補助金、対象も拡大 鶏卵業界の要望、次々実現 吉川元農相の在任中

2020年12月26日 06時00分
 日本の養鶏場では、「ケージ」と呼ばれる狭いかごに入れる飼育方法が全体の9割を超える。国際獣疫事務局(OIE)が2018年9月、「アニマルウェルフェア(AW、動物福祉)」の観点で示した基準案には、「止まり木」や「巣箱」の設置の義務化が明記されており、密集飼育に否定的な内容だった。
 この案が固まれば、日本の養鶏業者は鶏舎を大幅に広くするなどの設備改修を迫られる可能性があった。ある業者は「改修することになれば、高額な出費が生じる。案が通るか通らないかは、業者の死活問題だった」と振り返る。
 アキタ社元代表が政策担当顧問を務めるAW対策協議会は11月、前月に農相になったばかりの吉川氏を大臣室に訪ね、「経済的観点も十分考慮したOIE基準にしてほしい」と要望。農水省は19年1月、「卵の衛生管理上、止まり木などの設置は任意とすべきだ」との立場を表明した。
 OIEは9月、止まり木などは任意とする案に修正。元代表は周囲に、「AWは大臣に直接交渉しているから大丈夫なんだ」と話していたという。
 鶏卵業界は、卵の価格が基準価格を下回ったときの国の補助金事業の拡大も求めていた。農水省は吉川氏が農相だった19年8月、補助の対象や金額を広げる内容で予算を概算要求。予算は認められ、20年度からは大手も助成対象となった。元代表は周囲に「俺が予算額を増やした」と語っていたという。(山田雄之、井上真典)

関連キーワード


おすすめ情報

社会の新着

記事一覧