TCCORとは? わかりやすく解説

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TCCOR

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/06/26 03:35 UTC 版)

TCCOR英語: Tropical Cyclone Conditions of Readiness)は、台風が米軍基地等に接近する際に、事前準備や台風時の対応などを明記したアメリカ軍の規定および警報である。日本を含む北西太平洋において運用されている[1]。公式の和訳はなく、「台風警報」や「熱帯低気圧警戒コンディション」などと紹介される。読み方は「ティーコー」。

ハリケーンが襲来するアメリカ本国では、北大西洋地区および北太平洋地区の基地に対して、HURCON(英語: Hurricane Condition)が運用されており、当項目ではHURCONも含めて解説する[1]

概要

TCCORおよびHURCONは台風・ハリケーンが襲来する最大96時間前より発令され[1]、軍人や軍属、文官、これらの家族に対して暴風雨などへの備えを指示するとともに、接近には施設・学校の一時閉鎖や外出禁止などが当規定により行われる[2]。TCCORないしHURCONの指定は、台風やハリケーンの影響を最も受けやすい在沖米軍や、アメリカ大西洋南部地域の基地において特に重要視されている。

TCCORおよびHURCONの発令権限者は原則各基地の基地司令官にあたる部隊長により発令される。在日米軍におけるTCCORの定義は"USFJ Instruction 15-4001"により規定される[3]

TCCORの規定

2026年現在、TCCOR 5からTCCOR 1までの5段階(沖縄ではTCCOR 5の運用なし)で構成されており、TCCOR 1においてはさらに3つのサブレベルが設けられているほか、通過後に発令されるAll Clear、暴風ではないが熱帯低気圧による強風が予想される際に発令されるStorm Watchが設けている[3]

また、台風シーズンに当たる6月1日~11月30日の間、日頃の注意喚起を兼ねて、常時TACCOR 5(沖縄はTACCOR 4)が発令される(Seasonal TACCOR 5(4))[3]

以下は"USFJ Instruction 15-4001"の定義に戻づく[3]が、風速が51.4m/秒[4]を超えると予報されている場合は、さらに厳しい行動要請が命じられる[3][5]

TCCOR 時間 基準 指示
Storm Watch 破壊的な暴風の恐れはないが、熱帯低気圧に起因する強風により被害が予想される。
  • 状況は急速に変化する可能性があるため、職員は警戒を怠らず、ラジオやテレビの情報を注視する。
  • 強風が吹いている場合は、屋外での行動に注意を払い、可能であれば屋内に留まることが推奨される。
5 96 風速25.4 m/秒以上の破壊的な暴風および(または)最大瞬間風速31 m/秒以上の突風が96時間以内に吹く可能性がある。

台風シーズン以外(12月1日~5月31日の間)で運用[6]

  • 他のTCCORレベルの行動内容を確認しておく。
Seasonal 5 台風シーズン(6月1日~11月30日)の間の常時レベル[6]
4 72 風速25.4 m/秒以上の破壊的な暴風および(または)最大瞬間風速31 m/秒以上の突風が72時間以内に吹く可能性がある。
  • 非常用物品を用意しておく。
Seasonal 4 沖縄における台風シーズン(6月1日~11月30日)の間の常時レベル。
3 48 風速25.4 m/秒以上の破壊的な暴風および(または)最大瞬間風速31 m/秒以上の突風が48時間以内に吹く可能性がある。
  • 車両やガス調理器のタンクに燃料を補充しておく。
  • 十分な現金と重要な書類がすぐに取り出せるようにしておく。
2 24 風速25.4 m/秒以上の破壊的な暴風および(または)最大瞬間風速31 m/秒以上の突風が24時間以内に吹く可能性がある。
  • 屋外の物品をしっかりと固定する。
  • 飛散防止フィルムが貼られていない窓を確認する。
1 12 風速25.4 m/秒以上の破壊的な暴風および(または)最大瞬間風速31 m/秒以上の突風が12時間以内に吹く可能性がある。
  • 壊れやすい物は窓から離すか、ビニールで覆う。
  • 風速が51.4m/秒を超えると予報されている場合は、飛散防止フィルムが貼られていない窓をテープで塞ぐ。
  • 風速が51.4m/秒を超えると予報されている場合、嘉手納基地や普天間飛行場などの航空機をグアムや米本土、本州などの安全な圏外の基地へ事前に避難(退避飛行)させる。
1C 0 注意(Caution): 風速約17.9〜25.4 m/秒の強風が吹いている
  • 不要不急の外出はすべて中止。
  • 不要不急の職員は屋内に留まること。
1E 0 緊急(Emergency): 風速25.4 m/秒以上の持続的な風および(または)最大瞬間風速31 m/秒以上の突風が発生している。
  • すべての職員は、窓から離れた屋内に留まること。
1R 復旧:猛烈な風は収まり、今後発生する見込みはなくなった。
  • 被害状況の評価と復旧作業が完了するまで、必要のない人員は全員、屋内に留まること。
All Clear 破壊的な強風は過ぎ去り、今後発生する見込みはない。

