高齢者医療費の負担を考える

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

POINT
■今年10月から、75歳以上の医療費について本人負担が一部引き上げられた。現役世代の負担軽減を目指す「全世代型社会保障」への転換の一環だ。

■75歳以上の医療費の9割は現役世代の保険料と税金で賄われている。増え続ける高齢者医療費の負担を世代間でどう分担するかが問われている。

■1973年の老人医療費無料化で医療費は爆発的に増え、高齢者の多い国民健康保険の財政が窮迫。救済のため累次の制度改正が行われてきた。

■医療を含む社会保障制度を維持するには、年齢にかかわらず経済力に応じた「応能負担」を徹底する必要がある。高齢者に有利な税制上の控除等も見直すべきだ。

調査研究本部主任研究員 林真奈美

 75歳以上の高齢者の医療費について、10月から本人負担分が一部引き上げられた。少子高齢化が進む中、支払い能力のある高齢者には応分の負担をしてもらうことで、現役世代とのバランスを取りつつ、制度の持続可能性を高める狙いがある。1973年の老人医療費無料化から半世紀。この間、高齢者医療費の増大に対応すべく、累次の制度改正が行われてきた。本格的な超高齢社会を迎える今、高齢者医療費の負担のあり方について、過去の経緯を振り返りつつ、今後の方向性を考えたい。

宗教都市・京都 寺社の財力が支える経済

後期高齢者の本人負担引き上げ

 日本の医療保険制度は、会社員を主な対象とする被用者保険(健康保険組合、協会けんぽなど)と、それ以外の自営業者らを対象とする国民健康保険(国保)に大別される。さらに、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度があり、全ての人がそれまで加入していた制度からこちらに移る仕組みだ。

 医療機関にかかった際の医療費の本人負担は、年齢によって異なる。70歳未満は3割(6歳未満は2割)、70~74歳は2割、75歳以上つまり後期高齢者医療制度の加入者は原則1割だ。ただし、70歳以上で現役並みの所得(単身世帯で年収383万円以上)がある場合は3割となる。

 10月からは、後期高齢者医療制度において、今まで1割負担だった一般所得者の区分内に新たに2割負担の区分を設け、一定以上の所得がある人をこちらに移した。これにより、75歳以上の自己負担は1割、2割、3割の3区分になる。

 新たに2割負担となるのは、単身世帯で年収200万円以上、複数世帯なら320万円以上だ。後期高齢者医療制度の加入者の20%に当たる約370万人が該当する。

 ただし、公的医療保険には月の自己負担に上限を設けた「高額療養費制度」があるので、必ずしも負担額が今の2倍になるわけではない。70歳以上の場合、上限額は一般区分であれば外来で1人当たり月1万8000円、入院で世帯当たり月5万7600円で、長期療養者などにはさらに負担軽減措置がある。従って、今の自己負担額が上限額の半分を超えるケースでは2倍にならない。

 しかも、急激な負担増を避けるための配慮措置が3年間の期限付きで導入される。外来受診について、増加額を月3000円以内に抑えるものだ。例えば、1割負担で4500円だった場合、2割負担なら本来9000円で4500円増になるが、3000円増の7500円にとどめる。負担増がある外来患者の80%が対象になる。外来と入院を合わせた患者1人当たりの平均自己負担額の変化をみると、今の年8・3万円が2割負担導入で11・7万円にアップするところ、配慮措置により10・9万円と伸びが抑制されるという。

全世代型社会保障への転換

 後期高齢者の本人負担引き上げは、2019年12月に政府の全世代型社会保障検討会議(議長・安倍首相=当時)がまとめた中間報告で打ち出されたものだ。超高齢社会を迎える中、社会保障制度を将来にわたり維持していくためには、これまでの「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という仕組みを改め、子育て支援など現役世代向けの給付を充実させるとともに、高齢者にも経済力に見合った負担をしてもらう必要がある。こうした「全世代型社会保障への転換」の象徴的な項目としてクローズアップされ、菅政権に代わった後の20年12月に公表された最終報告でも柱の一つに据えられた。

 後期高齢者医療制度の医療費は、本人負担分を除いた部分の大半を現役世代の保険料と公費でまかなっている。おおまかな内訳は、現役世代が加入する医療保険制度からの支援金4割、公費5割、75歳以上の保険料1割という具合だ。

