おさん茂兵衛とは? わかりやすく解説

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おさん‐もへえ〔‐モヘヱ〕【おさん茂兵衛】

読み方:おさんもへえ

京都烏丸(からすま)の大経師の妻おさんと手代茂兵衛天和3年(1683)姦通の罪により磔(はりつけ)となった井原西鶴好色五人女」、近松門左衛門大経師昔暦」などに作品化されている。


おさん茂兵衛

作者川口松太郎

収載図書恋慕
出版社角川書店
刊行年月1992.9
シリーズ名時代小説女たち


おさん茂兵衛

読み方:オサンモヘエ(osanmohee)

初演 正徳5.春(大坂嵐三十郎座)


おさん茂兵衛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/19 01:16 UTC 版)

おさん茂兵衛(おさん もへえ)は、天和3年(1683年)に京都で発生した姦通事件を題材にした一連の文芸作品の通称・総称。井原西鶴の『好色五人女』で取り上げられた際の人物名から、おさん茂右衛門(おさん もえもん)ともいう。


注釈

  1. ^ 事件の後年ではあるが、寛保3年(1743年)には『公事方御定書』に、主人の妻と密通した男は引き廻しの上獄門という加重規定が行われた[2]
  2. ^ 春蘿生「おさん茂兵衛の事実に就いて 附堀川浪之皷の事実」『趣味』第4巻3号(1909年)[5][6]で紹介された「享保以前迄密夫御仕置之振合町代書留」[7]。ただし、これ以後この史料を直接閲覧して引用した論文がないことからすでに滅失した可能性がある[6]諏訪春雄は、この史料について、所司代判決の原本を野間光辰が見ていること、書式も当時のものと合致することから、信頼してよいものと評価している[7]
  3. ^ 春蘿生は意俊の代で大経師家が断絶したという記録を紹介しているが、春蘿生の文をもとに水谷不倒が『近松傑作全集』第4巻の解説を記した際に、密通事件と断絶を結びつけて記したため[11][12]
  4. ^ 大経師家は40~50万部程度の暦の販売が認められ、販路も京を中心に西国一帯に広がっていた。一方院経師家は京で1万部の販売が認められるにすぎなかったが、実際にはそれ以上を出版していたらしく、大経師家から見れば権益の侵害であった。大経師家はほかにも伊勢暦など多くの商売敵との軋轢を抱えており[14]、諏訪春雄は江戸への「直訴」を試みたことに、権之助の焦りとある意味同情すべき苦労が見られるとしている[14]
  5. ^ おりんの茂右衛門への恋文を代筆したおさんは、茂右衛門からの返書は失礼な言葉でおりんをからかうものであった。おりんと茂右衛門が会うことを約束した夜に、おさんはおりんと寝床を交換して茂右衛門を懲らしめようとしたが、おさんが思わず眠り込んだ間に茂右衛門が忍び込んでそうと知らぬまま関係を持ってしまう[23]
  6. ^ 夫の名前は「何がし」とあるのみで、「大経師」についても詳述されない[3]
  7. ^ 「三大姦通物」とも。ほかに、『鑓の権三重帷子』、『堀川波鼓』。
  8. ^ お玉は茂兵衛を慕い、主人「以春」はお玉を狙っており、主手代の助右衛門はおさんに邪な想いをいだいている。また、おさんの実家である岐阜屋道順が経済的に悩み、おさんに借金を頼むなどの話が加わる[30]
  9. ^ お玉から、以春が毎夜忍んできては口説くという話を聞かされたおさんは、以春に恥をかかせるために寝床を交換する。ところがその夜に忍んできたのは、お玉の恋情を知ってその思いを遂げさせたいと思った茂兵衛であり、暗闇の中で二人はともに相手を錯誤したまま関係を持ってしまう[31]
  10. ^ ただし結末で、二人の仲立ちをした「お玉」という人物が唐突に登場して彼女も処刑されたと(実説に沿って)記しており、彼女に相当する人物を「おりん」と設定した西鶴のミスであろうと考えられる[36]
  11. ^ 依田義賢『依田義賢 人とシナリオ』によれば、当初は川口の脚本で映画を制作する企画が進んでいたが、溝口が西鶴の要素をもっと取り入れるべきと難色を示したために川口が下り、依田と辻久一が脚本に取り組んだという。
  12. ^ 柏原は『好色五人女』では茂兵衛の伯母の在所、『大経師昔暦』では茂兵衛の在所と設定されている。
  13. ^ 虫干しに出すと、どんな日照りの時にも雨が降り出すという不思議な力を持っていたとされる。

