専攻医の過労自殺、第三者委が「労務管理」を問題視…調査報告書は遺族に開示されず

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 神戸市東灘区の「甲南医療センター」で男性専攻医(旧後期研修医)が過労自殺した問題で、センターが原因を調査する第三者委員会を設置しながら、報告書を遺族に開示していないことがわかった。報告書は、業務の負担が自殺の原因となった可能性を指摘し、センターの労務管理を問題視する内容だったという。遺族は違法な残業があったとして、労働基準監督署にセンターの運営法人などを労働基準法違反の疑いで告訴している。(田中健太郎)

高島晨伍さん=遺族提供
高島晨伍さん=遺族提供

 亡くなったのは高島 晨伍しんご さん(当時26歳)。2020年4月にセンターに入り、研修医を経て、昨年4月から専門研修を受ける専攻医として診療に従事していた。昨年5月17日、神戸市の自宅で自殺し、西宮労基署(兵庫県)が今年6月、死亡前1か月の残業時間が207時間に達し、精神障害を発症したことが自殺の原因として労災認定した。

 遺族やセンターによると、センターは遺族の要望を受け、昨年8月、原因解明のため、外部の医師や弁護士らでつくる第三者委を設置。同委は職員や遺族らに聞き取り調査を実施し、今年1月に報告書をまとめた。センターは同月、遺族側に、第三者に公表しないことを条件に報告書を開示すると伝えた。遺族は公表を求めたが、センターは「職員のプライバシーが含まれる」などと拒否し、開示しなかったという。

職員には説明会実施

 関係者によると、センターは職員には説明会を実施していた。そこで▽高島さんは初めて主治医として患者を担当し、心理的負担があった。自殺と無関係と言えない▽学会で発表する資料の作成期限を守ることが難しいと嘆いていた▽いじめやハラスメントはなかった▽センターの労働時間や健康管理の体制が不十分で、問題に気付けなかった――と明らかにしていたという。

記者会見する甲南医療センターの具英成院長(右)ら(17日午後、神戸市東灘区で)
記者会見する甲南医療センターの具英成院長(右)ら(17日午後、神戸市東灘区で)

 センターは、労基署が認定した時間外労働には、労働時間にはあたらない自主的な「自己研さん」の時間が含まれていると主張している。しかし、第三者委が認定した時間外労働は労基署とほぼ同じだった。

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