 高齢化の進展に伴い、高齢者医療費は膨らみ続け、医療費全体を押し上げている。特に医療ニーズが高まる後期高齢者の増加は影響が大きい。保険診療にかかった費用である国民医療費は19年度に44・4兆円と過去最高を更新。うち後期高齢者分が占める割合も38・4%まで上がった。これに伴い、支援金も増え続けている。2008年度の制度創設時に総額4・1兆円だったのが、22年度には6・9兆円(予算案ベース)と1・7倍になった。22年から団塊の世代が後期高齢者になり始め、25年には全員が75歳以上になる。高齢者医療費のさらなる膨張は必至だ。

 支援金の増大は、健康保険組合などの財政を圧迫し、現役世代が支払う保険料を上昇させている。しかも、後期高齢者医療費の多くをカバーする国費は、現在3割程度を借金(赤字国債)でまかなっており、次世代にツケを回している形だ。高齢者に不利益を強いて現役世代に付け替えるような世代間の奪い合いが、全ての世代に安心をもたらす「全世代型社会保障」なのかと言えば疑問はある。ただ、高齢者は増え続ける一方、低成長下で現役世代の経済状況が厳しくなる中、こうした負担構造への不満が高まっているのも事実だ。

 将来にわたり制度を維持するには、支える側の納得感が欠かせない。そのためには、高齢者にも痛みを分かち合ってもらう必要があるだろう。それも、団塊の世代が後期高齢者入りする前の今のタイミングでなければならない。

高齢者にも「痛み」を求める

 高齢者の本人負担引き上げには抵抗もあった。日本医師会は負担増により受診控えが生じる恐れがあるとして慎重姿勢を示し、与党内にも選挙への影響を懸念して消極的な意見があった。所得基準を当初想定より緩和し、実施時期を今夏の参院選後にするなどの調整の末、今年10月実施にこぎつけた。

 今回に限らず、高齢者の負担増は政治的に極めてハードルが高いテーマだ。介護や年金でも同様の騒動が繰り返されている。本来なら、その必要性を国民に丁寧に説明し、理解を得ることこそが政治の役割であろう。にもかかわらず、目先の選挙だけを考えて、負担増の議論を回避しようとする。こうした政治の無責任さが、社会保障全般において真に必要な改革を遅らせてきたことは、指摘しておきたい。

 もっとも、今回の自己負担引き上げの効果は限定的だ。現役世代の負担軽減は25年度で年830億円、1人当たり年800円にすぎない。健保などの保険料は事業主と折半のため、加入者本人の負担減は月30円程度だ。むしろ高齢者にも痛みを求める姿勢を示す意味合いが強いのではないか。

「福祉元年」の老人医療費無料化

 高齢化が意識され始めた1970年前後から、高齢者医療費の負担のあり方は大きな政策課題となってきた。今後の方向性を探る前提として、今の制度に至る経緯を振り返っておこう。

 起点となるのは、「福祉元年」と呼ばれる1973年に始まった老人医療費無料化である。70歳以上を対象に医療費の本人負担を実質ゼロにした。

 当時の問題意識は、高齢者の本人負担をいかに軽減するかだった。この頃は医療保険制度などによって負担率に差があり、被用者本人ゼロに対して被用者家族5割(後に3割)、国保3割で、高齢者の多くは高い負担率が適用されていた。複数の疾病を抱えて長期療養する場合も多く、年金制度も未成熟だったため、金銭的事情による受診控えが目立ち、高齢者の受療率が伸び悩んでいた。無料化を求める国民の声は強かった(注1)。

 折しも、高度経済成長の成果を国民福祉に還元しようという機運が高まっていた。こうした中、1969年に秋田県と東京都が老人医療費の無料化に踏み切る。高齢者の本人負担分を公費で肩代わりする仕組みだ。各地の自治体も追随し、72年には2県を除く全国で無料化が実現。これを受けて、国の施策として展開することになった。

