Apple A20 Pro
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/10 09:48 UTC 版)
| 設計者 | Apple |
|---|---|
| 生産者 | TSMC[1] |
| アーキテクチャ | AArch64 |
| コア数 | A20 Pro: 6コア(スーパーコア ×2、高効率コア ×4) |
| 前世代プロセッサ | Apple A19 / A19 Pro |
| GPU | Appleデザイン A20 Pro: 7コアGPU(Neural Accelerators搭載) |
| コプロセッサ | A20 Pro: デュアル16コアNeural Engine(合計32コア) |
Apple A20 Pro(アップル エートゥエンティ プロ)は、Appleが設計したAppleシリコンのAシリーズに属する、64ビットARMアーキテクチャのシステム・オン・チップ(SoC)である。2026年9月9日にiPhone 18 Pro、iPhone 18 Pro MaxおよびiPhone Duo向けのプロセッサとして発表された[2][3]。Apple A19 Proの後継にあたる。
一方、標準モデルのApple A20については、2027年春に登場するとみられるiPhone 18およびiPhone 18eへの搭載が複数の報道で予測されているが[4]、2026年9月10日時点ではAppleから正式発表されていない。このため、本項におけるA20の仕様は、正式発表されるまで未確定である。
A20 Proは、iPhone向けAppleシリコンとして初めて2 nmプロセスを採用したチップである[2][1]。Appleシリコン全体では、同年8月25日に発表されたM6がApple初の2 nmプロセス採用チップであり、A20 Proはこれに続く2 nm世代のAppleシリコンとなった[5]。
開発と発表
A20世代のプロセッサについては正式発表以前から、Appleが従来の3 nm世代から2 nm世代の製造プロセスへ移行すると報じられていた。2025年には、A20およびA20 ProがTSMCの2 nmプロセスを採用するとの予測が報じられ、A17 ProからA19 Proまで続いた3 nm世代からの大幅な製造プロセス変更になるとみられていた[6]。
2026年6月には、A20 Proを搭載するとされるiPhone 18 Proのロジックボードの画像が流出したと報じられた。画像からは、従来のAシリーズで用いられてきたようなメモリをプロセッサ上に重ねる構造ではなく、ロジックダイとメモリを横方向に配置する新しいパッケージングが採用されている可能性が指摘された[7]。
同年9月3日、TrendForceはA20 ProがTSMCのN2プロセスおよびWafer-Level Multi-Chip Module(WMCM)と呼ばれるパッケージング技術を採用するとの見通しを示した[8]。
9月9日、AppleはiPhone 18 Pro、iPhone 18 Pro MaxおよびiPhone DuoとともにA20 Proを正式発表した[2][3]。正式発表では2 nmプロセス、新しい6コアCPU、7コアGPU、デュアル16コアNeural Engine、メモリ帯域幅の拡大、Mシリーズから着想を得た新しいパッケージングなどが明らかにされた[2]。
デザイン
製造プロセス
A20 Proは、Appleが「最新の2ナノメートルプロセステクノロジー」と呼ぶ製造プロセスを採用している[2]。Appleは製品発表資料において製造委託先やプロセスノードの固有名称を公表していないが、半導体市場調査会社TrendForceなどはTSMCのN2プロセスによって製造されると報じている[1]。
TSMCのN2は、従来のFinFETからナノシート型ゲートオールアラウンド(GAA)トランジスタへ移行したプロセスである。TSMCはN2について、N3Eと比較した場合、同一消費電力で10 - 15%の速度向上、または同一速度で25 - 30%の消費電力削減を実現するとしている[9]。これらはN2プロセス自体についてTSMCが示した一般的な数値であり、A20 Pro単体の性能向上率を示すものではない。
Appleにおける2 nmプロセスへの移行はA20 Proが最初ではなく、2026年8月25日に発表されたM6がApple初の2 nmプロセス採用チップである[5]。A20 ProはiPhoneおよびAシリーズ向けとして初の2 nmプロセス採用チップとなる[2][1]。
CPU
A20 Proは、2基の「スーパーコア」と4基の高効率コアから構成される6コアCPUを搭載する[10]。AppleがAシリーズのCPUコアについて「スーパーコア」の名称を用いるのは、M6など同世代のAppleシリコンで導入されたCPU設計と共通する特徴である[5]。
Appleによれば、A20 Proの6コアCPUはA19 Proより最大20%高速である[3]。Appleは発表時にA20 ProのCPUをスマートフォン向けとして最速と説明したが[3]、これはAppleによる公称値・比較であり、独立機関による実機ベンチマークとは異なる。
