2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)による水害で、甚大な被害を受けた岡山県倉敷市の真備地区。緊急治水対策プロジェクトの一環で、バックウオーター(背水)対策として小田川が高梁(たかはし)川と合流する地点を4.6km下流側に付け替える工事が急ピッチで進む。目玉は、新しい河道の線形を遮る「南山」の掘削だ。発破と巨大重機による運搬との組み合わせで、23年度の完成を目指す。
「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、点火」。カウントダウンが終わると同時に、山の中腹に仕掛けたダイナマイトを一斉に爆破した。防護用マットを敷いているために爆発の派手さはない。複数回の発破音の後に立ち込める土煙が、成功の合図となる。
白昼に実施されたこの発破は、岡山県倉敷市を流れる小田川の付け替え工事における掘削の1コマだ。
18年の西日本豪雨では、高梁川の高い水位の影響を受け、支川である小田川の流れが阻害され水位が上昇。バックウオーター(背水)現象が起こり、小田川と高梁川の合流地点にある真備地区は、堤防が決壊するなどして甚大な被害を受けた。
そこで国土交通省中国地方整備局は再発防止のために、小田川と高梁川の合流地点を下流側に移動させる付け替え工事を実施中だ。小田川がバックウオーターの影響を受けにくくなる他、高梁川の水位も低下するため、左岸側に広がる倉敷市の中心市街地の氾濫危険度も低減できる。
発破の現場と真備地区の市街地とは数百メートルしか離れていない。市街地から伸びる県道が現場を横切るため、発破の前には一時的に通行止めにしなければならない。
「山奥のダムの現場ではなく、市街地に近く、県道沿いでの発破は珍しい」。鹿島・大本組・荒木組特定建設工事共同企業体の小田川付替えJV工事事務所の今井由所長は、こう話す。