 注目されるのは、制度化にあたり、負担率を規定する健康保険法などの改正ではなく、老人福祉法の改正で対応した点だ。医療保険外に「老人医療費支給制度」を創設し、国と地方自治体の公費で肩代わりする仕組みとした。本来は、負担水準などについて十分議論した上で、医療保険で対応すべきだが、関係者の合意形成には時間がかかる。

 この時期、東京都の美濃部都政をはじめ革新自治体が急増し、無料化を推進していた。自民党の危機感は強く、その政治的圧力によって、手っ取り早くできる方法が採用されたとみられる。

病院のサロン化と社会的入院の広がり

 無料化により、70歳以上の受療率は70年から75年の5年間で1・8倍に伸びた。高齢者が医療を受けやすくなった反面、不必要な受診が増える弊害も招いた。一つが「病院のサロン化」である。病院の待合室が高齢者の交流の場と化し、「今日は○○さんがいないね」「具合でも悪いんじゃないか」―という笑い話のような事態が全国で起きていた。二つ目は医療の必要度が低いのに長期入院を続ける「社会的入院」の広がりである。福祉施設や在宅介護が未整備だったこともあり、老人病院が増えて無料の要介護者の受け皿と化していった。

 これに伴い、高齢者医療費は急増し、特に高齢者の加入率が高い国保の財政は窮迫した。折 () しく、無料化直後の73年秋に第1次オイルショックが起き、福祉拡大を支えた高度経済成長は 終焉(しゅうえん) 。公的財政の悪化と高齢化が進む中で、国保の高齢者医療費問題が重要な政策課題となっていく。

 老人医療費無料化の最大の問題は、高齢者の疾病の特性や生活実態を十分に考慮せず、政治的思惑によって性急に実施したことだろう。高齢者は生活習慣病など複数の慢性疾患を抱える場合が多く、治療だけでなく予防や生活指導、リハビリまで含めた包括的な保健サービスが重要になる。生活を支える介護・福祉サービスも欠かせない。これらが整備されないまま医療費無料化だけが先行した結果、あらゆる保健・福祉ニーズを吸収し、費用が爆発的に増えてしまった。

老人保健制度の創設

 こうした構造的問題の解決を目指して、83年に老人保健制度がスタートした。高齢者医療費を各保険制度が共同で納める拠出金で賄う仕組みだ。当初は拠出金7割、公費3割とされた。高齢者の加入率の違いによる負担の偏りを調整するため、各制度とも全国平均の加入率だと仮定して拠出金の額を算出する。高齢者への医療給付を各制度の共同事業とする形で、要は被用者保険による国保の救済である。また、過剰受診を抑制する観点から高齢者に一部負担を求めた。これにより、老人医療費無料化は10年間で幕を閉じた。

 老人保健制度には、疾病予防や健康作りを含む総合的な保健医療対策も盛り込まれた。40歳以上を対象に、市町村が検診などのヘルスケア事業を実施する。必要な施策だったのはもちろんだが、新たに本人負担(当初は入院1日300円、外来月400円の定額)を求めるにあたり、「国民の健康増進のための制度」とアピールして国民に納得してもらう狙いもあった。

 性急に実施して弊害を招いた老人医療費無料化の教訓から、老人保健制度の検討には7年ほども費やした。関係団体の利害調整の難しさがうかがえよう。

退職者医療制度の創設

 老人保健制度により、70歳以上の高齢者医療費については負担の不均衡はかなり是正された。だが、国保にとっては、70歳未満の被用者OBが流入して医療費を押し上げる問題は残っていた。そこで、続く84年、この層を対象にした退職者医療制度が創設された。被用者保険から国保に移った退職者の医療費を、本人たちの保険料と各被用者保険の分担金で賄う仕組みだ。ただ、対象者が想定ほど増えず、一方で国保への国庫補助が縮小されたことなどから、国保財政の窮状は続いた。

 このため、老人保健制度において被用者保険の拠出金の増額が繰り返され、被用者保険側の不満が高まっていく。高齢者の本人負担も段階的に引き上げられ、2000年改正でそれまでの定額制に代えて1割の定率制が導入された。本人負担ゼロから本来の定率制にするまで30年近くかかったわけだ。

