- 武将浮世絵
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つきおかよしとし さく「よしとしむしゃぶるい とおとうみのかみほうじょうときまさ」 月岡芳年 作「芳年武者无類 遠江守北条時政」 /ホームメイト
本武将浮世絵では、鎌倉幕府初代執権(しっけん)を務めた武将「北条時政」(ほうじょうときまさ)が、弁財天(べんざいてん)様に向かって何やら祈願している様子が描かれています。
この浮世絵のモチーフになっているのは、あるとき北条時政が、子孫繁栄を願って江ノ島へ参籠(さんろう:ある一定期間、神社や寺院などに籠もり、神仏に祈願すること)したという逸話。その21日目の夜、緋色の袴と柳色の裏地をあしらった衣を着た気高い女性が突然現われ、北条時政の願いを叶えることを約束しましたが、非道な行ないをすれば、家は滅亡するであろうとの神託が北条時政に告げられました。その後、女性はたちまち大蛇に姿を変え、海の中に消えていったのです。
本武将浮世絵において、北条時政がうやうやしく押し頂いている扇子の上に載せているのは、このときに大蛇が落とした鱗。この逸話では、大蛇が3枚の鱗を残していったと伝えられており、それ以降北条氏は、いわゆる「三つ鱗」(みつうろこ)の意匠を家紋に定めました。
本武将浮世絵は、江戸時代後期から明治時代前期の浮世絵師「月岡芳年」(つきおかよしとし)の晩年の傑作と評される「芳年武者无類」(よしとしむしゃぶるい)シリーズ32枚のうちの1枚。月岡芳年は、「無惨絵」(むざんえ)の名手として高い人気を得ていましたが、本武将浮世絵からは、自身の豊かな想像力を駆使して幻想的な世界を描き出すことも得意とした、多才な浮世絵師であったことが窺えます。