ガスクロマトグラフィー 保持時間、相対保持比、保持指標

ガスクロマトグラフィー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 23:27 UTC 版)

保持時間、相対保持比、保持指標

3種類の物質を分析した場合の典型的な例。横軸が保持時間(retention time)、縦軸が検出電圧。三角形部(厳密には正規分布しているが)の面積が検出された物質の量となる。ピークが重なったり余りにもなだらかな曲線を描いた場合はデータの精度が悪くなるため、分析パラメータを見直す必要がある

サンプルの注入からある化合物が検出器で検出されるまでに掛かる時間をその化合物の保持時間(retention time, しばしばRTと略される)という。 そして保持時間からまったく固定相に吸着されない物質が溶出するまでの時間(デッドタイム、空気の保持時間で近似される)を引いたものは空間補正保持時間と呼ばれる。 一定温度で測定したクロマトグラムにおいては、2種類の物質の空間補正保持時間の比は温度やキャリヤーガスの種類や流量によってはほとんど変化せず、固定相の種類のみによって決まる一定の値となる。 この値を相対保持比という。

直鎖のアルカンにおいて、あるアルカンを基準とした炭素数 n のアルカンの相対保持比 αn の常用対数は炭素数 n の一次関数となる。 すなわち log αn = an + b。 この式を変形し x = 100(log αn - b)/a = 100n、すなわち x の値が炭素数の100倍となるように相対保持比を規格化できる。 この式をアルカン以外の化合物にも適用する。 ある化合物のあるアルカンを基準とした相対保持比 αn を測定し、それを他のアルカンの相対保持比から求めた a, b を使用した上記の式に代入する。 このとき、この x の値をその化合物の保持指標(Retention Index, しばしばRIと略される)、あるいは提唱者の名前を取ってコヴァッツ・インデックス(Kovats Index, しばしばKIと略される)という。 相対保持比と同様に保持指標も固定相の種類のみによって決まるため、化合物の同定や保持時間の推定に使用される。

近年では、アジレント・テクノロジー社製ガスクロマトグラフのように、電子制御でキャリヤーガスをコントロールすることにより保持時間を固定する技術も開発されている。


  1. ^ a b c d e f g h i j 小森亨一「ガスクロマトグラフィー」『色材協会誌』第78巻第8号、色材協会、2005年、 377-383頁、 doi:10.4011/shikizai1937.78.377
  2. ^ 信和化工株式会社製 Shinwasorb; 多孔質シリカ担体
  3. ^ フロンティア・ラボ株式会社製 Ultra ALLOY® キャピラリーカラム
  4. ^ 中川勝博、田中幸樹、松田恵介「ガスクロマトグラフィー/質量分析法」『色材協会誌』第78巻第8号、色材協会、2005年、 384-388頁、 doi:10.4011/shikizai1937.78.384


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