「炭化ケイ素(SiC)搭載の超小型・高効率なインバーターの開発がほぼ完了している。実力を世に問うていく段階だ」。デンソーの取締役で経営役員の松井靖氏が、2022年10月28日に開いた決算会見でこう明かした。インバーターは電動車向けで、搭載車種には言及しなかった。
デンソーは会見で、2023年3月期(2022年4月~2023年3月)の研究開発費と設備投資費を前回公表値からそれぞれ100億円減らす見通しを発表した。「メリハリを付けた投資を実行」(松井氏)しており、来期以降に先送りしたテーマもあるという。
そんな中でも、電動車のインバーターに使うパワー半導体の開発や設備投資は強化を継続する。SiCについては、ウエハーの内製化を目指して製造プロセスを含めて研究開発に取り組む。「数(生産量)が増えれば価格は飛躍的に下がっていく。その量産効果を見込んでいる」(同氏)と期待を寄せた。
現行のシリコン(Si)系パワー半導体については、半導体受託生産会社(ファウンドリー)の台湾聯華電子(UMC)との協業を進める。UMCの日本拠点であるユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン(横浜市)の三重工場(三重県桑名市)において、「300mmウエハーの量産を開始した」(同氏)という。2023年前半をめどに、300mmウエハーでパワー半導体のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を生産する計画である。