批判法学とは? わかりやすく解説

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批判法学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/31 10:19 UTC 版)

批判法学(Critical Legal Studies)とは、1970年代にアメリカにおいて興隆した学派・運動である[1]。法の不確定性や裁判所の欺瞞を強調したリアリズム法学から強く影響を受けているが、カール・マルクスジャック・デリダ等の大陸哲学を大々的に摂取した点等に大きな違いがある[2]。批判法学は、その名の示すとおり、当時の主流派の法学、すなわち「リベラル・リーガリズム(Liberal Legalism)」[3]を批判するものである。しかしながら、その批判の射程は法学にとどまるものではなく、社会理論一般に対して向けられたものであり[4]、総じて左派的な社会の形成を試みるためのものだと解される[5]


  1. ^ 以下の叙述は、見崎史拓(2018)「批判法学の不確定テーゼとその可能性(1)――法解釈とラディカルな社会変革はいかに結合するか」『名古屋大学法政論集』276号を参考にしつつ要約し、改変を加えたものである。
  2. ^ 船越資晶(2018)「批判法学のマルクス」『法学論叢』182巻4=5=6号、Pierre Schlag (2005) “A Brief Survey of Deconstruction”, 27 Cardozo Law Review 741
  3. ^ 詳しくは、Justin Desautels-Stein (2018) The Jurisprudence of Style: A Structuralist History of American Pragmatism and Liberal Legal Thought, Cambridge University Press, chapter 6
  4. ^ Roberto Unger (1975) Knowledge and Politics, Free Press
  5. ^ ただし、批判法学の中心人物たるケネディの議論につき、ケネディの研究・紹介で知られる船越資晶は、「ケネディの批判法学は特定の政治的立場との本質的な結びつきをもつものではない」ことを強調する(船越資晶(2017)「批判法学の実用化のために――錯誤論再論」『法学論叢』180巻5=6号、p.404)。
  6. ^ John Henry Schlegel (1984)“Notes Toward an Intimate, Opinionated, and Affectionate History of the Conference on Critical Legal Studies”, 36 Stanford Law Review 391
  7. ^ 以下二つの小見出しについては、大屋雄裕(2014)「批判理論」瀧川裕英他編『法哲学』有斐閣の記述にとりわけ依拠した。
  8. ^ David Trubek and Marc Galanter (1974)“Scholars in Self-Estrangement: Some Reflections on the Crisis in Law and Development Studies in the United States”, 4 Wisconsin Law Review 1062
  9. ^ この時代については、ノルベルト・フライ(2012)『1968年―― 反乱のグローバリズム』下村由一訳、みすず書房
  10. ^ Duncan Kennedy (1976)“Form and Substance in Private Law Adjudication”, 89 Harvard Law Review 1685
  11. ^ Mark Kelman (1987) A Guide to Critical Legal Studies, Harvard University Press
  12. ^ Gary Minda (1997) “Neil Gotanda and the Critical Legal Studies Movement”, 4 Asian Law Journal 7, pp.10-15
  13. ^ 船越資晶(2011)『批判法学の構図――ダンカン・ケネディのアイロニカル・リベラル・リーガリズム』勁草書房、吾妻聡(2015)「Roberto Ungerの批判法学批判――『批判法学運動』における形式主義批判・客観主義批判についての覚書」『岡山大学法学会雑誌』第65巻2号
  14. ^ たとえばフェミニズム法学への影響につき、船越資晶(2016)「批判法学はジェンダーの法理論に何をもたらすか? (ジェンダーと法の理論) 」『法社会学』82号。日本でもよく知られた批判法学的フェミニストとして、ドゥルシラ・コーネルが挙げられる。
  15. ^ Emilios Christodoulidis et al. (eds.) (2019) Research Handbook on Critical Legal Theory, Edward Elgar
  16. ^ 吾妻聡(2015)「Roberto Ungerの批判法学批判――『批判法学運動』における形式主義批判・客観主義批判についての覚書」『岡山大学法学会雑誌』第65巻2号、p.263(強調は原文、〔〕内は引用者)
  17. ^ 中山竜一(2000)『二十世紀の法思想』岩波書店、pp.135-136. なお、(a)~(e)は原文に改行を加え、引用している。
  18. ^ 見崎史拓(2018)「批判法学の不確定テーゼとその可能性(1)(2)――法解釈とラディカルな社会変革はいかに結合するか」『名古屋大学法政論集』276号 doi:10.18999/nujlp.276.6, 278号 doi:10.18999/nujlp.278.5
  19. ^ Roberto Unger(2015) The Critical Legal Studies Movement: Another Time, a Greater Task, Verso, part Ⅰ
  20. ^ 基本邦語文献内のフェルドマンの著作と比較されたい。無論、整理の在り方は、接頭語となっているポストモダニズムの定義次第であるし、批判法学者全てをどちらかに位置付ける必要はなく、論者ごとに峻別することも可能である。


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