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 楽天モバイルは2020年10月22日から東京都と大阪府、奈良県の一部地域で、KDDI(au)とのローミング(相互乗り入れ)を打ち切り始めた。ローミングの打ち切りは順次広げていく計画で、KDDIによると「東京都においては離島など一部エリアを除き、2021年3月末でローミングを終了する」という。

 楽天モバイルとKDDIのローミングの契約期間は2019年10月1日から2026年3月31日まで。都道府県ごとに楽天モバイルの自社回線エリアの人口カバー率が70%を超えた時点で両社が協議し、ローミングの継続/終了を決める契約となっている。

 楽天は2020年8月に開いた決算説明会で、自社回線エリアの人口カバー率を2021年3月末までに70%、2021年中に96%近くまで広げると基地局展開の前倒しを宣言していた。同社がKDDIに支払っているローミング利用料の低減につながるので株主の評価は高まりそうだが、筆者は顧客離れのリスクが高まるのではないかと危惧している。

楽天モバイルの人口カバー率は2021年3月末までに70%に拡大する見通し
楽天モバイルの人口カバー率は2021年3月末までに70%に拡大する見通し
(出所:楽天)
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エリア問題の軽視は禁物

 楽天がメインで使用する1.7ギガヘルツ帯の周波数は、5G(第5世代移動通信システム)向けに割り当てられた3.7ギガヘルツ帯や28ギガヘルツ帯に比べれば電波が届きやすいとはいえ、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクが利用するプラチナバンド(700メガ~900メガヘルツ帯)ほどではない。

 携帯大手の関係者によると、「1.7ギガヘルツ帯といっても屋内への浸透率はそれほど高いわけではない」。地下をはじめ、1階や2階でも高い建物で囲まれていたり、窓が全くなくて奥まっていたりする場所ではつながりにくくなることがあるという。KDDIとのローミングでは基本的に800メガヘルツ帯を利用しており、これが外れる影響は大きい。人口カバー率も70%程度では論外。「97%や98%でもクレームが来る」とされる。

 楽天モバイルは基地局数が2020年6月末時点で5739局と少ない。楽天は2020年8月の決算説明会で「1万局以上を建設し、NTT回線の接続を待っている状態」と胸を張ったが、携帯大手の基地局数はLTE/4Gだけで16万~23万局(2019年3月末時点)に達する。しかも楽天モバイルの基地局を巡っては「グループの取引先に対して設置を働きかけているためか、低い建物の屋上など必ずしも見通しがよくない場所で見かけることが少なくない」(競合他社)との指摘もある。