2026年9月10日時点で、AppleはA20 ProのCPU動作周波数、各コアのキャッシュ容量、ダイ面積、トランジスタ数などを公表していない。
GPU
A20 ProはAppleが設計した7コアGPUを搭載し、各種AI演算を高速化するNeural Acceleratorsを備える[10]。ハードウェアアクセラレーテッドレイトレーシングにも対応する[10]。
Appleによれば、7コアGPUのグラフィックス性能はA19 Proと比較して最大40%高速化しており、電力効率も向上している[2][3]。A19 Proの上位構成が6コアGPUであったのに対し、A20 ProではGPUコア数自体も7コアへ増加した。
A20 ProではNeural Acceleratorsも更新され、8ビット浮動小数点演算(FP8)の処理性能が前世代の2倍になったと報じられている[11][12]。FP8の高速化は、端末上で動作する大規模言語モデルなど、低精度浮動小数点演算を利用するAIワークロードを主な対象としている[12]。
Neural Engine
A20 Proは2基の16コアNeural Engineからなる「デュアル16コアNeural Engine」を搭載し、合計32コアを備える[2][10]。
前世代のA19 Proでは16コアのNeural Engineを1基搭載していたのに対し、A20 ProではNeural Engineそのものが2基構成となった。Appleによれば、これによりAIの演算能力はA19 Proの2倍となり、オンデバイスAIモデルやコンピュテーショナルフォトグラフィーなどの処理を高速化する[2]。
同じ2 nm世代のM6もデュアル16コアNeural Engineを搭載しており、A20 ProとM6では、AI演算部を32コア構成へ拡張するという共通した設計上の方向性がみられる[5]。
AppleはA20 Proについて、Neural Engine全体の演算能力をTOPS(1秒あたりの兆回演算)による絶対値では公表していない。このため、外部資料で示される推定TOPS値はAppleの公式仕様ではない。
メモリ
A20 Proでは、A19 Proと比較してユニファイドメモリの帯域幅が50%拡大された[2][3]。Appleはこれを、オンデバイスAIや負荷の高いグラフィックス処理などに対応するための主要な改良点の一つとしている。
AppleはA20 Pro発表時点で、搭載されるDRAMの容量、規格、動作速度、メモリバス幅、絶対的なメモリ帯域幅を公表していない。発表前にはLPDDR6や96ビット幅のメモリインターフェースを採用するとの情報も報じられたが[7]、これらについてAppleによる正式な確認は行われていない。
パッケージング
A20 Proでは、MシリーズのAppleシリコンから着想を得た新しいパッケージングが導入された[2]。従来のAシリーズではDRAMをSoCの上部に重ねるパッケージが広く用いられてきたのに対し、A20 Proではシリコンダイとメモリを横方向に並べて配置する[2]。
この構造により、メモリがプロセッサから冷却機構へ向かう熱経路から外れ、A20 Proのシリコンダイを端末のベイパーチャンバーへより直接的に接続できるようになった[2]。Appleはパッケージング変更を、ピーク性能そのものだけでなく高負荷状態での持続性能を改善するための設計として説明している。
発表前には、この方式についてTSMCのWafer-Level Multi-Chip Module(WMCM)技術を採用するとの報道があった[8][7]。正式発表においてAppleは「WMCM」という名称を使用していないものの、実際にシリコンダイとメモリを横並びに配置する構造を採用したことを明らかにした[2]。
ディスプレイエンジン
iPhone Duoに搭載されるA20 Proには、内側と外側の2つのディスプレイを同時に駆動する新しいディスプレイエンジンが用いられている[3]。Appleによれば、これによりiPhone Duoを開閉した際に、内外のディスプレイ間でコンテンツを連続的に移行させることができる[3]。
AppleはiPhone Duoについて、iPhone 18 Proモデルと「同じA20 Pro」を搭載すると説明している[3]。一方、ディスプレイエンジンの詳細な構成や、iPhone 18 Pro向けA20 Proとのハードウェア上の差異の有無については公表していない。
熱設計と持続性能
A20 Proではパッケージングそのものが端末の冷却システムと連係するよう設計されている[2]。
iPhone 18 ProおよびiPhone 18 Pro Maxでは、A20 Proを次世代のベイパーチャンバーへ接続する設計が採用された。ベイパーチャンバーはiPhone 17 Pro世代と比較して表面積が3倍となり、新しい熱伝導材料と組み合わせることで放熱能力を高めている[2]。
Appleによれば、A20 Proと新しい冷却システムを組み合わせたiPhone 18 Proシリーズは、iPhone 17 Proと比較して最大40%高い持続性能を実現する[2]。これはA20 Pro単体のピーク性能ではなく、SoCのパッケージングと端末側の冷却システムを含めた性能値である。
