サイバー・ユートピアニズム

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サイバー・ユートピアニズム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2023/05/08 03:50 UTC 版)

サイバー・ユートピアニズム(ウェブ・ユートピアニズム、デジタル・ユートピアニズム、ユートピア・インターネット)は、テクノ・ユートピアニズムの下位分類である。オンラインでのコミュニケーションが、さらなる分散化や民主化、あるいはリバタリアン的社会の創造に役立つという信条を持つ。^[1][2][3][4]その目標は、プライバシーと匿名性の保証や、言論の自由、文化や情報へのアクセスの確保でもある。また、デジタル社会主義を導く社会主義の理想とも通底する。^[5][6]

五つ星運動のようなサイバー・ポピュリストは、情報技術と結びついた新奇なものを、デジタル・サブライムとして政治的展望の発展に利用している。^[7]

起源

カリフォルニア・イデオロギーは、1960年代のカウンターカルチャーに由来する、ボヘミアンと反権威主義的姿勢が結合した思想体系である。このイデオロギーは、テクノ・ユートピアニズムと新自由主義的経済政策への支持を包含している。^[8]これらの思想は、一部の人に、シリコンバレーのIT産業や1990年代のインターネット・バブルの間のアメリカ西海岸に特徴づけられると考えられてきた。^[9]アダム・カーティスはこの思想をアイン・ランドのオブジェクティビズム哲学に結び付けた。インターネットパイオニアの最初の世代は、このデジタル・ユートピアニズムのイデオロギーに刺激を受けていた。^[10]

用例

政治的用法

情報技術とユートピアニズムを結び付ける初期のアイデアの一つに、チリのサイバーシン計画があった。^[11]サイバーシン計画は、社会主義の理想を実現するために、アルゴリズム制統治を行うという計画だった。Towards a New Socialismという本では、デジタル社会主義をユートピアとみなす発想に対して反論がなされた。^[12]デジタル社会主義は現実的ユートピア計画の一つとしてカテゴライズされ得る。^[13]

サイバー社会主義は、知的財産権の侵害としてのファイル共有の慣行に対して用いられた名前であり、その合法性やユートピア性は期待されていない。^[14][15]

サイバー・ユートピアニズムはサイバー・ポピュリズムの基盤となっている。海賊党によって提案され実行されているE-デモクラシーは、サイバー・ユートピアニズムに影響を受けた思想と見なされている。^[16] イタリアでは、五つ星運動がサイバー・ユートピアのレトリックを大々的に利用しており、直接民主制やWebを介した環境規制を公約に掲げている。^[17]

関連するユートピア

サイバー・ユートピアニズムは、エクストロピー主義の派生物だと考えられてきた。^[18] エクストロピー主義は、その究極の目標を人間意識のインターネットへのアップロードとしている。レイ・カーツワイルは、特に『スピリチュアル・マシーン コンピューターに魂が宿るとき』で、シンギュラリティとして知られるサイバー・ユートピアニズムの形態について述べた。その中では、技術の進歩は、極めて速いため、生活は、経験的に異なり、理解できない高度なものになっていくと述べた。^[19]

おもてなし交換サービス

おもてなし交換サービス(HospEx)は、ホストが無料でホームステイを提供できるSNSである。これは贈与経済であり、利他主義によって形成されるものである。よって、サイバー・ユートピアニズムの一例とされている。