出典

  1. ^ 大経師”. 精選版 日本国語大辞典(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  2. ^ a b 小森啓助 1974, p. 180.
  3. ^ a b 小森啓助 1975, p. 28.
  4. ^ おさん茂兵衛”. ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  5. ^ a b 諏訪春雄 1973, p. 35.
  6. ^ a b 桑原朝子 2013a, p. 324.
  7. ^ a b c d e f g 諏訪春雄 1973, p. 36.
  8. ^ 諏訪春雄 1973, pp. 35–36.
  9. ^ 小森啓助 1974, pp. 170–171.
  10. ^ a b c 小森啓助 1974, p. 171.
  11. ^ a b 諏訪春雄 1973, p. 37.
  12. ^ a b 小森啓助 1974, p. 173.
  13. ^ a b 小森啓助 1974, p. 174.
  14. ^ a b 諏訪春雄 1973, pp. 46–48.
  15. ^ 諏訪春雄 1973, pp. 38–39, 44.
  16. ^ 小森啓助 1974, pp. 173–174.
  17. ^ 桑原朝子 2013a, pp. 314–315.
  18. ^ 小森啓助 1974, p. 44.
  19. ^ 松井俊諭. “おさん茂兵衛”. 日本大百科全書(ニッポニカ)(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  20. ^ 桑原朝子 2013a, pp. 285–286.
  21. ^ a b 桑原朝子 2013a, p. 286.
  22. ^ a b 桑原朝子 2013a, pp. 288–289.
  23. ^ 桑原朝子 2013a, pp. 288.
  24. ^ 小森啓助 1974, pp. 31–32.
  25. ^ a b c d 松井俊諭. “大経師昔暦”. 日本大百科全書(ニッポニカ)(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  26. ^ 浅野晃. “好色五人女”. 日本大百科全書(ニッポニカ)(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  27. ^ 桑原朝子 2013a, pp. 294, 327.
  28. ^ a b 桑原朝子 2013a, p. 294.
  29. ^ 大経師昔暦”. 世界大百科事典 第2版(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  30. ^ a b 小森啓助 1974, pp. 176–177.
  31. ^ 桑原朝子 2013a, pp. 295.
  32. ^ 桑原朝子 2013a, pp. 297–298.
  33. ^ 小森啓助 1974, pp. 172, 190.
  34. ^ 桑原朝子 2013a, p. 300.
  35. ^ a b 桑原朝子 2013a, p. 299.
  36. ^ 桑原朝子 2013a, pp. 299, 326.
  37. ^ 桑原朝子 2013b, p. 854.
  38. ^ 松井俊諭. “大経師昔暦”. 精選版 日本国語大辞典(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  39. ^ 《恋八卦柱暦》”. 世界大百科事典内の言及(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  40. ^ 恋八卦柱暦”. 歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  41. ^ 千葉伸夫. “近松物語”. 日本大百科全書(ニッポニカ)(コトバンク所収). 2021年3月29日閲覧。
  42. ^ 前田晃一 (2009年6月21日). “《レポート》 映画講座 万田邦敏監督による「溝口健二論」”. 神戸映画資料館. 2021年3月30日閲覧。
  43. ^ 近松物語”. 第9回京都ヒストリカ国際映画祭. 2021年4月1日閲覧。
  44. ^ 近松物語”. Moovie Walker. 2021年4月1日閲覧。
  45. ^ 近松物語”. 優秀映画鑑賞推進事業. 株式会社オーエムシー. 2021年4月1日閲覧。
  46. ^ おさんの恋”. NHK. 2021年3月30日閲覧。
  47. ^ 恋、燃ゆる。”. 明治座. 2021年3月30日閲覧。
  48. ^ わがまち茨木の民話・伝説 おさん・茂平(石河村)”. 茨木市. 2022年7月3日閲覧。
  49. ^ 茨木市立中央図書館. “茨木市にある「おさん・茂平」の碑について知りたい。”. レファレンス共同データベース. 2021年3月30日閲覧。
  50. ^ a b 桑原朝子 2013a, p. 291.
  51. ^ おさんの森”. 丹波市観光協会. 2021年3月30日閲覧。
  52. ^ 丹波市柏原町下町沖田旧但馬街道おさんの森”. ネットミュージアム兵庫文学館. 兵庫県立美術館. 2021年4月1日閲覧。


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