が含まれ、すべてのウェイトにわたって完全な機能セットを搭載している。これには、ボールドのスモールキャップスやスワッシュ付きのイタリック体代替字形、オプションの短いディセンダー、そして小文字のスワッシュをオフにし「A」の傾斜を抑えてより簡素な外観にする「モダニスト」イタリックオプションが含まれる[52][注釈 7]。現在、『ボストン』誌や『フォーリン・アフェアーズ』誌で使用されている。
カスロンの構造的な特徴として、広く張り出した「T」の字形が挙げられる。このため、後に「h」が続くと文字間隔が不自然になることがある。そこで、デジタル版ではカリグラフィーの合字の伝統に着想を得て、歴史的な活字の合字ではないものの、「Th」の合字を提供するのが新たな慣例となりつつある。これにより、より詰まった字間を実現している[103]。Adobe Caslon、LTC Caslon、Williams Caslon、Big Caslon(Font Bureau版のイタリック体のみ)はすべて「Th」合字をデフォルトまたは代替字形として提供している。King's Caslonには「Th」合字は含まれていない。
ダメージ加工されたリバイバル
カスロンのリバイバル書体には、意図的に不規則な処理を施し、金属活字の摩耗した不揃いな質感を再現した「ダメージ加工」スタイルのものが数多く存在する。
ITC Founder's Caslon(1998年)
ITC Founder's Caslonは、ジャスティン・ハウズによってデジタル化された[104]。彼はロンドンのセント・ブライド図書館の資料を活用し、ウィリアム・カスロンとその活字について徹底的な調査を行った[105]。このファミリーは、それまでのデジタルリバイバルとは異なり、異なるサイズごとに別の書体を制作するという伝統に忠実に従っている。ダメージの度合いはスタイルによって異なり、金属活字の効果を再現しているため、大きなオプティカルサイズほどクリーンな見た目になる。
このファミリーは1998年12月にITCからリリースされた[106]。オリジナルのカスロン活字に倣い、ボールド体は含まれず、数字にはすべてオールドスタイル数字が採用されている。
H・W・カスロン版
ITC Founder's Caslonのリリース後、ジャスティン・ハウズはH・W・カスロン&カンパニーの社名を復活させ、Founders Caslonの名でITC版書体の拡張版をリリースした[107][108]。
Caslon Old Faceは、8、10、12、14、18、22、24、30、36、42、48、60、72、96ポイントといった複数のオプティカルサイズを持つ書体である。各フォントにはスモールキャピタル、長いs、スワッシュ文字が含まれている。ただし96ポイントフォントはローマン体のみで、スモールキャピタルは含まれていなかった。Caslon Old Faceは2001年7月にリリースされた。
Caslon Ornamentsは、装飾的なグリフを含む書体である。
これらの書体は、以下の形式でパッケージ化されている。
- Founders Caslon Text: Caslon Old Face (8, 10, 12, 14, 18), Caslon Ornaments.[109]
- Founders Caslon Display: Caslon Old Face (22, 24, 30, 36, 42, 48, 60, 72), Caslon Ornaments.[110]
- Founders Caslon 1776: Caslon Old Face (14), Caslon Ornaments.[111] アメリカ独立宣言書で使用された活字を選抜したもの。
しかし、ジャスティン・ハウズの死後、復活したH・W・カスロン&カンパニーは廃業した。ハウズはH・W・カスロン版に関するすべての権利を、ロンドンのセント・ブライド図書館に遺贈した。
NotCaslon(1995年)
マーク・アンドレセンがデザインし、1995年にエミグレ社から発表された書体。カスロンのイタリック体を奔放にパロディ化したもので、「乾式転写レタリングの断片、すなわち剥がれや欠けなど」から採取したカスロンのサンプルを混ぜ合わせて作られた[112][113][114]。
Franklin Caslon(2006年)
2006年にP22社から発表されたこの書体は、ベンジャミン・フランクリンが1750年頃に印刷したページに基づいている。使い古されたような風合いを持つのが特徴である[115]。
Caslon Antique
もともと「Fifteenth Century」という名称だったが、後にCaslon Antiqueと改名された装飾的なセリフ書体。そのデザインに関連性が見られないこと、またカスロンという名称が後から付けられたものであることから、一般的にはカスロンファミリーの一員とはみなされていない。
注釈
- ↑ カスロンの時代の算用数字は、現在でいうテキスト数字として書かれ、小文字のように高さが可変であった。
- ↑ モズリーは、カスロン作ではない他の書体としてサマリア文字とシリア文字を挙げており、「スモール・パイカNo. 1の小文字が……初期の試作でない限り、カスロンの作であるとは考えにくい。この書体は1742年に差し替えられており、このように破棄された唯一のローマン体である」と述べている[18]。この見本帳の組版後、カスロンはさらに「パイカNo. 2」とパールサイズを彫った[1]。
- ↑ 「エルゼビア」とは、印刷業者エルゼビア家が用いた小型活字を意味する、やや漠然とした用語である。モズリーは、エルゼビア家が数世紀前にパリで彫られた活字をしばしば使用していたことから、実際にはこの用語は特定の彫金師の作品というよりは「鮮明で質の高い印刷物」を意味していたと結論づけている[30]。
- ↑ フライ活字鋳造所は、明らかに商機を見出し、18世紀後半にジョン・バスカヴィルの書体の模倣品を販売する事業を立ち上げた。しかし、保守的なイギリスの印刷業者の間ではカスロンが好まれたため、この試みは不首尾に終わったようである。そこで、フライ鋳造所はカスロンの書体の模倣品も発行し始め、「かの有名な創設者のものと区別がつかないほどの精度」を謳った[37]。
