米インテル(Intel)は、「MWC19 Barcelona」でVPU(Vision Processing Unit)搭載のエッジサーバーを出展した。VPUは、5G時代のエッジコンピューティング環境において、どのような役割を果たすのか。同社でVPU製品を担当するIoTグループ Director of AI Marketingのゲーリー・ブラウン氏に聞いた。(聞き手は山崎 洋一=日経 xTECH)

米インテル IoTグループ Director of AI Marketingのゲーリー・ブラウン氏
米インテル IoTグループ Director of AI Marketingのゲーリー・ブラウン氏
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VPUとはどのようなプロセッサーで、どこで使われるのか。

 VPUは、(画像認識などの)コンピュータービジョンの処理に特化したプロセッサーだ。現行の「Intel Movidius Myriad X VPU」は、ニューラルネットワークを高速、低消費電力で実行できるエンジンとハードウエアアクセラレーターを搭載する。CPUと併用してAIをオフロードする使い方や単体でデバイスに搭載する使い方もある。産業用PCを使った工場内のサーバーやカメラなどのエッジデバイスで採用されている。

 例えば、監視カメラで人を認識して切り出す処理に向く。高価なテレビ会議システムで、人が動いても同じ写り方をするような処理に使われるケースもある。

5Gの普及により、エッジとセンターにおけるAIの使い分けはどうなる。

 広帯域、低遅延が特徴の5Gが普及すれば、AIを分散配置しやすくなるだろう。最適な配置は、どのようなアプリケーションで使うかによる。

 コストをとにかく低く抑えたいなら、カメラで撮影した映像を全てデータセンターに送り、そこで処理した方が良い。一方、無人店舗に多数のカメラを置くようなケースなら、人を検知する処理はカメラ側で実行し、顔や年齢、服装、商品などの識別や分類はサーバー側のAIを使うべきだろう。

 プライバシーを確保したい、あるいは消費電力を低く抑えたいなどの理由で、エッジ側で計算処理をすべきケースもある。つまり5Gが普及しても、データセンターのAIとエッジのAIは両方とも必要ということだ。

5Gとエッジコンピューティングを使うユースケースが多数

 米インテルのブースでは5Gネットワークとエッジコンピューティング環境が構築され、多数のユースケースが紹介されていた。その1つが産業向けの「VIRTUAL SAFETY ZONE」。カメラとAIを用いて、工場などの立ち入り禁止区域に人が入ってしまった場合にだけアラートを出す。デモでは紙が舞い落ちただけではアラートが出ない様子も見せていた。

 同社が「CES 2019」で発表した10nmプロセスのSoC(System on a Chip)である「Snow Ridge(開発コード名)」も展示し、デモを披露した。5Gの基地局やセキュリティーアプライアンス、スイッチ、ルーターなどの用途を想定しているという。

「VIRTUAL SAFETY ZONE」の展示
「VIRTUAL SAFETY ZONE」の展示
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