復旧作業は完了したとみなされる。

  • 通常体制に戻る。
  • 台風シーズンでは直ちにSeasonal TACCOR 5(沖縄はSeasonal TACCOR 4)が発令される。

日本におけるTCCORの発令体制

以下の表は在日米軍におけるTCCORの発令権限を持つ司令官、TCCORを進言する気象関連部隊、発令範囲を表にしたものである[3]

原則は基地単位となるが、在日米軍司令官の令により、沖縄では嘉手納基地の空軍第18航空団司令官が沖縄全域を、海軍(ホワイトビーチ、厚木飛行場除く)は在日米海軍司令官が一括して発令することとなっている[5][7]

なお、各施設の司令官は独自にTACCORを前倒しで強化できるが、沖縄におけるTCCORの引き下げや解除の最終決定権は第18航空団司令官のみが有する[7]

権限者 運用部隊 管区
第18航空団司令官 第18運用支援中隊

気象飛行班

沖縄本島全域

沖縄内の米国防総省所管学校

岩国基地司令官 岩国飛行場

気象分遣隊

岩国基地

呉第6突堤 秋月弾薬庫 広弾薬庫 川上弾薬庫 灰ヶ峰通信施設 経ヶ岬通信施設

在日米海軍司令官 米海軍対潜戦音響気象海洋センター

横須賀支処

横須賀地区

横須賀基地 横浜ノースドック 佐世保地区 佐世保基地 横瀬貯油施設 対馬通信施設 硫黄島(米軍駐留時のみ)

在日米軍司令部作戦部長 第374運用支援中隊

気象飛行班

関東平野

横田基地 キャンプ富士 キャンプ座間 厚木飛行場

第35戦闘航空団司令官 第35運用支援中隊

気象飛行班

三沢基地

八戸貯油施設 車力通信施設

HURCONの各種規定

HURCONは数回改訂されており、基地ごとに若干の差異があるが、2021年現在、HURCON 5からHURCON 1までの5段階で構成されており、HURCON 1においてはさらに3つのサブレベルが設けられている[8]。民間人に対する警戒態勢と同様に、建物は板で塞がれ、要員は避難させられる場合がある。さらに、航空機、艦船、装備などの資産は、移動、固定、地下格納、あるいはその他の方法で安全が確保される。HURCONの略語は、DEFCONやFPCONなど、危険性を伝えるために使用されている他の軍事用語と整合性を保つために採用された[9]

アメリカ軍では『破壊的な暴風(Destructive winds)』を風速50ノット(25.8 m/秒)以上の風と定義しており[3][5][10]、日本の気象庁が定義する台風の「暴風域」とおおむね一致するが、アメリカでは風速は1分平均であることに留意が必要である。(日本は10分平均)