 老人保健制度で問題とされたのは、一つには市町村は医療費の支払いをするが、財政責任は負わない点だ。各制度からの拠出金と公費で足りなければ、各制度に請求して精算してもらう。お金を集める側と使う側が分離しているため、給付効率化へのインセンティブが働かない。二つ目は、高齢世代と現役世代の負担配分ルールが不明確な点だ。高齢者も加入先の国保や被用者保険に保険料を払うが、老人保健拠出金のうち高齢者と現役世代の負担分は区別がつかない。

 拠出金がブラックボックスのまま際限なく増えることに被用者保険側は反発を強め、1999年には拠出金不払い運動が起きるなど、制度の限界をさらけ出した。新たな制度の模索が本格化する中、拠出金軽減のため公費負担を3割から5割に引き上げた。

独立保険方式の制度

 新制度を巡る議論は、最終的に4案に集約された。1999年に厚生省(当時)の審議会がまとめた報告書(注2)で、〈1〉高齢者を対象に独立した保険制度を設ける(独立保険方式)〈2〉国保と別建てで被用者OBを対象とする新たな保険制度を設け、被用者保険全体で支える(突き抜け方式)〈3〉現行の保険体系のまま、加入者の年齢構成の違いによる制度間の負担格差を調整する(リスク構造調整方式)〈4〉すべての医療保険制度を一本化する(一本化方式)―の各案が示された。

 自民党と日医、経済団体などが〈1〉を主張し、厚生労働省サイドは〈2〉を提案するなど調整は難航したが、最後は「後期高齢者は独立保険制度、前期高齢者はリスク構造調整方式」とすることで決着。2008年から実施となった。

 独立保険方式は当初、大部分を公費で賄うことが想定されていたが、財源が調達できず、前述の通り公費5割、各保険制度からの支援金4割、高齢者の保険料1割となった。公費5割は直前の老人保健制度と同じだし、高齢者保険料1割も高齢者がそれまで払っていた保険料水準からはじき出したものだ。本人負担も原則1割で従来通り。つまり、前制度を踏襲しただけで、負担のあるべき姿を十分検討した結果とは言い難い。

 それでも、75歳以上とそれ以外の負担配分ルールを明確化した意味は大きい。老人保健制度の「世代間の負担ルールが不明確」という問題はひとまずクリアしたと言える。また、運営主体として都道府県ごとに広域連合が設置された。医療費の支払いと高齢者の保険料の決定を担い、財政責任を追う。老人保健制度のもう一つの問題だった「運営主体に財政責任がない」という点も一応は解消した。ただ、保険料決定をはじめとする運営に加入者が関与できないなど、加入者の声が届きにくい問題が指摘されている。

 65~74歳の前期高齢者については、各医療保険制度間で対象者の加入率による負担格差を是正する財政調整方式を導入した。加入率の低い制度から納付金を集め、加入率の高い制度に交付する。結果として被用者保険から国保にお金が流れる。被用者OBだけが対象の退職者医療制度は廃止された。

 被用者保険は、後期高齢者支援金と前期高齢者納付金の両方を負担することになり、老人保健制度時代よりむしろ負担が増えた。収入の少ない高齢者の医療費を現役世代が支えるのはやむを得ないとはいえ、健保組合全体では高齢者への拠出と現役加入者への給付がほぼ半々になっている。さらなる負担増は難しいだろう。歯止めをかける何らかの措置が必要と思われる。

「応能負担」を徹底する

 医療の支出はどうしても高齢期に偏ってしまう。それに若いときから関わって負担を平準化しているのが医療保険である。従って、世代間の給付と負担のアンバランスをもって直ちに不公平と言うことはできない。それでも、少子高齢化が進み、高齢者が増えて支える世代が細っていく中で、高齢者の負担を増やしていくことは避けられない。年齢にかかわらず、支払い能力に応じた「応能負担」を徹底させていくのが妥当である。

 ただし、医療機関にかかった際の本人負担については熟考を要する。後期高齢者医療制度では10月から1割、2割、3割の3段階になったが、応能負担は保険料や税の段階ですでに行われている。そもそも保険制度は万一の場合に大きな負担が生じないよう備えるもので、リスク発生時の負担率にまで差をつけるのは、その理念にそぐわない。高齢者の雇用拡大が求められている時に、就労抑制を招きかねないという問題もある。高所得者の負担を増やすのであれば、保険料の段階で賦課限度額の引き上げも含めて対応するのが順当ではないか。

