録画にネット視聴、実は見られていた「光る君へ」…演歌冷遇・受信料宣伝の「紅白」はそれでも過去最低

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 紫式部を主人公に据えた大河ドラマ「光る君へ」の初回の世帯視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)が12・7%で過去最低を記録した。昨年おおみそかの「NHK紅白歌合戦」第2部も31・9%と過去最低になった。一方で動画配信サービス・NHKプラスではどちらも高い視聴数を記録している。家族がそろってテレビを見ていた時代の名残とも言える「世帯視聴率」から離れてみると、番組が本当はどう見られているか、実態が浮かび上がってくる。(文化部 辻本芳孝)

「光る君へ」の制作記者会見に臨む紫式部役の吉高由里子(左)と藤原道長役の柄本佑(2022年11月、東京・渋谷のNHK放送センターで)
「光る君へ」の制作記者会見に臨む紫式部役の吉高由里子(左)と藤原道長役の柄本佑(2022年11月、東京・渋谷のNHK放送センターで)

王道路線から外れても総合視聴率3位の大河

 「視聴率」といえば、世帯単位で把握するか、視聴者の年齢や性別に合わせて個人単位で把握するかの違いはあっても、放送と同時に番組が視聴されている割合を示すというのがこれまでだった。それを最近ではあえて「リアルタイム視聴率」と呼ぶようにもなっている。というのも、ビデオリサーチが2016年10月から、放送後7日以内に録画で見た「タイムシフト視聴率」の測定を始めたからだ。これら二つを合わせて重複分を差し引いたものが「総合視聴率」。放送後も含めて実際に番組を見た人の割合なので、同社は「番組の力を示す」数値と位置付ける。確かに昨今の生活実態を考えれば当然の話だ。

 まず、大河ドラマから見ていこう。大河は派手な合戦シーンがあり、歴史上の有名人が多い戦国時代や幕末を舞台にすると手堅く視聴率が取れるとされる。その路線から外れ、平安貴族の世界を描く「光る君へ」は、果たして視聴者にどう受け入れられるか注目されていた。

 7日放送の初回のリアルタイム視聴率12・7%は、1963年の「花の生涯」以降で過去最低だった89年の「春日局」の14・3%をも下回った。だが、タイムシフト視聴率は8・6%。測定された17年の「おんな城主 直虎」以降の8作品で見ると、23年の「どうする家康」、22年の「鎌倉殿の13人」に続く3位となる。リアルタイム視聴率の低さに影響されたが、総合視聴率は20・6%で、19年の「いだてん」の20・3%を上回る。総合視聴率は、18年の「西郷どん」など8作品の半分が25%に届かないことを見ても、「光る君へ」がそこまで特別に低いとは言えないようだ。

普及が後押し、NHKプラスの全ドラマ中で最多視聴数を記録

NHKプラスの画面
NHKプラスの画面

 自宅のテレビで録画せずとも近年は配信視聴が容易だ。その一つであるNHKプラスでの放送後1週間の視聴数を見ると、「光る君へ」の初回は、20年4月のサービス開始以降の全ドラマ中、最多の49万8000回を記録した。ちなみに22年の「鎌倉殿」の初回は23万回。プラスの登録数は21年8月末で約218万件だったが、23年9月末で登録数は約430万件にまで増加しており、スマートフォンなどで1人で番組を見る人が視聴数を底上げしているようだ。

 NHKの山名啓雄メディア総局長は17日の記者会見で紅白の低視聴率について問われると、「BSや配信など様々な媒体でお伝えしていて、皆さんに一番最適な形でご利用いただいた結果だ。皆さんのライフスタイルや視聴の仕方がどんどん変わってきてるのかな」と前向きに受け止めた。真価は1年間を通して判断すべきだろう。

好きな歌手の場面だけ後から視聴

昨年の紅白歌合戦に初出場する歌手の発表記者会見(昨年11月、東京・渋谷のNHK放送センターで)
昨年の紅白歌合戦に初出場する歌手の発表記者会見(昨年11月、東京・渋谷のNHK放送センターで)

 さて、紅白歌合戦はというと「番組の力」の低下には歯止めがかかっていないようだ。リアルタイム視聴率で過去最低だった昨年の2部は、タイムシフト視聴でも3・4%と過去8年で7位。総合視聴率34・1%は過去最低だった21年よりもさらに2ポイント下げた。総合視聴率は、19年の39・9%を除き、20年までは40%を維持したが、21年は36・1%、22年は37・9%となっている。

 難しいのは大河の初回と違い、紅白は大みそかという特別な一日である点だ。稲葉延雄会長も17日の記者会見で「昔と比べ、12月31日の夜の人々の生活のパターンがずいぶん変わった。年越しコンサートや、友人と過ごすなど活動的になってきて、紅白をお茶の間で見る割合っていうのは減っている」と認める。ユーチューブでも年越しイベント花盛りだ。

 ただ、内容が敬遠されたかというと、そうでもないのではないか。プラスでの視聴が187万回と前年の120万回の1・5倍に拡大しているからだ。登録者全体が増えているから当然かもしれないが、プラスを活用して出先で見たり、後から好きな歌手の登場場面だけを選んだりと、見方は変わりつつも、まだ年末の風物詩としての紅白への関心はあると思われる。

ネット時代、薄れるリアルタイム視聴率の存在感

稲葉延雄会長
稲葉延雄会長

 今回の紅白では、純烈にプラス加入をPRする衣装を着させたほか、受信契約についても何度か呼びかけた。こうした営業色が強かった点について、稲葉会長は「そういう機会を使うこと自体が悪いことだとは思わないが、うっとうしいという声があれば考えた方がいい」と述べた。さすがにこの点は論外としても、K―POP勢の偏重や演歌歌手の冷遇などを指摘する声があり、人選や演出面などでの課題は残る。しかし紅白の在り方について、正解がなかなか見えないのも事実だ。

 生活様式やネット視聴の常態化でリアルタイム視聴率の存在感は薄れており、NHKに限らず民放各局も総合視聴率や配信視聴数を重視するようになっている。その中で、番組の質自体も変化を余儀なくされている。NHKの大看板である大河や紅白も例外ではない。ただ、どんな番組になっていくか、決め手となるのは詰まるところ、視聴者の意向だろう。

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