物語要素事典 |
おじ・おば
『古事記』上巻 ウガヤフキアヘズは、天つ神の子孫ホヲリ(=山幸彦)と海神の娘トヨタマビメとの間に生まれた。トヨタマビメは正体を見られたために(*→〔のぞき見〕1b)海へ帰り、代わりに妹タマヨリビメが海の世界からやって来て、ウガヤフキアヘズを養育した。ウガヤフキアヘズは成長後、叔母にあたるタマヨリビメと結婚する。ウガヤフキアヘズと叔母タマヨリビメの間には四人の皇子が生まれ、その末子が神武天皇である〔*『日本書紀』巻2・第10~11段に類話〕。
『源氏物語』「賢木」 朱雀帝の母は弘徽殿大后である。弘徽殿大后は自分の妹・六の君(=朧月夜)を尚侍として、朱雀帝に入内させる。朱雀帝は、母の妹すなわち叔母にあたる朧月夜を、寵愛する〔*しかし朧月夜は光源氏とも関係を持ち、光源氏失脚の一因を作る〕→〔雷〕2。
★2.(血のつながらぬ)叔母と甥が関係を持つ。
『源氏物語』「葵」「賢木」 光源氏は、故前坊(=皇太子)の未亡人、七歳年上の六条御息所を愛人とする〔*二人の間に子供は生まれない〕。前坊は、桐壺帝の同母弟であり、桐壺帝の次男光源氏から見れば叔父にあたる。その妻だった六条御息所と光源氏とは、(直接の血のつながりはないが)叔母・甥の関係である。
★3a.叔父と姪が関係を持つ。
『新生』(島崎藤村) 妻をなくした岸本捨吉には、四人の幼い子供たちが残された。姪の節子が、住み込みで家事や育児を手伝いに来ているうちに、岸本と節子は関係を持ち、節子は妊娠する。その時、岸本は四十二歳、節子は二十一歳だった。岸本は一人フランスへ旅立ち、節子の産んだ男児は養子に出される。三年を経て岸本は帰国するが、ふたたび節子と関係してしまう。岸本は兄義雄(=節子の父)から義絶され、節子は台湾の叔父(=岸本のもう一人の兄)に引き取られる。
『犬神家の一族』(横溝正史) 青沼静馬は、犬神佐兵衛が五十歳を過ぎて愛人に産ませた息子である。佐兵衛の恩人の縁者・珠世が犬神家の財産を受け継ぐので、静馬は「珠世と結婚しよう」とたくらむ。しかし、実は珠世は佐兵衛の孫娘であり、静馬と珠世は叔父・姪の関係になるのだった。それを知った静馬は、珠世との結婚を断念した〔*犬神松子が静馬を利用して犬神家の財産を得ようとしたが、「もはや静馬は役に立たない」と思って、松子は静馬を殺した〕。
『めし』(成瀬巳喜男) 大阪の会社に勤める初之輔と妻三千代は結婚して五年、子供はいない。三千代は、家事に追われる毎日に疑問を感じている。そこへ初之輔の姪・二十歳の里子が、親の勧める縁談を嫌って家出し、やって来る。初之輔は親切に里子の面倒を見、里子は「私ほんとは初之輔さんみたいな人が好きなのよ」と言う。三千代は心穏やかならず、東京の実家に帰り、このまま東京で職を捜そうと思う。しかし女一人の自立は困難であり、迎えに来た初之輔と一緒に、三千代は大阪へ帰る。
『疑惑の影』(ヒッチコック) 遠方の叔父(=母の弟)チャーリーが訪れるというので、彼と同名の姪チャーリーは喜ぶ。姪は昔から叔父が大好きだった。しかしやがて姪は、叔父が逃走中の連続殺人犯であることに気づく。叔父は姪に「もし君がしゃべれば、母上は悲しみ、父上は職を失うだろう」と言って開き直る。叔父は、自分の正体を知った姪を、列車から突き落として殺そうとするが、逆に彼の方が落ちて死んでしまう。
『大和物語』第156段 信濃の国更級の男が妻に責められて、若い時から親同然に一緒に暮らしていたおばを、背負って山へ捨てに行く。しかし家へ帰った男は、山に照る月を見て後悔し、「我が心なぐさめかねつさらしなやおば捨て山に照る月を見て」と詠歌する。男は再び山に登り、おばを連れ帰る。
『俊頼髄脳』(源俊頼) 昔、ある女が姪を養女として、長年育てた。ところが、おばがしだいに年老いて来ると、姪はおばの世話を厄介に思うようになった。八月十五日の夜、姪はおばをだまして山に登らせ、頂上に置き去りにしたまま、家へ逃げ帰った。以来、その山を「おば捨て山」と呼ぶようになった。
★7.甥が伯父を救う。
『パルチヴァール』(エッシェンバハ)第5巻・第9巻・第16巻 聖杯城のアンフォルタス王は、かつて毒槍で睾丸を突かれ、長期間その傷に苦しんでいた。少年パルチヴァールが城を訪れるが、彼は、アンフォルタス王が母方の伯父であることを知らなかった。また、王の苦しみの理由を問いさえすれば、王の傷は癒えるはずだったが、それもせずにパルチヴァールは城を去った(*→〔禁忌〕3)。しかし後にパルチヴァールは再び城を訪れて、アンフォルタス王に傷の具合を問い、神の慈悲により王は回復した。
★8.叔父と甥が戦う。
『アーサーの死』(マロリー)第1巻第19章 アーサーは、ユーサー・ペンドラゴン王とイグレインとの間に生まれたが、それに先立って、イグレインはティンタージェル公との間に娘マーゴースをもうけていた。アーサーは成長後、ロット王妃となったマーゴースに出会って恋し、彼女を異父姉と知らず関係を結んで、モードレッドが誕生する。モードレッドにとってアーサーは、父であると同時に、母の異父弟ゆえ叔父でもある。後年、モードレッドはアーサーに戦いを挑む→〔父〕1。
*父でも叔父でもある人→〔兄妹婚〕2fの『無常』(実相寺昭雄)。
『源氏物語』 光源氏は継母にあたる藤壺女御を恋い慕い、秘密の子(=後の冷泉帝)をもうける。しかしその後、藤壺女御は光源氏の求愛を厳しく退けた。光源氏は藤壺女御の面影を求め、藤壺女御の兄の娘、すなわち藤壺女御の姪にあたる紫の上と結婚するが、子供は授からなかった。後に光源氏は、藤壺女御の妹の娘で、やはり藤壺女御の姪にあたる、女三の宮を妻として迎える。ところが女三の宮は光源氏との間ではなく、柏木との間に子供(=薫)をもうけた。しかも光源氏は、それを自分の子として育てねばならなかった。
『マルテの手記』(リルケ) パリに住む「ぼく(マルテ)」は、デンマークの貴族の末裔で、二十八歳の貧しく孤独な詩人である。「ぼく」の母は、「ぼく」が幼い頃に病死した。母の末の妹、「ぼく」にとっては叔母にあたる独身のアベローネが、母の娘時代の話を聞かせてくれ、それをきっかけに「ぼく」とアベローネのつながりができた。「ぼく」は彼女に、多くの手紙を書き送った。今思えば、それはラブレターだった。しかしアベローネは、「ぼく」の思いを受け入れることはなかった。
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