 本人負担割合に年齢で差をつけるのも望ましくない。世代間対立を助長しかねないからだ。いきなり現役世代とそろえて一律3割とするのは無理があるが、75歳以上の原則1割を70~74歳の原則2割にそろえるのはあまり先送りすべきではないだろう。低所得者への配慮は高額療養費制度などを通じてきめ細かく行えばよい。

 後期高齢者医療制度において、本人負担割合に所得による差がある現状を前提とするならば、3割負担になる「現役並み所得」の基準の見直しが課題である。現行基準は「課税所得145万円以上」かつ「世帯の後期高齢者の年収合計520万円以上(単身者は383万円以上)」だが、高齢者は公的年金等控除と給与所得控除がダブルで使えるので、課税所得が同じ現役世代に比べて年収は高い。この基準は2004年当時の現役世代の平均年収から課税所得を算出した上で、高齢世帯向けの控除を積み上げて年収に換算したものだが、基になった現役世代の年収は夫婦2人世帯で386万円だ。これでは世代間の不公平と言われても仕方ない。実態に即した基準に改めるべきだ。

誰が低所得者なのか

 応能負担を徹底するためには、公平に負担能力を測る必要がある。課税所得を基準とする場合が多いが、前述の通り年金税制は高齢者に有利に働く。見直しが求められよう。また、老齢遺族年金は全額非課税で所得として全くカウントされない。このため、相当な収入がありながら低所得者と見なされて、各種保険料や本人負担を軽減されているケースは少なくない。世代間だけでなく高齢世代内の不公平も引き起こしているのだ。介護保険などでは遺族年金も収入に含めて負担能力を判定する場合がある。これにならってもらいたい。

 後期高齢者医療制度の運営主体による医療費コントロールをより有効に機能させるためには、現行の広域連合の見直しが必要だ。現行では都道府県単位なのに都道府県の関与は少なく、専門人材が乏しいといった問題がある。2018年から国保の財政運営が都道府県に移管されている。広域連合をこれと統合することで機能強化が図れよう。

 本来なら75歳以上の高リスク者だけを集めた独立方式は、保険原理から言えばあり得ない。独立した別制度に国保や被用者保険から支援金を投入する法的根拠もあいまいだ。それでもこうした制度設計を選んだのは、少子高齢化が進む中で増え続ける高齢者医療費を国民全体で支える仕組みを作る必要があったからだろう。世代間対立を超え、将来を見据えた議論が望まれる。

注釈
(注1)総理府「老人問題に関する世論調査」(1971年)で、「老人の生活と健康を守るために国の施策として一番力をいれてもらいたい」こととして、老人医療費無料化(44%)がトップだった。
(注2)医療保険福祉審議会制度企画部会「新たな高齢者医療制度のあり方について」(1999年8月)

主要参考文献
厚生労働省(2007年)『厚生労働白書―医療構造改革の目指すもの』
厚生労働省(2011年)『社会保障の検証と展望―国民皆保険・皆年金制度実現から半世紀』
島崎謙治(2020年)『日本の医療 制度と政策―増補改訂版』(東京大学出版会)
堤修三(2018年)『社会保険の政策原理』(国際商業出版)
菱沼隆・土田武史・岩永理恵・田中聡一郎編(2018年)『戦後社会保障の証言―厚生官僚120時間オーラルヒストリー』(有斐閣)
中村秀一(2019年)『平成の社会保障 ある厚生官僚の証言』(社会保険出版社)

※この論考は調査研究本部が発行する「読売クオータリー」掲載されたものです。読売クオータリーにはほかにも関連記事や注目の論考を多数収載しています。最新号の内容やこれまでに掲載された記事・論考の一覧は こちら にまとめています。
スクラップは会員限定です

使い方
「調査研究」の最新記事一覧
記事に関する報告
3505984 0 医療・社会保障 2022/11/09 14:54:00 2022/11/09 14:54:00 2022/11/09 14:54:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/10/20221028-OYT8I50100-T.jpg?type=thumbnail
読売新聞購読申し込みキャンペーン

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)