栗林千津

現代俳句データベース(人名)

栗林千津

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栗林千津の俳句

うぐひすや掌にあるものを影といふ

くずざくら外階段を降りてくる

ここかしこ冬虹胸の谷眩し

こころ踏むごとひぐらしのひびきくる

こほろぎが石工に見えるあかるさなり

とうめいな死を道連れに夏遍路

わがまなこ二つを放り野火とせむ

わが死おもへば誰かが笑ふ冬景色

アネモネや千里の先に吾を置き

二つ三つ嘘見え泥鰌飼ってゐる

人形の素魂の棲める木下闇

人形を悪事に誘ふ日向水

何か爆ず焚火よわれの終末か

冬深井みんな無口になってゐる

半夏生鰭長き魚切らるるよ

咎のやうに蛇うすれゆくねむりゆく

夏の月水のいのちを纒ひけり

夏葱は遺書の余白に似てゐたり

如月のいづこに鈴を置きたるや

己が十指に怯えて泣く嬰雲の峰

後の世の雲雀おもへば手の林

教会へ百姓がゆく余り苗

昏れてゆく人の顔あり厚氷

服喪の母螢を囲ふ姿なり

桃の日の月を捉へしオブラート

欲得も顔の間も凍りけり

死んでから背丈がのびる霞かな

水ナ中にまくなぎ移るわが病

添乳の痛みをいまに椿の夜

熱の掌に沢蟹沢の薄氷

燃せば鳴る幼時の川も寒の入り

片乳房卯月曇といふべしや

白粥の白大雪の精神科

着ぶくれて海山ともに平らなり

砂山に憂き身をやつしゐる揚羽

神様も鳥も素足や枯木立

箱枕夏は真水の如くなり

緋目高を数へてをりし男かな

縄とびの中の生身や一の午

翔ぶものへ鮭のはららご炎えてゐる

花に微風かたちよき人明りかな

花までゆきまひるの水を敲きけり

藤咲いて死後のわれゐる潦

蝗々と河豚を食べたる通り雨

行く年くる年かすも浮きたる子を膝に

西方もよし大根葉汁の実に

輪ゴムその他いつまで寒い日輪よ

雁や死化粧朱をつくしたる

青いシグナルおこそずきんを脱ぎ給へ

風邪の子が部屋部屋にゐる畳の目

栗林千津の俳句

髪洗ふ残るいのちを洗ひけり

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栗林千津

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2023/09/14 14:37 UTC 版)

栗林 千津（くりばやし ちづ、1910年4月10日 - 2002年5月5日）は、栃木県出身の俳人。1957年、遠藤梧逸の「みちのく」入会。1964年「鶴」入会。1965年、みちのく賞受賞。「鶴」退会し「鷹」入会。1986年、第33回現代俳句協会賞受賞。1987年、佐藤鬼房の「小熊座」入会。また坪内稔典の「船団」にも所属。老境を自在な詠み口で詠んだ。句集は『のうぜん花』『蝶や蜂や』『鮫とウクレレ』など11冊。