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 中国のEVメーカーである蔚来汽車(NIO)が2021年1月9日に発表した車載向け固体電池の衝撃が世界を駆け巡っている。主な発表内容は、重量エネルギー密度が360Wh/kgと高く、量産の準備は済んでおり、エネルギー容量が150kWh(航続距離が最長で1000km)の車載用用電池パッケージ製品を2022年にも出荷する、というもの。トヨタ自動車を脅かす、想定外のダークホースが出てきたわけだ。

NIOが発表したEV向け電池パックのイメージ
NIOが発表したEV向け電池パックのイメージ
(出所:NIO)
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 ただし、NIOが単独でこの電池を開発した可能性は低く、他の電池メーカーと提携して共同開発したという見方が有力だ。この発表に対する衝撃の大きさは、その電池の正体や開発元について推測する記事が数多く出てきていることからも分かる。本記事では、こうした推測記事の一部内容に、独自の推測を加えた考えを紹介してみることにする。

 現在、固体電池を開発中の企業は数多いが、そのうち固体電池の開発ロードマップを多少なりとも公表している主なメーカーは、表1のようになる。

表1 EV向け固体電池の主なメーカーまたは開発元とその電池の概要
同様な技術または数値には同系の色をつけた。(データは日経クロステック調べ)
表1 EV向け固体電池の主なメーカーまたは開発元とその電池の概要
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 ちなみに、全固体電池ではなく、固体電池としているのは海外メーカーの多くが「全」には必ずしもこだわってはおらず、液体電解質を一部混ぜたり、あるいは溶液をゲル化した半固体材料を電解質として用いていたりするからである。そうした電池でも「Solid State Battery(SSB)」。中国語では「固態電池」と呼ばれている。

 まず、この固体電池についてNIOが明らかにした内容を改めて少し詳しく紹介すると、(1)ニッケル(Ni)が「ウルトラリッチ」で、しかもナノ粒子でコーティングした正極材料を利用、(2)負極がカーボン材料とシリコン(Si)の混合材料、(3)電解質は、当初液体で製造途中で固体化するハイブリッド材料、(4)重量エネルギー密度は360Wh/kg、(5)2022年にも量産、(6)NIOが同時に発表した新型EV「ET7」に搭載すれば航続距離は1000km、(7)電池はユーザー自身が繰り返し充電して使うというより、むしろ交換ステーションで交換して使う、となる。