首里城にスプリンクラーはなかった。宿泊などが想定されておらず、消防法で設置は義務付けられていない。だが、立命館大学歴史都市防災研究所の土岐憲三特別研究フェローは「正殿内部にスプリンクラーなどがあれば、延焼が止まっていた可能性もある。義務付けられていなくてもやるべきことはやるべきではないか」と初期消火の必要性を説く。
1931年に再建された大阪城にもスプリンクラーは設置されていない。運営する大阪城パークマネジメントの担当者によると、建物は耐火建築物で、屋内消火栓や自動火災報知設備などがあり、年2回、防火訓練を実施しているという。
スプリンクラーを設置していない理由は「重要文化財などを展示したり、保管しているため」と担当者。作動した場合に文化財が水で濡れる恐れがあるためだという。今後についても「現時点で大阪城としては検討していない」としている。
59年に再建された名古屋城天守閣も同様だ。名古屋城総合事務所の担当者は、屋内には消火栓や消火器、熱や煙の感知器などはあるが、スプリンクラーは天守閣に設置されていないという。
一方、93年に世界遺産に登録された国宝の姫路城は、屋内外消火栓、消火器、火災報知機のほか、スプリンクラーは天守群だけでも1000カ所以上設置されている。
姫路城管理事務所の担当者によると、導入時は「文化財の破壊に近いことをしても大丈夫か」との意見もあったが、「城の出入り口が1カ所しかなく、中の階段も急勾配で、繁忙期には800~1000人が滞在するため、消防活動がしづらいと判断した」。毎日の119番通報テストや自動火災報知設備、防火水槽の水位の点検などを実施しているという。