iPhone Duoでも、A20 Proを専用のベイパーチャンバーへ直接接続する熱管理システムを採用している。Appleによれば、iPhone 17 Proと比較して最大35%高い持続性能を実現する[3]。また、折りたたみ端末であるiPhone Duoでは、ハイフレームレートのゲームや複数アプリによるマルチタスキングなどを長時間処理することが熱設計上の主な用途として挙げられている[3]。
性能
A20 ProについてAppleが発表したA19 Pro世代との主な性能比較は以下の通りである。いずれもAppleによる公称値であり、測定条件によって実際の性能差は異なる。
| 項目 | A20 Pro | A19 Pro比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| CPU | 6コア スーパーコア ×2 高効率コア ×4 |
最大20%高速 | Appleによる公称値[3] |
| GPU | 7コア | 最大40%高速 | Neural Acceleratorsを搭載[2] |
| Neural Engine | 16コア ×2 合計32コア |
演算能力2倍 | オンデバイスAIおよびコンピュテーショナルフォトグラフィー向け[2] |
| Neural Accelerators | FP8演算を強化 | FP8演算性能2倍 | 発表を報じた技術媒体による[11][12] |
| ユニファイドメモリ帯域幅 | 絶対値非公表 | 50%増加 | メモリ規格・バス幅は非公表[2] |
| 持続性能 (iPhone 18 Pro) |
A20 Pro+次世代ベイパーチャンバー | iPhone 17 Pro比 最大40%向上 | SoC単体ではなく端末全体の公称値[2] |
| 持続性能 (iPhone Duo) |
A20 Pro+専用ベイパーチャンバー | iPhone 17 Pro比 最大35%向上 | SoC単体ではなく端末全体の公称値[3] |
Apple A20
標準モデルのApple A20については、A20 Proの正式発表時点ではAppleから発表されていない。
Appleは2026年9月の新製品発表において、iPhone 18 Pro、iPhone 18 Pro MaxおよびiPhone Duoを発表した一方、通常モデルのiPhone 18は発表しなかった。複数の報道では、AppleがiPhoneの発売時期を分割し、iPhone 18およびiPhone 18eを2027年春に投入すると予測されている[4][13]。
これらの報道では、iPhone 18およびiPhone 18eに標準版のA20が搭載されるとされている[4]。A20についてもTSMCの2 nmプロセスを採用すると予測されているが[6]、CPUおよびGPUのコア数、Neural Engine、クロック周波数、メモリ帯域幅などの具体的な仕様はAppleから公表されていない。
また、A20搭載機種のメモリ容量についてはアナリスト間でも予測が一致しておらず、iPhone 18とiPhone 18eが9GBのDRAMを搭載するとの予測がある一方[4]、iPhone 18について12GBになるとの別の予測も報じられている[14]。このため、これらは正式仕様ではなく発表前情報として扱う必要がある。
搭載製品
A20
2026年9月10日時点で正式に発表された搭載製品はない。
報道では以下の製品への搭載が予測されているが、Appleによる正式発表は行われていない[4][13]。
- iPhone 18
- iPhone 18e
A20 Pro
- iPhone 18 Pro[2]
- iPhone 18 Pro Max[2]
- iPhone Duo[3]
iPhone 18 ProおよびiPhone 18 Pro Maxは2026年9月9日に発表され、同月18日から販売開始予定とされた[2]。iPhone Duoも同日に発表され、同年10月23日から販売開始予定とされた[3]。
技術仕様
2026年9月10日時点で公表または確認されている仕様は以下の通りである。
| 仕様 | A20 | A20 Pro |
|---|---|---|
| 発表 | 未発表 | 2026年9月9日[2] |
| 製造プロセス | 2 nmと予測[6] | 2 nm[2] |
| 製造元 | TSMCと予測 | TSMCと報道[1] |
| プロセス | TSMC N2と予測 | TSMC N2と報道[1] |
| CPU | 未発表 | 6コア スーパーコア ×2 高効率コア ×4[10] |
| CPUクロック | 未発表 | 非公表 |
| GPU | 未発表 | Appleデザイン7コアGPU[10] |
| Neural Accelerators | 未発表 | 搭載[10] |
| ハードウェアレイトレーシング | 未発表 | 対応[10] |
| Neural Engine | 未発表 | デュアル16コア 合計32コア[10] |
| メモリ帯域幅 | 未発表 | A19 Pro比50%増[2] |
| メモリ規格 | 未発表 | 非公表 |
| メモリバス幅 | 未発表 | 非公表 |
