アスベスト関連肺がんとは? わかりやすく解説

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アスベスト関連肺がん

(アスベスト肺がん から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/02 22:42 UTC 版)

アスベスト関連肺がん(アスベストかんれんはいがん、石綿関連肺がん)は、アスベストを吸入したことを原因として発生した肺がんである。日本では医学者の研究にもとづいて1970年に初めて発生していることが報道された[1]。石綿を産出しない国の研究者たちによって、アスベスト関連疾患の診断基準やさまざまな疾病とアスベストのリスクに関して開催された1997年のヘルシンキ国際会議では中皮腫1人に対して、2人にアスベストが原因の肺がんが発生しているとした[2]。同会議は2014年にも開催されたが、この点については変更がなされなかった。日本では、アスベスト関連肺がんの被害者の多くが労働者災害補償保険法石綿による健康被害の救済に関する法律で救済されていない。多くの被害者が泣き寝入りを強いられている状況である[注釈 1]。「肺がんに関しては検査を尽くさずに労基署の安易な不支給決定がまかり通っているのが現状だ。これまで不支給とされた事例の見直しとやり直しが必要だ」[3]、「申請すればすぐに認定される典型的な被害がまだまだ放置されている」[4]との声もある。また遺族からは、「補償や救済の制度はあるが、証拠をそろえる力がない被害者をすくい上げる仕組みになっていない。泣き寝入りする人が多いのではないか」との指摘もある[5]。2014年現在でも被災者支援団体によって「肺がん・アスベスト(石綿)ホットライン」が開催されるなど、石綿が原因とされる被災者の救済状況の改善が課題となっている[6]


注釈

  1. ^ 例えば、厚生労働省から労災認定を棄却された被害者や遺族が行政訴訟を提起しており、東京高裁と大阪高裁では不認定の取り消しを命じる判決が言い渡されている。詳しくは、古川武志「肺がん労災不支給処分取消訴訟について」『中皮腫 じん肺 アスベストセンター会報』第21号参照。
  2. ^ ロンドン衛生熱帯医学大学院のリチャード・ドールが1955年にアスベストと肺がんとの関連を確定的なものとする報告書を発表している。詳しくは、中皮腫・じん肺・アスベストセンター編2009『アスベスト禍はなぜ広がったのか』日本評論社、pp.138-9を参照されたい。

出典

  1. ^ 1970年11月17日、「石綿作業で肺がん」『朝日新聞』
  2. ^ http://worldasbestosreport.org/conferences/gac/gac2004/pl_4_11_e.pdf#search='Asbestos%2C+asbestosis%2C+and+cancer%3A+the+Helsinki+criteria+for+diagnosis+and'
  3. ^ a b 下地毅2007年3月5日(夕刊)「『石綿肺がん』労災認定 新潟労働局が逆転判断」『朝日新聞』
  4. ^ a b 下地毅2014年10月21日「石綿被害者救済 道半ば」『朝日新聞』(福井版)
  5. ^ a b 足立耕作、2014年7月10日、「石綿被害 遠い救済」『朝日新聞』
  6. ^ http://joshrc.info/index.php?key=joz6w9hp6-359#_359
  7. ^ 1971年2月25日『せきめん』第302号
  8. ^ https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/chuuhisyu12/
  9. ^ 大阪じん肺アスベスト弁護団ほか編(2009)『アスベスト惨禍を国に問う』かもがわ出版、p.10
  10. ^ a b http://www.asbestos-center.jp/hotline/advice/fromnatori.html
  11. ^ a b http://www.asbestos-center.jp/hotline/advice/fromsaito.html
  12. ^ 斎藤洋太郎「教員・自殺・肺がん」『中皮腫 じん肺 アスベストセンター会報』第11号、p.13
  13. ^ 植草和則「2011年度の認定事例から」『中皮腫 じん肺 アスベストセンター会報』第18号、p.16
  14. ^ 最新の公開分(平成24年度まで)は、http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/sekimen/ichiran/081217-1.html を参照。
  15. ^ 植草和則「2012年の認定事例から」『中皮腫 じん肺 アスベストセンター会報』第19号、p.20
  16. ^ 植草和則「2012年度の労災認定事例から」『中皮腫 じん肺 アスベストセンター会報』第20号、p.6
  17. ^ https://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-05/2013040515_02_0.html
  18. ^ 古川武志「肺がん労災不支給処分取消訴訟について」『中皮腫 じん肺 アスベストセンター会報』第21号、pp.10-11
  19. ^ アーカイブされたコピー”. 2014年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月17日閲覧。
  20. ^ 大島秀利、2014年6月11日、「石綿がん「国基準不当」 岡山 労災不認定、遺族が提訴」『毎日新聞』
  21. ^ https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0209-1.html
  22. ^ a b 古川武志「肺がん労災不支給処分取消訴訟について」『中皮腫 じん肺 アスベストセンター会報』第21号、p.10
  23. ^ アーカイブされたコピー”. 2014年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月17日閲覧。
  24. ^ a b https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/186/meisai/m186017.htm
  25. ^ https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/186/meisai/m186047.htm
  26. ^ https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/186/meisai/m186054.htm
  27. ^ https://www.env.go.jp/council/05hoken/y058-07a.html
  28. ^ アーカイブされたコピー”. 2014年2月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月31日閲覧。
  29. ^ アーカイブされたコピー”. 2014年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年3月31日閲覧。
  30. ^ 海老原勇「胸膜肥厚斑( Pleural Plaques )胸部レントゲン写真、胸部CT写真と陪検所見との対比<その1>」『社会労働衛生』第5巻1号、p.50
  31. ^ 海老原勇「胸膜肥厚斑( Pleural Plaques )胸部レントゲン写真、胸部CT写真と陪検所見との対比<その2>」『社会労働衛生』第5巻2号、p.71
  32. ^ 海老原勇「アスベストの現状と今後の課題」『社会労働衛生』第5巻3号、p.14


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