- ↑ ただし、バスカヴィル風のQや開いたイタリック体の「h」など、18世紀後半のスタイルを持ついくつかの代替活字が含まれている点に注意が必要である。ジャスティン・ハウズは、これらがカスロン書体を新しいスタイルへと近代化しようとする試みであったと示唆している[3]。
- ↑ なお、現代のフォントファミリーであるQuarto(Hoefler & Frere-Jones社)は、カスロンの大きいサイズの書体に影響を与えたオランダのディスプレイ書体を巧みにリバイバルしたものであり、そのためBig Caslonと非常によく似ている[90][91]。
- ↑ これは、ジル・ピチョッタが制作したまったく別の「Caslon FB」と混同してはならない。Caslon FBは、アメリカの新聞見出しで使われたボールド・コンデンス系のカスロン風書体に影響を受けたものである[50]。
脚注
- 1 2 Mosley, James (1967). “The Early Career of William Caslon”. Journal of the Printing Historical Society: 66–81.
- ↑ Carter, Harry (1965). “Caslon Punches: An Interim Note”. Journal of the Printing Historical Society 3: 68–70.
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In about 1770 the Fry foundry, whose first types in the 1760s were what they called an ‘improvement’ of Baskerville’s, had also made an imitation of the smaller sizes of the Caslon Old Face types – a very close copy that is not easy to tell from the original. In 1907 Stephenson, Blake had recast this Caslon look-alike from original matrices and began to sell it under the name of Georgian Old Face.
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初期の史料
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- John Nicols, Biographical and Literary Anecdotes of William Bowyer, 1782
- John Nicols, Literary Anecdotes, 1812–1815
以下の著者2名は、記述全体を上記3件の資料に基づいている。
- Talbot Baines Reed, A History of Old English Letter Foundries, 1897
- Daniel Berkeley Updike, Printing types, their History, forms and use, 1937
関連文献
- Conseguera, David, Classic Typefaces: American Type and Type Designers, Skyhorse: 2011 ISBN 9781621535829.
- Lawson, Alexander S., Anatomy of a Typeface. Godine: 1990. ISBN 978-0-87923-333-4.
- Meggs, Phillip B, McKelvey, Roy. Revival of the Fittest: Digital Versions of Classic Typefaces. RC Publications, Inc.2000. ISBN 1-883915-08-2
- Updike, Daniel Berkeley. Printing Types: Their History, Forms, and Use. Dover Publications, Inc.: 1980. ISBN 0-486-23929-2
外部リンク
- Fonts in Use(特定バージョンの使用例はサブページを参照)
オンラインで閲覧可能な見本帳
- ウィリアム・カスロン2世が継承した、元祖カスロン社の見本帳: Specimen of 1785(1785年の見本帳、ウィリアム・カスロン3世発行)
- ウィリアム・カスロン3世が設立した分社の見本帳: Specimen of 1798(1798年の見本帳。ローマン体とイタリック体はまったく異なるトランジショナルおよびモダン様式のデザインだが、リードによればエキゾチック体(装飾書体)の大半は元のカスロン活字鋳造所から入手したものとみられる)
- H.W. Caslon & Co. Ltd., specimen book, 1915.(H・W・カスロン社 1915年見本帳) - 20世紀のカスロン社の最盛期のもので、多数の組見本を収録。
- 1924年発行のカスロン活字鋳造所の後期見本シート: 表紙[リンク切れ] 、内側。『コマーシャル・アート』誌の付録。ジョージ・W・ジョーンズによる1924年のカスロン見本帳も同様の内容。
- American Type Founders, 1912 Specimen Book. (アメリカン・タイプ・ファウンダーズ社 1912年見本帳) - 116 - 123ページおよび314 - 353ページにカスロンの見本を収録。
- American Type Founders, 1923 Specimen Book(アメリカン・タイプ・ファウンダーズ社 1923年見本帳): 全デジタル化版、分冊版(不完全)。アメリカでリリースされたカスロンの多くの例や、フルカラー印刷による組見本を多数収録。
- 1953 article by Eugene Pattenburg in Print magazine - ユージーン・パッテンバーグによる1953年の『プリント』誌の記事。当時の広告におけるカスロンの人気について論じている。多数の組見本を掲載。
- Caslonのページへのリンク