HURCON 時間 基準 指示
5 96 破壊的な暴風が96時間以内に吹く可能性がある。
  • 気象官署などの情報を確認する。
  • 家族・個人の避難計画を再確認する。
  • 避難所や避難グッズの点検・備品確認を行う。
  • 車両、処方薬、食料を確認する。
  • 家族に現在の状況を説明する。
  • ペットがいる場合にペットの対応策を決定する。
  • 車両や発電機の燃料タンクが満タンであることを確認する。
4 72 破壊的な暴風が72時間以内に吹く可能性がある。
  • HURCON 5のすべての項目を確実に完了させる。
  • 地元のテレビやラジオの情報を確認する。
  • ハリケーンに備えて自宅を修繕しておく。
  • 庭から、飛来物となる可能性のある散乱物を片付ける。
  • 空軍においては人員所在確認・評価システム(AFPAAS)の情報を更新しておく。
  • 最寄りの避難所を確認してください。
3 48 破壊的な暴風が72時間以内に吹く可能性がある。
  • HURCON 4・5のすべての項目を確実に完了させる。
  • 暴風雨への準備を完了させる。
  • 避難用品をまとめる。
  • 自宅や所有物をしっかりと固定する。
  • 避難の可能性に備える。
2 24 破壊的な暴風が48時間以内に吹く可能性がある。
  • HURCON 3から5について記載されているすべての項目を確実に完了させる。
  • テレビやラジオの情報に注意する。
  • 家族に避難計画や自宅待機計画について説明する。
  • 避難所へ行く場合は、避難・避難所用キットを忘れずに持参する。
  • 関係当局から解除の指示があるまで、避難所に留まる。
1 12 破壊的な暴風が12時間以内に吹く可能性がある。
  • HURCON 2から5について記載されているすべての項目を確実に完了させる。
  • まだ安全が確保できる場合であれば、避難する。
  • テレビやラジオの情報に注意する。
  • 関係当局から解除の指示があるまで、避難所に留まる。
  • 避難所にいない場合は、直ちに避難所へ移動するか、自宅で「嵐が過ぎ去るまで待機」する準備をする。
1C 0 注意(Caution): 風速約17.9〜25.4 m/秒の強風が吹いている
  • 屋外での活動は一切禁止される。
  • 関係当局からの指示があるまで、避難所に留まる。
  • 避難所にいない場合は、直ちに避難場所へ移動する。
1E 0 緊急(Emergency): 風速25.4 m/秒以上の持続的な風および(または)最大瞬間風速31 m/秒以上の突風が発生している。
  • 関係当局からの指示があるまで、避難所に留まる。
1R 回復(Recovery):風速25.4 m/秒以上の持続的な風は観測されておらず、嵐は通過した。
  • 司令官から別段の指示がない限り、必須でない業務は引き続き停止される。
  • 緊急要員を除く全員が、追って通知があるまで宿舎に留まること。
  • 避難した場合は、指示があるまで基地に戻らない。

備考

  • 熱帯低気圧による影響が少ないと推測された場合、Storm watchないし、TECCOR 1 Recoveryに移行する。

出典・脚注

脚注出典

  1. 1 2 3 Air Combat Command > Severe Weather Readiness”. 2026年6月26日閲覧。
  2. Storm and TCCOR Guidance (英語). cnrj.cnic.navy.mil. 2026年6月25日閲覧。
  3. 1 2 3 4 5 6 7 TROPICAL CYCLONE CONDITIONS OF READINESS (TCCOR) COMPLIANCE WITH THIS PUBLICATION IS MANDATORY(USFJ Instruction 15-4001) - 在日米軍司令部(2015年3月1日発効、2026年6月26日閲覧)
  4. 気象庁では「猛烈な風」と表現される。
  5. 1 2 3 Kadena Air Base Typhoon Guide 2026 - 嘉手納基地(2026年6月26日閲覧)
  6. 1 2 沖縄を除く
  7. 1 2 “Commonly asked questions during typhoons”. Kadena Air Base (アメリカ英語). 2022年6月11日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2026年6月25日閲覧.
  8. Air Combat Command > Severe Weather Readiness”. 2021年12月27日閲覧。"Air Combat Command > Severe Weather Readiness". Retrieved 2021-12-27.
  9. Eglin Air Force Base - Hurricane Season”. 2008年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月6日閲覧。
  10. Natural Disaster Preparedness (英語). www.usarj.army.mil. 2026年6月26日閲覧。

外部リンク




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