カリフォルニア統合学研究所とは? わかりやすく解説

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カリフォルニア統合学研究所

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/04 22:02 UTC 版)

カリフォルニア統合学研究所(カリフォルニアとうごうがくけんきゅうじょ、California Institute of Integral Studies, CIIS) は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコに本部を置く私立の非営利大学である[1]。スリ・オーロビンドの「統合教育(Integral Education)」の哲学に基づき、伝統的な西洋の「知性(intellect)」と、東洋および先住民の伝統における「精神性(soul, spirit)」の融合を目指している[2]

歴史

起源 (AAAS)

CIISの制度的起源は、1951年にサンフランシスコで設立された米国アジア研究学院(American Academy of Asian Studies, AAAS)に遡る[1]。AAASは、アジアとの文化的・精神的交流の重要性を信じた実業家Louis Gainsboroughの資金提供によって設立された[1]

これと並行し、Haridas Chaudhuriは1951年に妻のBina Chaudhuriと共にCultural Integration Fellowship (CIF) を共同設立した[1]。CIFはアジア哲学やヨガに関する講義と精神的カウンセリングを提供するセンターであった[1]

CIASからCIISへ

1968年4月8日、Chaudhuri夫妻はCIFの教育部門を発展させ、California Institute of Asian Studies (CIAS)を設立した。これがCIISの直接の創設である[1]。CIASの創設哲学は、スリ・オーロビンドが提唱した「統合ヨガ」または「統合教育」の概念に深く根ざしている[要出典]

1980年、CIASはそのカリキュラムの拡大を反映し、現在の名称であるCalifornia Institute of Integral Studies (CIIS)へと改称した[1]。翌1981年、CIISはWSCUC(WASC Senior College and University Commission)による地域認定(regional accreditation)を取得し、公的に認められた高等教育機関となった[1]

ロックフェラー家による支援

1990年代、当時学長を務めていたRobert McDermott(Chaudhuriの元共同研究者)の下で、CIISは慈善家Laurance S. Rockefellerから総額900万ドルに上る寄付を受けた[1]。RockefellerはCIISの「単一で最大の支援者」として記録されており[3]、現在も大学の図書館は彼にちなんで「Laurance S. Rockefeller Library」と名付けられている[4]。この寄付は、CIISの現代的な学術ブランドを形成するための触媒的な「ベンチャー・フィランソロピー」として機能し、「いくつかの学術プログラムの創設を可能にした」と記録されている[1][5]

教育・研究

認定

上記のようにCIISは、1981年からWSCUC(WASC Senior College and University Commission)によって地域認定されている[1][5]

学術的ニッチ

CIISは、主流のアカデミズムでは周辺的と見なされる分野において、高度に専門化された学術的ニッチを確立している[6]

主要なプログラムには以下のものがある:

  • 哲学・宇宙論・意識 (Philosophy, Cosmology, and Consciousness, PCC) [5]
  • ソマティック心理学 (Somatic Psychology) [5]
  • 東洋と西洋の心理学 (East-West Psychology) [7]
  • 人類学と社会変革 (Anthropology and Social Change) [8]
  • トランスパーソナル心理学 (Transpersonal Psychology) [9]

2015年にはCenter for Psychedelic Therapies and Research (CPTR)を設立した[10]。これは米国で最初の大学所属のサイケデリック補助療法トレーニング証明書プログラムであり、この分野の先駆者となっている[10]

教員

PCCプログラムの創設者であるRichard Tarnas教授[11]や、Sean Kelly教授[12]などが著名な教員として知られる。大学は「55 Faculty Books for 55 Years」といったキャンペーンを行い、教員の出版活動を積極的にアピールしている[13]

また、CIISは査読付き学術誌『International Journal of Transpersonal Studies (IJTS)』を2015年から2021年まで後援し、機関リポジトリを通じて査読プロセスのインフラを提供した[14]

学生

CIISは本質的に大学院大学である。2024年秋の時点での総学生数1877名のうち、98%が大学院生(修士課程 61.9%, 博士課程 36.1%)である[15]

学生の成果

CIISの教育機関としての最大の強みの一つは、その専門職養成プログラムにおける具体的な成果にある。特にカウンセリング心理学修士課程(MA in Counseling Psychology)の卒業生は、カリフォルニア州のLMFT(Marriage and Family Therapist)試験において、州平均を一貫して上回る高い合格率を示している[15]