出典

1. ^ Natale, Simone; Ballatore, Andrea (1 January 2014). “The web will kill them all: new media, digital utopia, and political struggle in the Italian 5-Star Movement” (英語). Media, Culture & Society 36 (1): 105–121. doi:10.1177/0163443713511902. ISSN 0163-4437. https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0163443713511902 2021年8月8日閲覧。. 
2. ^ Flichy, Patrice (2007) (英語). The Internet Imaginaire. The MIT Press. ISBN 9780262062619. https://mitpress.mit.edu/books/internet-imaginaire 2021年8月8日閲覧。 
3. ^ Vaidhyanathan, Siva (2012) (英語). The Googlization of Everything. ucpress. ISBN 9780520272897. https://www.ucpress.edu/book/9780520272897/the-googlization-of-everything 2021年8月8日閲覧。 
4. ^ Fuchs, Christian (13 January 2020). “The Utopian Internet, Computing, Communication, and Concrete Utopias: Reading William Morris, Peter Kropotkin, Ursula K. Le Guin, and P.M. in the Light of Digital Socialism”. TripleC: Communication, Capitalism & Critique 18 (1): 146–186. doi:10.31269/triplec.v18i1.1143. ISSN 1726-670X. https://www.triple-c.at/index.php/tripleC/article/view/1143 2021年8月22日閲覧。. 
5. ^ Fuchs, Christian (13 January 2020). “The Utopian Internet, Computing, Communication, and Concrete Utopias: Reading William Morris, Peter Kropotkin, Ursula K. Le Guin, and P.M. in the Light of Digital Socialism”. TripleC: Communication, Capitalism & Critique 18 (1): 146–186. doi:10.31269/triplec.v18i1.1143. ISSN 1726-670X. https://www.triple-c.at/index.php/tripleC/article/view/1143 2021年8月22日閲覧。. 
6. ^ Burkart, Patrick (2014) (英語). Pirate Politics. The MIT Press. ISBN 9780262026949. JSTOR j.ctt9qf640. https://www.jstor.org/stable/j.ctt9qf640 2021年8月22日閲覧。 
7. ^ Natale, Simone; Ballatore, Andrea (1 January 2014). “The web will kill them all: new media, digital utopia, and political struggle in the Italian 5-Star Movement” (英語). Media, Culture & Society 36 (1): 105–121. doi:10.1177/0163443713511902. ISSN 0163-4437. https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0163443713511902 2021年8月8日閲覧。. 
8. ^ Turner, Fred (2008-05-15). From Counterculture to Cyberculture: Stewart Brand, the Whole Earth Network, and the Rise of Digital Utopianism. Chicago, Ill.: University Of Chicago Press. ISBN 9780226817422 
9. ^ “The Californian Ideology”. Imaginary Futures. 2014年4月27日閲覧。
10. ^ J.M Reagle jr, Good Faith Collaboration (2010) p. 162
11. ^ Staun, Harald. “Post-kapitalistische Ökonomie: Wann kommt der digitale Sozialismus?” (ドイツ語). FAZ.NET. https://www.faz.net/aktuell/feuilleton/debatten/wann-kommt-der-digitale-sozialismus-17317735.html 2021年8月22日閲覧。 
12. ^ “Towards a New Socialism”. ricardo.ecn.wfu.edu. 2020年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月13日閲覧。
13. ^ Cox, Christopher M. (13 January 2020). “Rising With the Robots: Towards a Human-Machine Autonomy for Digital Socialism”. TripleC: Communication, Capitalism & Critique 18 (1): 67–83. doi:10.31269/triplec.v18i1.1139. ISSN 1726-670X. https://triple-c.at/index.php/tripleC/article/view/1139 2021年12月28日閲覧。. 
14. ^ Filby, Michael (2011). “Regulating File Sharing: Open Regulations for an Open Internet”. Journal of International Commercial Law and Technology 6: 207. https://heinonline.org/HOL/LandingPage?handle=hein.journals/jcolate6&div=24&id=&page= 2021年12月28日閲覧。. 
15. ^ Filby, Michael (1 January 2008). “Together in electric dreams: cyber socialism, utopia and the creative commons”. International Journal of Private Law 1 (1–2): 94–109. doi:10.1504/IJPL.2008.019435. ISSN 1753-6235. https://www.inderscienceonline.com/doi/abs/10.1504/IJPL.2008.019435 2021年12月28日閲覧。. 
16. ^ Khutkyy, Dmytro (July 2019). “Pirate Parties : The Social Movements of Electronic Democracy”. Journal of Comparative Politics. ISSN 1337-7477. https://helda.helsinki.fi/handle/10138/311499 2021年8月22日閲覧。. 
17. ^ Natale, Simone; Ballatore, Andrea (1 January 2014). “The web will kill them all: new media, digital utopia, and political struggle in the Italian 5-Star Movement” (英語). Media, Culture & Society 36 (1): 105–121. doi:10.1177/0163443713511902. ISSN 0163-4437. https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0163443713511902 2021年8月8日閲覧。. 
18. ^ “Cyber-utopianism - CrowdSociety”. crowdsociety.org. 2020年11月6日閲覧。
19. ^ Kurzweil, R 1999, The age of spiritual machines : when computers exceed human intelligence, Allen & Unwin, St Leonards, N.S.W.