緊張のウクライナ、市民は西部へ苦渋の避難…アパート需要増・企業の一時移転も

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 ロシア軍の侵攻が懸念されるウクライナで、ロシアに近い東部から西部に避難する市民が増えている。ポーランド国境から約75キロ・メートルのリビウでは、アパートやホテルの需要が急増し、企業の一時移転の動きも出始めた。(リビウ 笹子美奈子)

物件照会殺到

リビウの賃貸アパートでキエフの状況を案じるアサウラクさん(17日、ウクライナ西部リビウで。笹子美奈子撮影)
リビウの賃貸アパートでキエフの状況を案じるアサウラクさん(17日、ウクライナ西部リビウで。笹子美奈子撮影)

 クリスティナ・アサウラクさん(25)は、露軍の侵攻が始まると伝えられていた16日、夫とペットの犬を連れて、首都キエフからリビウの賃貸アパートに移った。夫が勤務する独企業は国外退避を促したが、リビウで当面はリモートワークを続けるつもりだ。「故郷を捨てるつもりはない。でも、いつ帰れるのかわからない」とため息をついた。

 リビウの不動産業者には、各国の国外退避勧告が始まった11日以降、物件の照会が殺到する。ほとんどがキエフや東部ハリコフなどからの避難者で、2週間~1か月程度の短期契約だ。外国企業が本社機能をリビウに一時移転するため、従業員約200人の住居の確保依頼も舞い込んだという。

 老舗のジョージホテルでは14日以降、稼働率が前週比2割増になった。平時は宿泊客の約7割が外国人なのに、今は約9割が国内客だ。コルニヤブ・コンスタンティン支配人(49)は「(新型コロナウイルスの)パンデミックで苦しんだので予約はありがたいが、需要は一時的だ。ウクライナは危険なイメージを持たれ、外国人旅行者が来なくなる。この事態は全く歓迎できない」と顔をしかめた。

 避難者の思いは複雑だ。周囲から「非国民」扱いされるのを恐れ、内緒で避難した人が多い。避難者を支援するコンサルタントのジャンナ・シェブチェンコさん(47)は、「愛国心が強い顧客がいるので、避難したことを会社に隠したままリモートワークをしている人もいる」と説明した。

血液備蓄

 リビウ市には14日以降、米国や英国など約20か国の大使館の臨時業務用の事務所が設置され、数百人の外交官がやって来た。

 市は過去にも東部からの避難者を受け入れた実績があり、市民は協力的だ。アンドリー・ポウパさん(23)は、キエフの友人から緊急時に泊めてほしいと頼まれた。自宅アパートには寝室が2部屋しかないが、「8人まで受け入れるつもりだ。いつでも扉を開けて待っている」と胸を張る。

 市は危機管理計画を進める。水道や電気、通信が止まった場合の対応を確認し、病院では血液バンクの備蓄を増やし、地下の手術室の点検も行った。リビウは2022年冬季五輪に立候補したが、ロシアがクリミアを併合した14年、選考直前に辞退を余儀なくされた。「何かをしようとする時、いつもロシアが邪魔をする。この状況ではいつまでたっても再び立候補できない」と、アンドリー・サドビー市長は唇をかんだ。

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2775739 0 国際 2022/02/20 05:00:00 2022/02/21 11:19:57 2022/02/21 11:19:57 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/02/20220220-OYT1I50020-T.jpg?type=thumbnail

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