リンドハード理論とは? わかりやすく解説

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リンドハード理論

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/12 17:26 UTC 版)

リンドハード理論[1][2](リンドハードりろん)とは、固体中の電子による遮蔽効果を計算する手法である。リンドハード理論は、量子力学(第一原理摂動論)と乱雑位相近似に基づいている。

トーマス-フェルミ遮蔽は、より一般的なリンドハード公式の特別な場合として導出される。具体的に言うと波数ベクトルがフェルミ波数ベクトルよりはるかに小さいときのリンドハード公式、すなわち長距離極限がトーマス-フェルミ遮蔽である[2]

この記事はCGSガウス単位系を用いることにする。

公式

誘電関数のリンドハード公式は次式で与えられる。

3次元における静的に遮蔽されたポテンシャル(上の曲面)とクーロンポテンシャル(下の曲面)。

縮退したガス(T=0)において、フェルミエエネルギーは次式で与えられる。

,

よって密度は、

.

T=0では、よって

これを上述の3次元遮蔽波数の式に代入すると、

.

これは3次元におけるトーマス-フェルミ遮蔽波数である。

なお、デバイ遮蔽は非縮退極限の場合を記述する。結果はであり、3次元のデバイ遮蔽波数である。

2次元

長波長極限

まず長波長極限 ()を考える。リンドハード公式の分母について、

,

また分子について、

.

これらをリンドハード公式に代入し、極限をとると、

ここでを用いた。

静止限界

次に静止極限()を考える。リンドハード公式は次のようになる。

.

上述の式を分母と分子に代入すると、

熱平衡でのフェルミ-ディラックキャリア分布を仮定すると、

ここでを用いた。

よって、

で定義される2次元での遮蔽波数(2次元での遮蔽長の逆数)である。

ここで2次元での静的に遮蔽されたクーロンポテンシャルは次式で与えられる。

.

2次元フェルミ気体の化学ポテンシャルは次式で与えられることが知られている。

,

またである。

よって2次元での遮蔽波数は、

これはnに依存しないことに注意。

1次元

ここでは次元を下げたいくつかの限られた場合を考える。次元を下げると、遮蔽効果は弱くなる。低次元では、一部の力線が遮蔽効果が無い物質を貫く。1次元の場合、ワイヤ軸に非常に近い力線にのみ遮蔽が影響を与えると考えられる。

実験

実際の実験では、単一フィラメントのような1次元の場合を扱っていたとしても、3次元バルクの遮蔽効果も考慮する必要がある。D. Davisは、フィラメントと同軸円筒に閉じ込められた電子ガスにトーマス-フェルミ遮蔽を適用した[3]。K2Pt(CN)4Cl0.32·2.6H20では、フィラメントと同軸円筒との間の領域内のポテンシャルはで変化し、有効遮蔽長は金属白金の約10倍であることが分かっている。

関連項目

参考文献

  1. ^ Lindhard, J. (1954). “On the properties of a gas of charged particles”. Danske Matematisk-fysiske Meddeleiser (Det Kongelige Danske Videnskabernes Selskab) 28 (8): 1–57. http://gymarkiv.sdu.dk/MFM/kdvs/mfm%2020-29/mfm-28-8.pdf 2016年9月28日閲覧。. 
  2. ^ a b N. W. Ashcroft and N. D. Mermin, Solid State Physics (Thomson Learning, Toronto, 1976)
  3. ^ D. Davis Thomas-fermi screening in one dimension, Phys. Rev. B, 7(1), 129, (1973)
  • Haug, Hartmut; W. Koch, Stephan (2004). Quantum Theory of the Optical and Electronic Properties of Semiconductors (4th ed.). World Scientific Publishing Co. Pte. Ltd.. ISBN 981-238-609-2 



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