子どもに人気は「規格外の10B鉛筆」…文字が太く、見栄えがいい

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 小学校の入学式が終わり、子どもが本格的に勉強に取り組み始める時期になった。勉強に使う鉛筆は、40代の自分が子どもだった頃はHBやB。だが、子どもがいる同僚に聞くと、最近は2Bから6Bが主流で、10Bや12Bという鉛筆もあるという。なぜこれほど濃くなっているのだろう。(崎長敬志)

「書き心地滑らか」

12B(左)とHBの鉛筆で書いた線。太さと濃さが全く違う
12B(左)とHBの鉛筆で書いた線。太さと濃さが全く違う

 埼玉県川口市の文具店「文具のヤマモト」には4月上旬、新学期に必要な文具を買いそろえようと大勢の保護者が訪れた。「これが人気です」と、店主の山本浩司さん(60)が見せてくれた鉛筆は10B。試し書きをすると、力を入れなくても太くて真っ黒の線がスッと書ける。

 鉛筆の濃さは、日本産業規格(JIS)によって、9Hから6Bまで17種類に分類されている。Hはハード(硬い)、Bはブラック(黒い)を意味し、黒鉛の量が多いほど黒く濃い。

 だが、この規格を超えた鉛筆が次々に登場している。同店では、三菱鉛筆の「ハイユニ」の10Bや、ドイツの文具メーカー「ステッドラー」が2019年に発売した12Bも販売している。10Bや12Bの鉛筆を友達に見せて「この鉛筆はこんなに濃い」と自慢する子どももいるらしい。

「濃い鉛筆は書き心地が軟らかくて気持ちいいようです」と話す山本さん(埼玉県川口市の「文具のヤマモト」で)
「濃い鉛筆は書き心地が軟らかくて気持ちいいようです」と話す山本さん(埼玉県川口市の「文具のヤマモト」で)

 もともとは、濃い鉛筆は硬筆書写に使われることが多かった。埼玉県書写書道教育連盟会長の新井和徳さんは「濃い鉛筆は線が滑らかに書けて、漢字のとめはねが表現しやすい」と話す。濃い鉛筆だと文字の線が太くなって見栄えがいい。また、小学校低学年の硬筆書写の用紙はマス目が大きいため、字がはっきり見えるように濃い鉛筆が使われているのだという。

 だが、勉強の際にノートに文字を書く鉛筆も濃くなっている。小学校が入学前に行う保護者向け説明会でも、準備する文具として2B~6Bの濃い鉛筆が指定されることが多い。東京都内のある小学校では、新入生が用意する鉛筆を2Bと指定している。副校長は「しっかりとした字が書きやすいから」と説明する。

 さいたま市の小学3年生の男子児童(8)が入学時から愛用しているのも4B。「字が濃いし、書きやすい」という理由からだ。たまたま家にあったHBを使った時には「薄くて書きづらい」と不満そうだったという。

 トンボ鉛筆(東京)によると、鉛筆の販売数量を硬度別に見ると、1999年はHBが43%でトップで、2Bは22%どまり。だが、2019年は2Bが51%とトップに立ち、HBは20%と半減している。

筆圧低下?滑らか志向?…人気の理由さまざま

10B(左上)から22段階の濃さ順でケースに並ぶ鉛筆(「文具のヤマモト」で)
10B(左上)から22段階の濃さ順でケースに並ぶ鉛筆(「文具のヤマモト」で)

 濃い鉛筆が人気なのはなぜなのだろうか。

 文具卸会社「三菱鉛筆埼玉県販売」(さいたま市)常務で、鉛筆を30年以上販売してきた関口猛雄さんは、「子どもの筆圧が落ちていることが背景にあるのでは」と推測している。鉄棒などで体を動かして遊ばなくなって、室内でゲームで遊ぶようになったために体力が低下。筆圧が弱くても書きやすいように、芯が太くて軟らかな鉛筆が人気になってきたのではないか――という見立てだ。同社は08年から、オリジナルの10Bを「筆鉛筆」と名付けて販売し、「書き心地が滑らかだ」と人気だという。

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