「北のエンターテイナー」は、「球界イチのマルチな男」を目指して――。日本ハムで活躍し、引退後は今季まで古巣でもある社会人野球の強豪・東芝で投手コーチを務めた新垣勇人氏(37)。指導者だけでなく、合同会社カキシードの代表として社会貢献活動も実施し、現役時代から変わらぬ「愛されキャラぶり」を発揮して日本ハムでの活動も継続するなど、活躍の場は多岐にわたる。そんな男の視線の先にあるものは何なのか。

 ――引退から4年。指導者としてのこれまでを振り返って

 新垣 最初はコーチとしてダメなところが多くて…。ある時、まずはコミュニケーションの部分が大事だと思って。どういう接し方、どういう立場で話したらいいのかを考えたりしました。そこの部分に関して、最初は「コーチと選手」って関係性だったんですけど、上下関係があるのは先輩後輩の関係だけでいいなと思って。結局、今は同じ位置、同じところにいて、2人で課題に取り組んで、選手の悩みは自分の悩みと一緒で。そこをどう解決していくかっていう意識がすごく強くなりましたね。

 ――指導が実り、二人三脚で指導した吉村はヤクルトにドラフト1位で入団

 新垣 そうですね。本当に何ができたか分からないですけど、本当に次のステージに進んでいくっていうのがコーチ冥利に尽きるし、ようやく夢への第一歩を踏み出せたのかなというのがあるので、また見守っていきたいですね。

 ――コーチをやりながら、2020年には会社も設立。その目的や狙いは

 新垣 最初は応援してくれたファンの方に何か還元したいなというのがあって会社を起業したんですよね。ファンの方に向けてのシャツのグッズ販売から始めて、そこからオンラインの野球教室も始めて…。最初はそういうことをやってたんですけど、実際に野球界に何かできないかと考えた時に、チャリティー企画を始めまして、売り上げの一部を使って子供たちにグラブをプレゼントし、野球に触れてほしいな、と。野球に対して恩返しという部分もありますし「野球は楽しいんだ」というのを触れて分かってほしいなというのが一番ですね。

 ――昨年実施した「カッキーンベースボールプロジェクト」もその一環

 新垣 そうですね。チャリティーで出しているのはキーホルダーとナンバーTシャツの2つで、結構定期的に購入していただいていますね。選手にもつけてもらったりして、すごい協力してもらったのでありがたかったですね。

 ――今後もこの活動は続けていく

 新垣 そうですね、自分の活動は野球界、子供のためにも続けていこうと思っています。その中で、またアイデアを出しながら新しいこともいろいろ考えてやっていきたいなと思います。

 ――東芝コーチを昨年限りで退任。今後の予定は

 新垣 実は、キッチンカーを始めたんですよ(笑い)。キッチンカーにちょっと憧れていた部分もあって。いろんなところに行っていろんな人と接するっていうのはもともと好きなので、その部分で何かできないかな、と始めてみましたね。今はホットドッグと、イングリッシュマフィンと、ハムチーズを出してます。ホットドッグは日本ハムのシャウエッセンを使ってるんですよ(笑い)。
 ――先日は日本ハムの二軍施設である鎌ケ谷スタジアムにも出店していたが、シーズン中などに再登場の予定は

 新垣 確かに、入れるのかな? 出させてもらえれば。どうなるか分からないですけど、全然あり得ますよ!

――野球、会社運営、チャリティー活動、キッチンカー店長と、これだけマルチに活躍する人はなかなかいないと思うが、今後の展望は

 新垣 新しいことをどんどんやりたいタイプなので、どっちかというと1個を極めるかというよりは「いろいろなことに興味を持ってやってみたい!」て感じで。それが成功するか失敗するか分からないですけど(笑い)。とにかく楽しいことがしたい、面白いことがしたい、もちろん稼がなくちゃいけない部分はあるんですけど、そっちが強いんですよね。

 ――球界イチのマルチタレントを目指せる

 新垣 いいですね! そこを目指そうと思います。

 ――会社設立の話題で言うと、一昨年に引退した斎藤佑樹さん、昨年は杉谷拳士さんと、現役時代、特に仲の良かった後輩たちが一国一城の主となった。特に新米の杉谷さんに社長の先輩としてアドバイスがあるとしたら

 新垣 拳士は人とのつながりがすごいあるから、逆に僕がアドバイスを欲しいくらいですよ(笑い)。やっぱり人と人のつながりってすごい大事で、その部分が拳士はあるから。だからどっちかというとそのままでいいのと。あとはお金の勉強はしたほうがいいですね。経費だったり節税だったりもあると思うので。一番大事なのは決断力。最終的な決断は代表社長として絶対やらなくちゃいけない。その力はなきゃいけない部分です。

 ――杉谷さんはスパッと決断できそうか

 新垣 どうなんだろう、拳士。あいつできるのかな? でもできるようになっていくと思います。できるできないじゃなくて、やらなくちゃならなくなってくるので(笑い)。もうそこは大事だと思います。

 ――3人ともユニホームは脱いだが、今度はグラウンドの外で肩を並べられたら。

 新垣 そうですね、違う部分で一緒に仕事もしたいですしね。僕は拳士と一緒にトークショーしたいですね。

 ――そこに斎藤さんも来たら盛り上がりそう

 新垣 そうですよね。佑ちゃんと3人とか。やってみたいですね。今の自分の中の一つの夢でもありますね。