直近のデータ(2024年下半期)では、CIIS卒業生の合格率が91%であったのに対し、カリフォルニア州の全学校の平均は74%であった[15]

財務

CIISは、米国IRSにより501(c)(3)非営利教育機関として登録されている[16]

2023年6月期(FYE 2023)のフォーム990によれば、総収益は約4,490万ドルであった[17]。このうち約82.4%(約3,701万ドル)が授業料収入であり[17]、運営を授業料に大きく依存している[17]。一方、総収益の約17.6%に相当する年間約790万ドルの寄付金も集めている[17]。大学は「1968 Circle」や「Sri Yantra Heritage Society」といった寄付者コミュニティを組織している[18]

FYE 2023末時点での純資産は$32,009,056であり[19]、FYE 2021の約2,460万ドル、FYE 2022の約2,800万ドルから着実に増加している[19]

評価

この分野における主要な競合校は、カリフォルニア州のPacifica Graduate Institute(パシフィカ大学院大学)と、コロラド州のNaropa University(ナロパ大学)である[20]

財務データ(フォーム990)の比較から、CIISの総収益(約4,500万ドル)と純資産(約3,200万ドル)は、ナロパ大学(総収益 約3,200万ドル、純資産 約1,450万ドル)を大幅に上回っている[17]。このことから、CIISは、この「代替的・統合的」高等教育市場において、財政的にも規模的にも明確なリーダーの地位にあることがわかる[17]

カリフォルニア州内でLMFT(Licensed Marriage and Family Therapist)として、ホリスティック、ソマティック(身体心理学)、またはトランスパーソナルなアプローチを志向する学生にとって、CIISは強く推奨できる選択肢であるとされる[15]。その根拠は、LMFT試験の合格率(91%)が州平均(74%)を大幅に上回っており[15]、プログラムが専門職ライセンス取得において効果的であるという客観的な証拠があるためである。また、ベイエリアにおける卒業生の強力な専門家ネットワークの存在も報告されている[21]

PCC(哲学・宇宙論・意識)のような非臨床プログラム[22]は、特定の学術的・精神的探求(例:リチャード・ターナスの思想体系)を望む学生にとって、ユニークな環境を提供すると評価されている[11]

主要な卒業生

卒業生は、心理療法士、作家、活動家、教育者など、多様な分野で活動している[23]。日本人の著名な出身者も輩出している。

外部リンク

参考文献

  1. ^ a b c d e f g h i j k Our History”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  2. ^ Our Story”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  3. ^ Scholarships”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  4. ^ How to Give”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  5. ^ a b c d McDermott, R. (2017年11月17日). “A Written History of CIIS”. CIIS Today. 2025年11月4日閲覧。
  6. ^ Faculty”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  7. ^ Faculty Profile: Dr. Debashish Banerji”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  8. ^ California Institute of Integral Studies - Directory Print View”. WSCUC. 2025年11月4日閲覧。
  9. ^ Don Hanlon Johnson Receives Prestigious Lifetime Achievement Award”. CIIS (2023年6月8日). 2025年11月4日閲覧。
  10. ^ a b Bersing, D. (2023年). “Blog Post”. 2025年11月4日閲覧。
  11. ^ a b Richard Tarnas: The Mystery of the Human Journey”. CIIS (2025年2月5日). 2025年11月4日閲覧。
  12. ^ Kelly, S. (1993年). “Individuation and the Absolute...”. DigitalCommons@CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  13. ^ Faculty”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  14. ^ About The International Journal of Transpersonal Studies (IJTS)”. DigitalCommons@CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  15. ^ a b c d e Institutional Research - CIIS at a Glance”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  16. ^ Profile: California Institute of Integral Studies”. Guidestar. 2025年11月4日閲覧。
  17. ^ a b c d e f California Institute of Integral Studies - Form 990 Data”. Cause IQ. 2025年11月4日閲覧。
  18. ^ Giving Societies”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  19. ^ a b California Institute of Integral Studies - Assets/Debt”. ProPublica Nonprofit Explorer. 2025年11月4日閲覧。
  20. ^ California Institute of Integral Studies - Competitors”. Niche. 2025年11月4日閲覧。
  21. ^ Thoughts on CIIS?”. Reddit (2021年). 2025年11月4日閲覧。
  22. ^ About the PhD - Philosophy, Cosmology, and Consciousness”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。
  23. ^ Notable Alumni”. CIIS. 2025年11月4日閲覧。



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