求人広告 日本の法律での取り扱い

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求人広告

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/17 23:52 UTC 版)

日本の法律での取り扱い

概要

職業安定法において、厚生労働大臣の許可を得ず就職・転職の斡旋をおこなう行為、または許可されている範疇外の斡旋は紹介行為にあたるため、職業安定法64条(1年以下の懲役又は100万円以下)の罰則に該当する。

しかし(厚生)労働省はリクルート事件前後に大きく省内の指導要領を変更し、従前では違法行為としてきた行為を推認するようになった。現在では職業安定法の条文に全く記載のない職業紹介の区分の基準とされる定義をつかい職安法の条文にはない指導をしている[4]。これらの基準にあてはまらないものは職業斡旋ではないというのが厚生労働省の公式な立場ではあるが、立法によらない行政による監督・指導は民主的ではなく、ILO条約批准により立法制約があることを考慮においても法治国家の体裁さえないとの批判がある。

職業紹介事業の許可制の趣旨と求人広告の矛盾

手数料を受け取って職業紹介を行う有料職業紹介事業は職業安定法と労働基準法により、中間搾取を防止するため禁止されており、職業の斡旋行為は原則として禁止されるものである。しかし需給機能を強化するため、日本が批准しているILO条約の関係号に則り、適正な事業運営(資本要件、紹介責任者の配置)、個人情報の管理(事務所要件)、求人情報の正確性、公共職業安定所の機能保全などを前提条件として厚生労働大臣による営業許可を得る(中間搾取の禁止から除外)ことができるものとしている。[4]労働者需給機能についてILOは

労働者保護策としては、団結権・団体交渉権の確保、機会均等・均等待遇、労働者の個人データの保護、一定の例外を除き労働者からの費用徴収の禁止、移民労働者の保護、児童労働の使用禁止、労働者の苦情等の調査などのための機構・手続きの確保 — 1997年の民間職業仲介事業所条約(第181号) ILO駐日事務所[1]

としており、職業紹介業が中間搾取違反の除外となる要件として労働者保護を上げている。また職業の斡旋には国内法で規制することを第3条で義務付けている。

1民間職業仲介事業所の法的地位については、国内法及び国内慣行に従い並びに最も代表的な使用者団体及び労働者団体と協議した上で決定する。2加盟国は、許可又は認可の制度により、民間職業仲介事業所の運営を規律する条件を決定する。ただし、そのような条件が適当な国内法及び国内慣行によって別途規制され又は決定されている場合は、この限りでない。 — ILO第181号条文[5]

第4条では労働者の募集時に団体交渉権などを阻害しないように、いわゆる職業紹介行為をする事業者に対し規制を設けることとしている。

加盟国は、第一条に規定するサービスを提供する民間職業仲介事業所によって募集された労働者が結社の自由の権利及び団体交渉権を否定されないことを確保するための措置をとる。 — ILO第181号条文[5]

しかし労働紛争中や労働問題如何に係わらず募集ができる求人広告により、労働者保護は有名無実化しており、本来公共職業安定所が果たすべき機能をILO条文の第3条に則った国内法または慣行によって規制されていない業種の求人広告が代行する形をとっている。また求人広告業者は第4条の団体交渉権についても規制を受けていない。

リクルート事件に発展した求人広告の規制強化方針とその影響

現行法では求人情報・求職者情報提供が職業安定法第4条第1項に規定する「職業紹介」に該当する蓋然性がある。[4]昭和58年の労働省の違法取締り強化を受けて、リクルート事件が発生し、当時の労働省のトップである事務次官が逮捕されるまでになり、朝日新聞の報道では事件の全貌を

焦点となったのは、職業安定法改正問題。労働省は58年9月ごろから、就職情報誌の規制強化を目指した職業安定法改正を検討、江副被告らは、これに危機感を持ち、59年1月、社内に法改正に反対するプロジェクトチームを設置した。とくに、法改正を担当していた労働省職業安定局業務指導課にマトを絞り、課長の鹿野茂被告(56)らに接待攻勢をかけた。これと並行して、職業安定局長だった元労働事務次官加藤孝被告(59)には、江副被告や、元リクルート事業部長辰已雅朗被告(47)らが接触した。結局、就職情報誌に対する法規制は見送られ、業界の自主規制にまかされることになった。加藤被告はその後、労働事務次官に就任した。 — 朝日新聞 1989年06月13日

としている。

労働省からの逮捕者は

  1. 鹿野茂(元労働省職安局業務指導課長、収賄)
  2. 加藤孝(元労働事務次官、収賄) 

が出ている。皮肉なことに、事件の余波として収賄は立件されたが、取り締まり強化は実現しなかった。


注釈

  1. ^ 求人情報サイトにおけるスカウト機能について厚生労働省は判断を示していない。
  2. ^ 一部の求人情報サイトは、パート、派遣、正規社員などの特定の契約形態を探す労働者のみを対象としたり、看護師、薬剤師、医師など特定の資格保持者のみを対象としたり、医療、食品、情報通信業界、製造、メディア、製薬、小売などの特定業界を対象とするなど、「不特定多数」の定義には厳密には該当していない。

出典



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