| キャッシュ容量 | 未発表 | 非公表 |
| トランジスタ数 | 未発表 | 非公表 |
| ダイ面積 | 未発表 | 非公表 |
| パッケージング | 未発表 | シリコンダイとメモリを横並びに配置する新設計[2] |
| 前世代 | Apple A19 | Apple A19 Pro |
| 搭載製品 | 未発表 | iPhone 18 Pro iPhone 18 Pro Max iPhone Duo |
関連項目
脚注
- 1 2 3 4 5 6 “Inside the iPhone 18 Pro and Duo: A20 Pro Debuts as Apple's First 2nm Chip in an iPhone; Duo Trades RAM for Storage” (英語). TrendForce (2026年9月10日). 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 “Apple、iPhone 18 ProとiPhone 18 Pro Maxを発表”. Apple (2026年9月9日). 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 “Apple、iPhone Duoを発表”. Apple (2026年9月9日). 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 3 4 5 Clover, Juli (2026年6月26日). “2027 iPhone 18 and iPhone 18e to Get 9GB RAM and A20 Chip” (英語). MacRumors. 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 3 4 “Apple、パフォーマンスとAI演算の大幅な向上をもたらすM6とM5 Ultraを発表”. Apple (2026年8月25日). 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 3 “A20 and A20 Pro Chips (2nm) Expected to Debut in These iPhone Models” (英語). MacRumors (2025年10月23日). 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 3 Hardwick, Tim (2026年6月29日). “Leaked A20 Pro Image Hints at iPhone 18 Pro Performance Gains” (英語). MacRumors. 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 “Memory Costs Drive Up iPhone 18 Series BOM; AI and Pricing to Shape Upgrade Demand, Says TrendForce” (英語). TrendForce (2026年9月3日). 2026年9月10日閲覧。
- ↑ “TSMC FINFLEX™, N2 Process Innovations Debut at 2022 North American Technology Symposium” (英語). Taiwan Semiconductor Manufacturing Company (2022年6月16日). 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 “iPhone 18 ProとiPhone 18 Pro Max - 仕様”. Apple. 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 Charlton, Hartley (2026年9月9日). “Apple Unveils A20 Pro as First 2nm Smartphone Chip” (英語). MacRumors. 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 3 Mendes, Marcus (2026年9月9日). “Apple announces A20 Pro chip with 2nm design and major performance gains” (英語). 9to5Mac. 2026年9月10日閲覧。
- 1 2 “iPhone 18: Rumors and Release Date” (英語). MacRumors (2026年8月28日). 2026年9月10日閲覧。
- ↑ Hardwick, Tim (2026年8月13日). “Base iPhone 18 Tipped to Get These Two Pro-Level Upgrades” (英語). MacRumors. 2026年9月10日閲覧。
- Apple A20 Proのページへのリンク