ロシアもコーヒー党に

2020年6月17日 07時14分
 ロシアに初めて茶がもたらされたのは、モンゴルのハーン(汗)からロシア皇帝に献呈された十七世紀のこと。その後まもなく中国から輸入されるようになり、十九世紀には温暖な黒海沿岸などのカフカス地方で茶の栽培が始まった。
 ロシアでは専ら紅茶が好まれた。サモワールと呼ばれる金属製の湯沸かし器が置かれた食卓を家族や来客が囲む光景は、十九世紀ロシア文学ではおなじみだ。ベリー類を用いた自家製のジャムをスプーンにすくい、それをなめながら茶を口に含んだりして喫茶を楽しむ。ロシアは伝統的に紅茶党の国だった。
 ところが、この「常識」を覆す事態が起きた。茶とコーヒーの業界団体によると、二〇一九年のコーヒーの国内消費量は前年比12%増の十八万トンに達し、茶の十四万トンを初めて上回った。
 良質のコーヒー豆が庶民の手に入りにくかったソ連時代とは打って変わって、近年コーヒー需要はうなぎ上りだ。国民所得が上がり、おしゃれなカフェが増えたこともコーヒー市場を拡大させた。対照的に紅茶の需要は頭打ちである。
 逆にコーヒー人気が圧倒的なのが米国。独立戦争につながった「ボストン茶会事件」を、米国がコーヒー党になった契機とする見方がある。ただし昨今は緑茶や紅茶を含む茶の消費量は着実に伸びている。 (青木 睦)

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